坂井孝宏（湘南恩寵教会牧師）

メッセージ： 人生が空しいと感じてしまったなら
♪「『闇から光へ』歌：ノア」

　ごきげんいかがですか。神奈川県の茅ケ崎市にあります湘南恩寵教会の牧師をしております、坂井孝宏と申します。
　今日はちょっと珍しいところで、聖書の中でも特にユニークなコヘレトの言葉というのを紹介したいと思いますけれども、その書き出しが面白いんですね。「空しい、空しい、すべては空しい」と、こう始まっていきます。そういう人生の空しさっていうものを、延々と11章にわたって語り続けていきます。空しい、空しいと。こういう言葉に共感を覚えるという方が、特に日本人には多いようです。自分の思いを言葉にしてもらったような気がすると、そんな風に言っておられた方もいらっしゃいました。

　この「空しい」という言葉はもともと、人の息ですとか、空気や風なんかを表すんですが、つかみどころのないものといいますか、決して追いかけても追いかけてもとらえられない。ぐっとつかんでも何も残らない。確かな手応えということとまるで反対のものなんですね。手に残るものが何もないというさみしさです。

　コヘレトの言葉っていう題名がついてますが、このコヘレトというのは何者なのか、正体不明なところがありますけれども、この人はソロモン王じゃないかというふうに伝統的に言われてきました。圧倒的な地上の成功者です、ソロモンという人は。だけれども空しいんだっていうんです。世界中の学問を修めて、たくさんの仕事の業績を残したわけです。富も権力ももったわけですね。だけれども空しいと。そこで今度は道楽にふけってみようと、酒を飲み、美女を侍らせ、金銀財宝に囲まれて快楽の限りを尽くしてみたんだけれども、それでも空しいと。どれほどやりたい放題やっても心が満たされないっていうことをずっと語るんです。

　しかし最後の12章に至って、そのむなしい人生を意味あるものとする、唯一の原理を語ります。それが「神を畏れ、その戒めを守れ、これこそ人間のすべて。」というものです。コヘレトの12章の13節の言葉です。神を畏れよと言います。天の下にあるものはすべて空しいって、こういうふうにコヘレトは言うんですけども。でも神様は天の上におられる方ですから。天の下じゃないんですね。天の上におられるから、だから神を畏れよ、そこにしか救いはないって言います。そして若者たちに向かってこういう風に諭すんです。「青春の日々にこそ、お前の創造主に心を留めよ」と。青春の日々にこそ、お前の創造主に心を留めよ、と。コヘレト12章1節の有名な言葉です。これ、どういうことか、と。

　これ、ポイントなのは「お前の」創造主、と。「お前の、あなたの」創造主に目を留めよと言われてることです。単に創造主というんじゃなくて、あなたの、あなたを造られた方がおられることを、そのことを大切に考えよと。なぜならあなたの創造主がいるということは、あなたが生まれたのは、偶然じゃないということだからです。人知を超えた深いご計画と愛情の中で、あなたは、あなたの創造主の御手によって、その最愛の作品として創り出されました。だからあなたの存在には意味があります。神が定めておられる生きる目的があります。神は特別な意図をもって、あなたを創りだされたのですから。特別な愛をもって、本当に最愛の作品としてあなたを創り出されたんですから。だから意味があります。

　この創造主のもとに、あなたの創造主のもとに、あなたの人生の空しさがあがなわれるすべてがあります。コヘレトは言いました、なにもかもが空しい、と。なんで空しいのかというと、どんなことをしてみても、結局幸福が得られないんだと。満たされない。その幸福とは物質的な幸福ということとは違いましたね。そういうものだったら、もうコヘレトは全部持ってたんです。お金も名誉も、酒も女も、あらゆる快楽、あらゆる愉悦を楽しんだんです。だけども(幸福に)なれなかった。彼が求めたのはもっと魂のことだったんです。

　自分の魂の深い深いところに確信を与えてくれる霊的な喜び、それは生きる意味と言ってもいいかもしれない。自分が何者なのか、どこから来てどこへ行くのか、何のために生きていくのか、そして何のために死んでいくのか。そういうことを知らないと本当は生きていけないんです、人間って。人間というのはそういう生き物です。そういうことを知るっていうこと、それが幸福ということであり、それが広い意味で「救いを得る」ということと言ってもいいと思います。あなたの創造主のもとにそういう幸福があり救いがある。それがコヘレトの指し示していることです。