【高知放送】
【南海放送】
「キリストへの時間」をお聞きの皆さん、おはようございます。忠海教会の唐見です。
突然ですが、「インディゴ・ガールズ」をご存知でしょうか。どのような方がいまこの番組を聴いておられるのか、ちょっと見当がつきませんが、おそらく、インディゴ・ガールズと聞いて、よく知っているとお答えになる方は、それほど多くないのではないかと想像します。ちなみに、先ほどネットで調べてみたところ、ウィキペディアの日本語版に、「インディゴ・ガールズ」の項目はありませんでした。
インディゴ・ガールズは、1980年代後半に登場した、ジョージア州アトランタをベースに活動する、エイミー・レイとエミリー・セイリアのデュオです。ふたりは小学生の時に出会い、高校生の時に一緒に曲作りをはじめ、大学生の時に本格的に音楽活動を開始します。1987年に制作したアルバム「ストレンジ・ファイア」が大手レコード会社の目に留まり、翌年、グループ名をタイトルにした「インディゴ・ガールズ」をリリースして、メジャーデビューを果たしました。90年代の半ばまで、リリースしたアルバムはすべて、ゴールドディスク以上の売り上げを記録しています。
しかし、90年代後半に入ると、彼女たちの人気に陰りが見えてきます。新作を出しても以前のように売り上げは伸びず、レコード会社との関係が悪化します。2000年代半ばにレコード会社との契約を終了、インディペンデントで活動することになり、それが現在も続いています。北米以外の地域ではメジャーなプロモーション活動は行わず、少なくとも日本の音楽シーンでここ20年間、インディゴ・ガールズが取り上げられることはなかったと思います。
しかし、ここ最近、インディゴ・ガールズの注目度が上がってきました。昨年は、新設の女性ソングライターの殿堂、そしてアメリカーナ音楽賞で連続して受賞しました。さらに今年に入ってからは、自身のドキュメンタリー映画の公開や映画「バービー」で楽曲が使用されるなど、再びメディアでの露出が増えてきました。この流れで、インディゴ・ガールズを再発見することになりました。現在のインディゴ・ガールズの姿は、自分が記憶していた、かつてMTVで見ていたものとはずいぶん変わっていました。今やミュージシャンであるともに、環境問題やネイティブ・アメリカンの権利などに取り組む社会活動家として、また、LGBTQのアイコンとして認知されていることを知り、時代の流れを感じました。
インディゴ・ガールズの楽曲を聴いてみると、キリスト教的、あるいは聖書的なモチーフを見つけることができます。たとえば、デビュー・アルバムに収録され、アルバムのタイトル曲でもある「ストレンジ・ファイア」という曲があります。これは、聖書のある出来事に由来しています。
「アロンの子のナダブとアビフはそれぞれ香炉を取って炭火を入れ、その上に香をたいて主の御前にささげたが、それは、主の命じられたものではない、規定に反した炭火であった。」(レビ10:1)今お読みしたのは、旧約聖書レビ記10章の冒頭部分ですが、最後の「規定に反した炭火」と訳されているところが、「ストレンジ・ファイア」です。祭司アロンの二人の息子ナダブとアビフが、神がこのようにしなさいとあらかじめ定められたものとは異なるやり方で祭儀を行いました。そしてその結果、二人は神の火で燃やされ、死んでしまうのです。
インディゴ・ガールズの楽曲「ストレンジ・ファイア」では、この規定に反した火をLGBTQに重ね合わせています。この曲が書かれた1980年代は、ちょうどエイズが社会問題化した時でもあり、LGBTQに対する理解は、現在とは比較にならないほど偏見に満ちたものでした。そもそもLGBTQというタームのない時代で、彼ら・彼女らは、まさに社会規範から外れた存在でした。インディゴ・ガールズの二人は、自身がLGBTQであることを公言しつつ、その尊厳や権利のためのメッセージを歌っていたのです。そして、それは同時に、教会のあり方や聖書理解に対するチャレンジのようにも聞こえるのです。