空腹は、人間の苦しみの中でも、最も耐えがたい苦しみであると言った人がいます。キリストは四十日の絶食の後、限界に近い空腹状態で、砂や石ばかりの砂漠で、悪魔から誘惑を受けられました。その誘惑とは、一言でいえば、「自分」を救えという唆しです。「神の子」なら、神の子らしく力を用いて、空腹の苦しみから軽々と逃れることができよう。「自分」を救うために力を用いよ、と。耐えがたい苦しみの中で誘惑を受けたら、私たち人間はまず、自分を救おうとするでしょう。さて、イエスは聖霊に満ちて、ヨルダン川からお帰りになった。そして、荒れ野の中を“霊”によって引き回され、四十日間、悪魔から誘惑を受けられた。その間、何も食べず、その期間が終わると空腹を覚えられた。(ルカ4:1-2)