【高知放送】
【南海放送】
「キリストへの時間」をお聞きの皆さん、おはようございます。忠海教会の唐見です。
今年は、四年に一度のオリンピック・パラリンピック・イヤーです。フランスのパリを中心に、オリンピックは7月26日から8月11日、パラリンピックは8月28日から9月8日まで行われる予定になっています。
オリンピック、そしてパラリンピックでは、普段はライバルであるアスリートたちが、それぞれの国を代表し、チームメイトとして参加します。多くのアスリートにとって、オリンピック代表、パラリンピック代表に選ばれるかどうかは、アスリート人生に少なくないインパクトを与えます。いうまでもないことですが、選ばれるのはそれぞれの競技のトップ、一握りのアスリートたちだけです。
パリ・オリンピックの開会式を100日後に控えた4月17日、アメリカの男子バスケットボールの代表メンバーが発表されました。レブロン・ジェームズ、ケビン・デュラント、ステフィン・カリーなど、NBAのスター選手が名を連ねています。1992年のバルセロナオリンピック、NBAのプロ選手で構成されたアメリカ代表は、ドリームチームと呼ばれました。
それはちょうど、漫画「スラムダンク」(作:井上雄彦)が連載されていたころでした。マイケル・ジョーダン、マジック・ジョンソン、ラリー・バードなどを擁し、他のチームを圧倒して金メダルを獲得しました。今回の代表メンバーも、初代ドリームチーム並みに有力な選手が揃っています。
さて、聖書の中に、「神の国」の代表メンバーともいうべき人々が選ばれる箇所があります。「そのころ、イエスは祈るために山に行き、神に祈って夜を明かされた。朝になると弟子たちを呼び集め、その中から十二人を選んで使徒と名付けられた。それは、イエスがペトロと名付けられたシモン、その兄弟アンデレ、そして、ヤコブ、ヨハネ、フィリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルファイの子ヤコブ、熱心党と呼ばれたシモン、ヤコブの子ユダ、それに後に裏切り者となったイスカリオテのユダである。」(ルカ6:12-16)
イエスによって選ばれた十二使徒を、神の国の代表メンバーとしてとらえると、その選考にはとても興味深いものがあります。十二使徒の選出にあたって、イエスは前夜、山で祈られたとあります。そして、当日の朝になって弟子たちを呼び集め、その中から12人が発表されるのですが、その選考基準がよくわからないのです。
先ほどの全米男子バスケットボール・ドリームチームの例でいえば、5つのポジションに、バスケット・リーグの最高峰であるNBAで活躍する最強の選手が選ばれています。ファンの間で異論がないわけではありませんが、客観的に見て、各ポジションに確かな実績のある選手が選出されていて、その点において、選手選考の基準は明瞭です。
しかし、イエスによる十二使徒の選出に関しては、そうではありません。12人の中には、ガリラヤの漁師、当時は罪人と同列に扱われていた徴税人、そして、過激なナショナリズムで知られる熱心党が含まれています。そして、そのうちの一人は、選考者であるイエスを裏切るのです。さらに付け加えるならば、ユダの裏切りによってイエスが捕らえられるとき、弟子たちは皆、イエスを見捨てて逃げ去ってしまいます。そして、イエスが不当な裁判を受けている最中、ペトロは、「そんな人は知らない」と口走ってしまうのです。
十二使徒の選考基準について、イエスは、あるいは聖書自身は、詳らかにしていません。わたしが言えるのは、そこに神の深いご計画があったはずだ、ということだけです。ただ、明確な答えを得ることはできませんけれども、心に留めておくべき大切なことがあります。それは、イエスは自分が裏切られることを承知の上で12人をお選びになった、ということです。そして、自らの命を犠牲にして行われた神の深いご計画は、とうてい代表に選ばれることのない、小さなわたしの救いに繋がっている、ということです。