【高知放送】
【南海放送】
おはようございます。高知県の土佐山田という場所で牧師をしています、山田教会の高内信嗣です。よろしくお願いします。
週刊少年ジャンプで連載されている「ONE PIECE」という漫画は、ご存じでしょうか。国内の発行部数は、日本の漫画では最高の5億部を超える大・大・大ヒット漫画です。物語は現在「最終章」に突入しており、毎週、怒涛の展開に、全世界が注目しています。主人公モンキー・D・ルフィが海賊王を目指す海洋冒険ロマン漫画、まだ読んだことがない方も、是非読んでみてください。本当に壮大な世界観に引き込まれると思います。
さて、作中で、主人公ルフィが、自分の「夢」について語る場面が何度かあります。それを聞いていた人たちは、大爆笑していたり、唖然としていたりしています。ですが、肝心な夢の内容については、明かされていません。ルフィが夢を語る描写はあるのですが、その内容は隠されています。そのため、ルフィの夢について、様々な考察がなされています。その夢の考察について、ここでお話をするつもりはないのですが、作中のルフィの振る舞いとつながりがあるといいな、と個人的に思っています。
作中で、ルフィは、様々な人たちと友達になります。それは人間だけではありません。色んな種族の人々とも仲間になります。作中で、「魚人」が登場します。魚人は、古くから人間に気持ち悪がられ、差別されてきた歴史があります。そのため、差別してきた人間に、恨みと憎しみを抱えている魚人も登場します。しかし、ルフィは、種族が違うということで差別はしません。ルフィの仲間の一人にジンベエという魚人がいるのも、そのことを物語っていると思います。
また、トニー・トニー・チョッパーという人気のキャラクターがいます。彼はトナカイです。生まれた時から青い鼻だったという理由で、両親から捨てられます。さらに、悪魔の実というものを食べて、トナカイでありながらも人間になってしまったチョッパーは、さらに、トナカイの仲間たちから嫌悪されます。チョッパーは、大きな心の傷を抱えていました。でも、ルフィは、そんなチョッパーを差別したりはしませんでした。「おもしれえトナカイ」と言って、チョッパーを仲間にしたのです。
ルフィは、このように、世間から嫌われている存在も受け入れ、一つの輪を作り、みんなでどんちゃん騒ぎをします。種族など関係ありません。ルフィの夢は何かはっきりしませんが、今後も、このように支配されている人々、軽んじられている人々、差別されている人々を巻き込んでいくに違いないと思います。このようなルフィの姿は、本当にホッとします。私たちの世界も、このようになれればいいな、漫画を読みながら、そのように思わされます。
さて、「夢」ということに関連して、「I have a dream」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「私には夢がある」、これは有名なキング牧師の言葉です。彼の夢は、明確なものでした。それは、黒人も、白人も、何の差別もなく、平和の中で平等になる、という壮大なものでした。しかし、今の私たちの現実を見つめると、そのキング牧師の大きな夢とはかけ離れた現状があるのではないでしょうか。今も、差別というものが、完全にはなくなっていないのだと思います。
聖書の中に、このような物語があります。ギリシャ人の女性が、イエス様のもとへやってきました。彼女の娘が苦しんでいたため、助けを求めたのです。ですが、「まず、子供たちに十分食べさせなければならない。子供たちのパンを取って、小犬にやってはいけない。」(マルコ7:27)とイエス様は答えました。イエス様は当時、ユダヤ人たちを中心にお働きをしていました。つまり、まずはユダヤ人たちを中心にお働きをしなければならない、と言って、彼女の願いを退けたのです。
ちょっとかわいそうかな、と、イエス様は差別するのかな、という疑問も抱くのですが、彼女は引き下がりませんでした。「主よ、しかし、食卓の下の小犬も、子供のパン屑はいただきます。」(マルコ7:28)と返したのです。子犬も、食卓からこぼれてくるパン屑を食べるんだと。そのように、あなたの恵みは、子どもだけに留まるものではないでしょう。こぼれたものでもいい。そのこぼれたものでも、私の娘を助けてくれる力がある。それをください、と彼女は言ったのです。すると、イエスは、娘が解放されたことを告げたのです。
この物語は、ルフィの振る舞いや、キング牧師の夢とも重なるような気がします。イエス様の恵みは、ユダヤの世界だけに留まるものではないのです。ギリシャの女性にも注がれるのです。イエス様の恵みは、人を差別しません。私たち一人ひとりにも注がれています。その大きな愛に、今朝、目を向けてみませんか。イエス様は、あなたに、溢れるばかりの祝福を注いでくださっています。