おはようございます。清和女子中高の小西です。今日から4回、お話をさせていただきます。4回とも食べることを大切にした、そして映画になった小説を取りあげます。
作家群ようこの作品に「かもめ食堂」があります。主人公の名前はサチエさんです。映画では小林聡美さんが演じています。サチエさんは38歳です。行きがかり上、フィンランドに行くことになります。どうせ行くならと、ふだんは封印している才能の「念力」によって、宝くじで大金を当てます。そのお金でフィンランドの首都ヘルシンキに「かもめ食堂」というレストランを開店させます。サチエさんは小柄で年齢より若く見られます。それもあってか、かもめ食堂は「子ども食堂」と呼ばれます。いま日本では、ボランティアの人たちによって「子ども食堂」が運営されていますが、それとは違います。
サチエさんはヘルシンキに食堂を出すにあたって考えたことがありました。それはオーナーの自分が美味しいと思ったものだけを出すことでした。一番のこだわりはおにぎりです。サチエさんは食べることを大事にしていて、自分の好きなのりを巻いたおにぎりをヘルシンキの人たちにもぜひ食べてもらいたかったのです。しかしサチエさんの気持ちとは裏腹に、かもめ食堂に入ってくるお客さんはあまりいませんでした。まして、馴染みのないおにぎりを注文する人はもっといません。この作品には食事を作る場面がよく出てきますが、メニューも贅沢でないけれど、食べると幸せな気分になれそうなものばかりです。
私が「かもめ食堂」に関係することで好きなことが一つあります。それはかもめ食堂をイメージしたテレビCMです。演じているのは小林聡美さんから今は深津絵里さんに代わりましたが、思い出すのはサンドウィッチをつくる場面のものです。
白と青が基調の明るいキッチンの中で、軽く焼いた食パンの上に千切りのキャベツ、そして揚げたてのコロッケが載せられ、そこにとろっとしたソースがかけられます。その上にもう一枚パンをかぶせてできたサンドウィッチに、包丁を入れる瞬間、サクッという音が聞こえます。切り口が見せられます。ごくありふれたコロッケサンドですが、本当においしそうに見えました。それを眺めているお客さん、フィンランド人のエキストラだそうですが、彼らも幸せそうな表情でした。
なかなかのCMだと思いました。その理由はコンセプト、つまり何を伝えたいかがよくわかるからです。このCMでいいたいこと、それは、パンは命だということです。サンドウィッチにとって味の決め手はパンだと、メーカーの主張がよく伝わってきます。それを食べたら人は幸せになれる、元気になれる、そんな気分にさせてくれるCMです。
このCMを見ながら、わたしは次のフレーズが頭に思い浮かびました。「サンドウィッチの命がパンなら、私の人生は命がパンだな。」何を言いたいのかわかりにくいと思います。意味はパンが命に、ではなく、命がパン、になったということです。
今日の聖書(ヨハネ6:48-51)に「わたしは命のパンである。わたしは天から降ってきた生きたパンである。このパンを食べるなら、その人は永遠に生きる。」とあります。これはイエスが弟子や大勢のユダヤ人に対して使った言葉です。ここでいうパンは食べ物全体の象徴でしょう。人が元気に生きるためには、何を食べるのか、どのくらい食べればいいのか、それが大事です。何を食べるかということは、言い換えるなら、どのように生きるかです。
イエスは、私という人間がイエスを受け入れることによって、生き生きさを取り戻すことができる、幸せな状況になっていく、平和な世の中になっていくといわれるのです。イエスはそれを「わたしは命のパンである。このパンを食べるなら、その人は永遠に生きる」という一言で表されたのです。イエスの招きに応える自分でありたいと思います。