あさのことば 2023年4月13日(木)放送    あさのことば宛のメールはこちらのフォームから送信ください

川栄智章(せんげん台教会牧師)

川栄智章(せんげん台教会牧師)

メッセージ: 罪の力に無力な私



 いかがお過ごしでしょうか。せんげん台教会の川栄智章です。
 作家ヘルマンヘッセのエッセイに、彼の幼少期を告白する「少年の日の思い出」があります。

 少年ヘルマンは、蝶の標本を集めることに夢中でした。ある日、医者の息子のエミールが、大きな珍しい蝶を見事成長させた、という噂を聞きました。ヘルマンは、自分のプライドが傷つくため、彼にそれを見せくれとは言えませんでした。しかし、見たい気持ちを抑えきれず、彼の家に行くことにしました。

 エミールは留守で、二階の彼の部屋の扉は開いていました。「そうだ、エミールに頭を下げることなく、こっそり蝶だけを見て帰ろう。」と思い、勝手に標本の蝶を覗きこみました。胸がドキドキしながら蝶を見ていると、何とかしてこの蝶を自分のものにしたい、という思いに駆られました。

 蝶を針ごと抜いた瞬間、一階から物音が聞こえたので、びっくりして蝶をポケットの中に入れてしまい、再びポケットから取り出してみると、あの美しい蝶の触覚がつぶれ、羽根もたくさん破損していました。ヘルマンは泣き出しそうになり、壊れた蝶をそこに置いたまま、誰にも知られず、そこから立ち去りました。

 私たち人間は、誰もが罪人です。心の中を覗けば、一日たりとも罪を犯さないで過ごすことなどできません。私たちは、罪の大きな力の前に、全く無力な存在です。もし、自分の罪に向き合うなら、聖書がその解決を与えてくれるでしょう。

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