10月8日(水) コヘレト1章
知恵が深まれば悩みも深まり
知識が増せば痛みも増す。
日本聖書協会『聖書 新共同訳』コヘレトの言葉1章18節
以前の日本語訳では「伝道の書」の名で親しまれた書物です。「コヘレト」とは人物の名ではなく、今日では職名と理解されて、原語のヘブライ語のまま「コヘレト」と表記されます。表題に「エルサレムの王、ダビデの子」とあり、伝統的にはソロモン王の作とされてきました。けれども、内容的には旧約聖書の中でもかなり新しい書物と見られますので、ソロモンの名声に寄せて書かれた信仰の知恵であろうと考えられます。
本書の特徴は、「すべては空しい」と繰り返されるつぶやきに表れる虚無感、厭世観です。信仰者なのにどうしてと思われるかもしれませんが、もちろん神の存在を否定して「空しい」と言うのではありません。神が創造なさった世界であるはずなのに、人間にはすべての仕組みを知ることはできず、罪ある世界を変えることもできないことを知ったときの、自分と世界に対する幻滅です。
イスラエルきっての知恵者と讃えられるソロモン王でこその権力と知恵を備えても、その空しさを抱えた心は満たされず、むしろ世界大に広がった「知恵と知識」のゆえに悩みと痛みをより深く感じています。現代人の心を映すようなコヘレトの言葉には、小さな子どもたちであっても共感することができるでしょう。
【祈り】
私たち人間の知恵と知識をはるかに越えるあなたの御存在と知恵を、聖書を通して確かに教えてください。