キリストへの時間 2023年4月30日(日)放送  キリストへの時間宛のメールはこちらのフォームから送信ください

唐見敏徳(忠海教会牧師)

唐見敏徳(忠海教会牧師)

メッセージ: 申命記〜約束の地へ

【高知放送】
     

【南海放送】
     

 「キリストへの時間」をお聞きの皆さん、おはようございます。忠海教会の唐見です。
 今月は、モーセ五書シリーズということでお話ししてきました。今回が最終回になります。モーセ五書の最後の書、「申命記」からお話しします。

 モーセ五書の最終巻「申命記」は、40年にわたる荒れ野の旅の最後、約束の地に入る直前の様子について語ります。前書の民数記で語られているように、モーセは、約束の地に入ることはできません。彼の後継者としてヨショアが任命され、姉のミリアム、兄のアロンに続き、自身の死が近いことをモーセは悟っています(民数記27:12-参照)。

 「申命記」という名称は、かさねて命じる、という意味です。「第二の律法」を意味する、ギリシア語聖書七十人訳、またラテン語聖書ウルガタ訳の伝統に由来する訳語です。ヘブライ語聖書では、「言葉」と呼ばれます。申命記の大部分は、モーセの口を通して再び語られる主の言葉です(申命記1-30章参照)。1章5節によれば、それは、「律法の解き明かし」、すなわち説教です。しかも、遺言というべき最後の説教です。それは、「わたし」が「あなたたち」に語るという語り口になっています。約束の地に入ることのできないモーセは、そこに存在しえない者として、未来を次の世代に託し、語っています。

 申命記で語られる言葉は、大きく3つの部分に分けることができます。最初の部分は、1章から4章までです。荒野の40年を振り返りつつ、これから約束の地に入ろうとしているイスラエルの人々に、主の掟と法を忠実に守るように教えます。彼らが主に対して不従順であったことを指摘しながら、それでもなお、主は、ご自身の民を愛しておられることを示して、主に従って歩むように伝えます。

 二番目の部分は、5章から28章です。主イエス・キリストが最も重要な掟として引用している、「聞け、イスラエルよ」(申命記6:4)を含む、本書の中心的な部分です。申命記法典とも呼ばれ、シナイ山での契約を振り返りつつ、約束の地での定住生活に適合するように律法が語られます。

 三番目の部分は、29、30章で、モアブでの契約の言葉です。ここでは、ヨシュアを新たなリーダーとして、まさにこれから約束の地に入ろうするイスラエルの民に対して語られます。そこでは、主なる神との契約関係を遵守することの祝福を伝えるとともに、反対に従わないことに対する呪いが強調されます。

 残りの4つの章は、申命記の結びであり、また、モーセ五書全体としての結びともいえるものです。後継者ヨシュアの任命、モーセの最期の歌、イスラエル十二部族への祝福の言葉、そして、モーセの死で閉じられます。

 約束の地に入ってからのことを見据えて語られる申命記の言葉は、二つの面を持っています。それは、出エジプト記に始まるイスラエルの放浪生活を総括するとともに、これから始まる約束の地での定住生活を暗示しています。申命記以降、ヨシュア記、士師記、サムエル記、そして列王記と、イスラエルの歴史は続いていきます。時代は移り変わっても、根本的な部分において同じことが繰り返されます。不従順で頑ななイスラエルと、それでもなお、彼らを愛し続けられる主なる神のコントラスト。これが、常に通奏低音として流れているのです。

 モーセの死で閉じられる申命記は、「イスラエルには、再びモーセのような預言者は現れなかった。」(申命記34:10)と記しています。確かに、モーセは偉大なリーダーであり、イスラエルをエジプトから約束の地へと導くにあたって、非常に大きな役割を果たしました。旅の途中で与えられた律法はモーセに帰され、イスラエルの人々にとって最も誇らしい人物の一人として記憶されるようになります。

 しかし、モーセのような預言者は現れませんでしたが、モーセにまさる方として、主イエス・キリストが現れたことを聖書は証言します。例えば、洗礼者ヨハネは、「律法はモーセを通して与えられたが、恵みと真理はイエス・キリストを通して現れた」(ヨハネ1:17)と語り、ヘブライ人への手紙の著者は、「モーセが神の家全体の中で忠実であったように、イエスは、御自身を立てた方に忠実であられました。家を建てる人が家そのものよりも尊ばれるように、イエスはモーセより大きな栄光を受けるにふさわしい者とされました。」(ヘブライ3:2-3)と語ります。

 主イエス・キリストを信じる信仰の前に、民族や人種の違いは意味を持ちません。モーセにまさる主イエス・キリストは、彼を信じるすべての人を神の民として、約束の地へと導くリーダーとして、この世に遣わされたのです。



※ホームページでは音楽著作権の関係上、一部をカットして放送しています。
Copyright (C) 2023 RCJ Media Ministry All Rights Reserved.