おはようございます。長野まきば教会の牧野信成です。
今日は、イエス・キリストの系図にもその名を残す「タマル」のことをお話ししましょう。
イスラエル12兄弟の三番目に当たる「ユダ」は、カナン人の妻を娶って、三人の男の子を設けました。長男の名はエルと言いましたが、そのエルのために迎えた嫁がタマルでした。タマルとはナツメ椰子のことで、砂漠に緑を与えるばかりか、たわわに鮮やかな実を付ける豊穣のしるしでした。
しかし、タマルの夫であったエルは死んでしまい、その弟であるオナンが彼女を妻に娶ります。それが、神の掟であったからです。ところが、そのオナンも死んでしまい、ユダの子どもたちの内、残るは、三男のシュアだけとなりました。ユダは、タマルのせいで息子たちが死んだと思って、三男のシュアを匿い、タマルを未亡人のまま放置しようとしました。それは、タマルにとっては、社会的な死を意味しましたし、神の救いの道筋が、ユダで途絶える寸前でありました。
そこでタマルは、驚くべき勇気を見せます。彼女は、顔を隠して遊女を装い、妻を亡くしたユダが自分を買いに来るのを待ちました。彼女は、慎重に正体を隠して、まんまとユダから子種を奪うのに成功したのでした。こうしてタマルは、強かな知恵でもって、ユダの系図を未来に繋げる役割を果したのでした(創世記38:1-30参照)。
「ユダはタマルによってペレツとゼラを」(マタイ1:3)もうけた、とマタイによる福音書の冒頭にあるイエス・キリストの系図が、彼女の名前を今日まで伝えるのは、タマルの生き残りをかけた必死の闘いもまた、天の神の救いのご計画に含まれていたからです。