キリストへの時間 2024年6月16日(日)放送  キリストへの時間宛のメールはこちらのフォームから送信ください

唐見敏徳(忠海教会牧師)

唐見敏徳(忠海教会牧師)

メッセージ: みんな必要

【高知放送】
     

【南海放送】
     

 「キリストへの時間」をお聞きの皆さん、おはようございます。忠海教会の唐見です。
 
 あまり知られていないと思いますが、明後日の6月18日は「自閉プライドデー」です。障がいを治療対象としてではなく、多様性における個性としてとらえようというムーブメントの中、自閉プライドデーは始まりました。自閉スペクトラムの当事者団体AFF(アスピーズ・フォー・フリーダム)の発案により、当事者のつながりを深め、社会の理解を促進するためのイベントとして、世界各地で行われています。自閉プライドデーやAFFのことを知らなくても、団体のシンボルであるレイボーカラーの無限記号(∞)をどこかで見たことがあるかもしれません。

 また、二か月が過ぎましたけれども、4月2日は「世界自閉症啓発デー」です。こちらは、国連が定めたものです。自閉プライドデーより知名度が高いかもしれません。セサミストリートのマペットと、子どもたちが歌うテーマソング(「We Belong わたしたちのうた」)を、テレビやラジオなどで耳にされた方もおられるかもしれません。地味な活動ですが、わたしの住む竹原市の広報では、関連する記事が掲載され、チャプレンとして働く障がい者施設聖恵会でも、自閉に関する啓発ポスターが貼られました。

 自閉症は近年、さまざまな状態を包含する連続体(スペクトラム)として取り扱われるようになりました。アスペルガー症候群もここに含まれます。前述のセサミストリートとのコラボでは、自閉スペクトラムのマペットとして、「ジュリア」がフィーチャーされています。彼女は、4歳の明るい女の子で、絵を描くこととうさぎのぬいぐるみに強いこだわりを持っています。サイレンなど特定の音に敏感で、ノイズキャンセリングのヘッドフォンを付けて登場することもあります。

 ジュリアの生みの親は、児童文学作家レスリー・キメルマンです。彼女は、自閉スペクトラムの子どもを持つ母親であり、自分自身の体験がもとになって、「ジュリア」というキャラクターが生まれたとインタビューで語っています。また、ジュリアを演じているステイシー・ゴードンも、同じように自閉スペクトラムの子どもを持つ母親で、ジュリアを演じることは特別な意味を持っていると語っています。

 ジュリアは、多くの自閉スペクトラムの子どもがそうであるように、しばしばまわりの人を困惑させる言動を繰り返します。しかし、友達のアビーやエルモ、フーパーズ・ストアのアラン、そして家族は、それをよくないこと、あるいは間違いだといって否定しません。それをジュリアの個性として受け止め、ありのままを受け入れようとします。

 他者を受け入れるということに関して、パウロは、コリントの教会に宛てて、体のたとえを用いて、次のように書いています。「そこで神は、御自分の望みのままに、体に一つ一つの部分を置かれたのです。すべてが一つの部分になってしまったら、どこに体というものがあるでしょう。だから、多くの部分があっても、一つの体なのです。目が手に向かって『お前は要らない』とは言えず、また、頭が足に向かって『お前たちは要らない』とも言えません。それどころか、体の中でほかよりも弱く見える部分が、かえって必要なのです。」(1コリント12:18-22)

 自閉スペクトラムに限りませんが、社会の中で生きづらさを感じながら生きている方が少なくないことを、教会の牧師として、障がい者福祉施設のチャプレンとして、日々感じさせられます。聖書が教えるインクルーシブな社会の実現には、非常に多くの課題があることを痛感しつつ、少なくとも教会は、そのような弱さを持つ方々に寄り添う場所でありたい、と思うのです。



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