【高知放送】
【南海放送】
「キリストへの時間」をお聞きの皆さん、おはようございます。忠海教会の唐見です。
この夏、ジブリの新作映画が公開されました。リスナーの皆さんの中にもご覧になった方がいらっしゃるのではないでしょうか。タイトルは、「君たちはどう生きるか」。宮崎駿脚本・監督の長編作品としては、2013年公開の「風立ちぬ」以来、10年ぶりの新作でした。エンターテインメント作品としてはいかにも重い、ストレートなタイトルに、宮崎駿監督の強いメッセージを感じ取ることができます。
映画のタイトルは、吉野源三郎による同名の小説に由来しています。新潮社から日本少国民文庫シリーズの第16巻、最終配本として、1937年に出版されました。それは日中戦争が始まった年のことであり、4年後の太平洋戦争に向けて、もはや歯止めが効かない状況でのことでした。宮崎駿は、当時の日本と世界が置かれていた状況の中に、現代社会と共通するものを感じているように思います。
「君たちはどう生きるか」を収める日本少国民文庫は、当時としては画期的な児童あるいはヤングアダルト向けの叢書でした。同じ時期の児童向け作品の多くは、時局に流され、軍国少年、軍国少女を育てるためのプロパガンダのようになっていきます。しかし、この叢書は、偏狭なナショナリズムを越えた普遍的な人類の価値を次世代に伝える、という編集方針を堅持しました。これは、プロジェクトの企画者であり、中心人物である山本有三のリーダーシップに負うところが大きいと言われています。もともと自分の子どもに読ませたい本をつくる、という動機で、この叢書はスタートしており、山本は時流に合わせることをせず、国内外の優れた作品、そして協力者を集めていきます。吉野源三郎もその協力者の一人でした。
「人はいかに生きるべきか」という問いは、人が人であり続ける限り、避けて通ることのできない根源的な問い、また本質的に開かれた問いです。人類の歴史上、宗教、哲学、芸術、さまざまな分野で、数多くの人々がこの問題に取り組んできました。この営みは、人類が存続する限り、決して途絶えることはないでしょう。宮崎駿は映画「君たちはどう生きるか」を通して、吉野源三郎は同名の小説を通して、それぞれの答えを、あるいは、答えを見出すための手がかりを提示しようとしていると言えます。
この永遠の問題に真正面から対峙しようとするとき、聖書は、わたしたちにとって最高の案内役になってくれます。聖書は、全世界で最も多く発行され、また最も多くの言語に翻訳されている書物です。これまでにどれほど多くの人々を励まし、力づけ、それぞれの人生の目的を見出すガイドとして読まれ続けてきたか、見当がつかないほどです。
一口に聖書といっても、いろいろなバージョンがあります。ちなみに私が教会、そしてこの番組で使用している主な聖書は、日本聖書協会の新共同訳という聖書です。同じ日本聖書協会が出している聖書として、聖書協会共同訳、口語訳があります。共同というのは、プロテスタント教会とカトリック教会が協力して翻訳したという意味です。そのほかに、プロテスタント教会単独では、新日本聖書刊行会の新改訳聖書など、カトリック教会単独では、フランシスコ会聖書研究所のフランシスコ会訳聖書などがあります。
また今は、聖書を手軽に音声で聞くことができます。CDはもちろん、パソコンやタブレット、スマートフォンを通して、オンラインで聴くこともできます。聖書アプリには、聖書全体を無理なく読むことができる、聖書日課の機能が入っています。また、日本キリスト改革派教会が運営しているふくいんのなみホームページでは、毎日聖書の言葉を聞くことができます。
聖書の一つ一つの言葉は、「あなたの道の光 あなたの歩みを照らす灯」(詩編119:105)です。あなたの日々の生活の中に、聖書の言葉に触れる時間を取り入れてみませんか。