サムソンは怪力自慢の士師でした。イスラエルがペリシテ人の支配に苦しめられているとき、サムソンはその力を振るってイスラエルを救いました。しかし、そのサムソンも士師でありながら聖人風の人ではなく、むしろ神への信仰にあぐらをかくような人物でした。サムソンは生まれる前からナジル人としてささげられていましたが、異教徒との結婚や死骸から取ったハチミツを両親へ食べさせるなど、誓約違反を繰り返し、あげくの果てに欲望と復讐にまみれて多くの人をその手にかけてしまいました。それでいて、サムソン自身は「わたしには罪がない」(15章3節)と言い張る始末です。もしかしたら、当時のイスラエルの信仰と生活はサムソン以上に退廃していたのかもしれません。けれども神は不遜な姿勢のサムソンやイスラエルを見捨ててはおかれませんでした。サムソンは主に祈って言った。「わたしの神なる主よ。わたしを思い起こしてください。」(士師16:28)