【高知放送】
【南海放送】
「キリストへの時間」をお聞きの皆さん、おはようございます。忠海教会の唐見です。
今年2月11日、第58回スーパーボウルが行われました。アメリカン・フットボールNFLの年間チャンピオンを決める、全米で最も関心の高いスポーツイベントです。
前回王者のカンザスシティ・チーフスが、サンフランシスコ・49ersを25-22の僅差で下し、2年連続4回目の優勝を果たしました。スーパーボウルは、その試合内容とともに、全米で中継されるコマーシャルや、ハーフタイムに行われるコンサートにも注目が集まります。試合内容よりこちらの方が関心が高い、と言われることもあるくらいです。
アッシャーがメインを務めた今回のハーフタイム・ショーでは、あることが話題になりました。それは、ドラマーのいない、空のドラムセットです。アッシャー、アリシア・キーズやH.E.Rなどのミュージシャンやダンサーの姿が放映される中、僅かな時間ですけれども、オブジェのように置かれた、空のドラムセットが映し出されました。
私は最初、単純に曲に応じて複数のドラムセットを使い分けているのだと思いました。しかし、そうではありませんでした。その理由について、アッシャーは、彼のバックバンド、ファンク・ロック・オーケストラのドラマーで、昨年10月に47才で急逝した、アーロン・スピアーズへのトリビュートだったことを明らかにしました。
一般には知られていないかもしれませんが、アーロン・スピアーズは、音楽業界では有名なドラマーで、アッシャー以外にも、アリアナ・グランデ、レディー・ガガ、マイリー・サイラスなど、メジャーなアーティストのツアーやレコーディングに参加しています。彼は、「ゴスペル・チョップ」と呼ばれるドラムスタイルの代名詞的存在でした。
父親ケネス・スピアーズは牧師で、彼の音楽的バックグラウンドは、家族で出席する教会のゴスペル・ワーシップでした。幼いころの彼は、教会の礼拝に出席するときは必ず、賛美チームの近くの最前列の席、特に、ドラマーに一番近いところに座っていたそうです。
やがて、地元DCエリアで活動するゴスペル・グループの「ギデオン・バンド」に加入します。バンドの名前は、旧約聖書に登場する士師と呼ばれるイスラエルのリーダー、ギデオンに由来します。そこでのパフォーマンスが目に留まり、アッシャーのツアー・メンバーに抜擢され、DCエリアのローカルなドラマーから全米、さらには世界的なドラマーへの道が開かれていきます。
アーロン・スピアーズのレバートリーに、「主を賛美せよ(Give the Lord a praise)」という曲があります。ここで「主」というのは、聖書が語る神の呼び名です。彼が初めてレコーディングした思い出の曲で、ドラム・クリニックの際にもよく演奏されていました。
そして、昨年11月17日、グレナーデン第一バプテスト教会で行われた葬儀では、そのギデオン・バンドのメンバーによって、この曲が歌われました。突然、愛する家族を失った妻、そして、おそらく小学生くらいの息子、高齢の両親の前で、また、アッシャーやジェラルド・ヘイワードなどの親交のあったミュージシャンたちが集う中で、「主を賛美せよ」のメッセージが礼拝堂に響き渡りました。
「主を賛美せよ」という言葉が繰り返されるシンプルな曲ですが、礼拝堂に流れる賛美に耳を傾けながら、主を賛美するとはどういうことなのか、改めて考えさせられました。主を賛美すること、あるいは主をほめたたえることは、ただ賛美歌を歌うこと、演奏する、ということではありません。また、賛美歌を上手に歌う、ミストーンなく演奏する、ということが目的なのではありません。
「主を賛美する」ということは、創造主であり、救い主である神への感謝の応答であり、信仰の告白であり、神にささげる祈りともいえます。そして神は、わたしたちが献げる賛美の献げものを受け取られ、希望と平安を与えてくださるのです。