おはようございます。綱島教会の小宮山裕一です。
有島武郎の小説に「カインの末裔」というものがあります。お読みになったことがある方もおられるかもしれません。
カインにはアベルという弟がいました。この2人は聖書が記す人類最初の兄弟です。旧約聖書に登場する兄弟はたいてい、不幸なのですが、その中でも特に不幸なのがこのカインとアベルでしょう。
カインは弟のアベルを殺します。その理由を簡単に言えば、嫉妬と競争心です。兄弟という、最も親しい関係に嫉妬が入り込んだ結果、悲惨なものとなる。良いものほど、悪が入ると邪悪になる。こうして、カインはアベルを殺したのです。嫉妬と競争心による人間関係の破壊。このことは今も昔も変わらずに、私達に突きつけられている現実です。
殺されたアベルは土の中から叫んだと聖書は語ります。このことはアベルが決してカインを許さないことをあらわします。恨みといっても良い。被害者は加害者を許すことができません。まさに、人間の姿です。
こうして考えると、私達は嫉妬にかられるのですからカインの末裔です。しかし、許すことができないのでアベルの末裔でもあります。嫉妬と恨み。この悪循環に陥るとき、私達は健全さを失うのです。
この悪循環から解放するために、アベルの血よりも立派に語る血があると新約聖書は語ります(ヘブライ12:24参照)。それが、キリストが流された血なのです。嫉妬からも、恨みからも解放されるためには、このお方を信じるほかないのです。