キリストへの時間 2023年3月12日(日)放送  キリストへの時間宛のメールはこちらのフォームから送信ください

高内信嗣(山田教会牧師)

高内信嗣(山田教会牧師)

メッセージ: モノクロからカラーへ

【高知放送】
     

【南海放送】
     

 おはようございます。高知県香美市の山田教会で牧師をしています高内信嗣です。よろしくお願いします。
 「はらぺこあおむし」という有名な絵本があります。この絵本の作者は、エリック・カールと言います。2021年に亡くなりました。彼は、アメリカのニューヨーク州に生まれ、アメリカの絵本作家として有名です。

 しかし、実は両親がドイツ人であり、1935年、エリックが6歳の時に、家族と共にドイツへ移住しました。第二次世界大戦の間、高校生になるまで、エリックはドイツで過ごしました。当時のドイツは、ナチス政権です。ヒトラーは、近代美術をひどく嫌いました。それは、近代美術を担っていた芸術家にユダヤ人が多かった、という理由もあったからです。

 ナチス政権は、その政権にそぐわないと判断した芸術作品に、「退廃芸術」というレッテルを張りました。さらに、ドイツ各地の美術館から作品を押収した上で、その作品を展覧する「退廃芸術展」というものを開催したのです。各作品を嘲るラベルが付けられ、多くの芸術作品が、大々的に晒しものにされました。また、「退廃芸術」による表現の規制は、美術だけでなく、映画や音楽など、あらゆるジャンルに及びました。そのように、表現の自由が制限される一方、ナチス政権は、人種差別主義やナショナリズムに価値を置く作品を、国民に広く推し進めたのです。

 エリック・カールが移住したのは、そのような時代のドイツでした。エリックは、インタビューでこう語っています。「爆撃機から目立たないよう、家は、茶色やクリーム色に塗り替えられていましたし、町では、鮮やかなスカーフや服を見ることもなくなりました。すべてが灰色だったのです。」芸術作品だけではなく、市民生活も、さまざまな形で抑制されていたのです。

 そのような弾圧の中でしたので、エリックは、ピカソやマティスという有名な芸術家のことを、全く知りませんでした。エリックが12歳の時のある日、美術の先生が、こっそり、禁じられていたピカソやマティスの色鮮やかな作品を見せてくれました。そして先生は、「君は自由に絵を描けばいいんだ」と言ってくれたそうです。エリックの作品は、とても色鮮やかです。「はらぺこあおむし」のラストに描かれる蝶々の色彩には、圧倒されます。エリックの色鮮やかな作品の背後には、ナチス時代の経験があったのです。

 エリックは、インタビューでこう語っています。「わたしの人生には、いろいろなことがありました。私の本が、皆さんの喜びになり、学びになり、成長の助けになることを願っています。」モノクロの世界を生きた彼は、鮮やかに本を描くことによって、人々に勇気を与えたいと願っていたのです。私たちの世界は時に、色を失います。一人ひとりの大切な個性が、封じられることがあります。私たちの生きる「今」も、世界で争いが絶えません。人間の大切な命が軽んじられています。この世界は、ある意味で、それぞれの色彩を失ったモノクロの世界なのかもしれません。

 一つの聖書の言葉に、目を向けたいと思います。「起きよ、光を放て。あなたを照らす光は昇り 主の栄光はあなたの上に輝く。見よ、闇は地を覆い 暗黒が国々を包んでいる。しかし、あなたの上には主が輝き出で 主の栄光があなたの上に現れる。」(イザヤ60:1-2)。聖書に記されてある、一つの希望のメッセージです。神を信じる民の上に、光が昇る。

 さらに、光が照らされていない外の国の人々にも、目が向けられています。「国々はあなたを照らす光に向かい 王たちは射し出でるその輝きに向かって歩む。」(イザヤ60:3)。暗闇の世界を生きる人々も、光を慕い求めることが語られています。神様は、人間が暗闇の世界にいることを、決して望んでおられないということです。

 苦しい時代を生きたエリックは、色鮮やかな色によって、読者が羽ばたいていくのを望みました。私たちに色彩を与えてくださるのは、神様です。光を与えてくださるのは、神様です。神様は、あなたが暗闇の中で生きていくことを望んでおられません。あなたを照らしてくださいます。あなたのいのちを、豊かに用いてくださるお方です。私たちのカラーが、この世界を彩ることを信じて、今日も、神の光に目を向けたいと願っています。



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