キリストへの時間

赦しがなければ人は生きられない

放送日
2025年11月9日(日)
お話し
山下 正雄(ラジオ牧師)

山下 正雄(ラジオ牧師)

メッセージ:赦しがなければ人は生きられない

【高知放送】

【南海放送】

 おはようございます。あなたの心の健康を応援する山下正雄です。

 今日は、「赦し」についてお話しします。

 誰かに裏切られた経験、離れてしまった家族とのわだかまり、また、自分自身の過ちに対する後悔…こうした心の重さは、ふだん一人で抱え込みがちです。外見は平静でも、内側に、収まらない怒りや悲しみがくすぶり続けることがあります。長くそのままにしておくと、健康や人間関係にも悪影響を及ぼします。

 「赦し」とは、何でしょうか。しばしば、「忘れること」、「相手を正当化すること」と誤解されますが、本質は少し違います。赦しは、まず、自分の心の中にある恨みや怒りを手放すことです。それは、相手の行為を黙認することではなく、自分がその苦しみに縛られ続ける状態から自由になる選択です。言い換えれば、赦しは、自分のための解放でもあります。

 けれども実際には、人はなぜ、赦すことが難しいのでしょうか。それは、傷つけられた出来事を忘れられないからです。また、「赦したら相手の行為を軽く扱うのではないか」という不安や、「自分の正しさが否定されるのではないか」という思いがあるからです。心の痛みが深ければ深いほど、赦しは遠いものに思えます。ですから赦しは、人間の力だけではなかなか成し得ないのです。

 聖書は、赦しを重視します。イエス・キリストは、十字架の上で、「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです。」(ルカ23:34)と祈られました。この言葉は、極限の状況でさえ赦しを選ばれたイエスの姿を示しています。

 また、キリスト者に向けては、「互いに…赦し合いなさい。主があなたがたを赦されたように」(コロサイ3:13)と聖書は教えています。赦しはただ、道徳的な要求ではなく、神の恵みを受けた者の応答でもあります。

 とはいえ、赦しは、一朝一夕にできるものではありません。深い傷ほど時間がかかります。小さな第一歩として、自分の気持ちを、誰か信頼できる人に話してみることを勧めます。専門家の助けを借りるのも、一つの道です。また、祈りの中で、自分の痛みを正直に神に打ち明けることも、助けになります。赦しは、内側から少しずつ育っていきます。

 その歩みを支える場として、「教会」も大切です。教会はただ、礼拝する場所ではありません。互いに耳を傾け、祈り合い、共に歩む共同体です。教会で語られる神の言葉や、同じ信仰を持つ人々との交わりは、赦しを実践する勇気を与えます。自分ひとりでは抱えきれない重荷も、信頼できる共同体の中で、少しずつ分かち合うことができます。

 赦しを実践することは、相手と再び関係を築くことにつながる場合もありますし、そうでない場合もあります。重要なのは、自分が赦しによって解放されること、そして、その過程で自分がより平安を取り戻すことです。赦しによって心の重荷が軽くなったとき、人は初めて、新しい一歩を踏み出せます。

 もし今、あなたが深い怒りや悲しみを抱えているなら、赦しの可能性を少しだけ考えてみてください。自分一人で無理をする必要はありません。祈りと、信頼できる人との対話、そして、教会の支えの中で、赦しへの道が少しずつ見えてくることを祈っています。

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