熊田なみ子のほほえみトーク 2016年5月24日(火)放送

熊田 なみ子(スタッフ)

熊田 なみ子(スタッフ)

小さな朗読会201「ダニエル」
(「母と子の聖書旧約下」100章)

 ネブカデネザルが最初にエルサレムにいったとき、彼は、自分の家来の長に、バビロンの宮庭でつかえるために、ユダヤ人の貴族たちを何人か連れてくるように命じました。彼は、顔形が整っていて、かしこく、しつけもよい少年を選ぶようにいいつけられました。かれらは、バビロンに連れていかれ、バビロニア語またはカルデヤ語を教えられ、バビロンの慣習や知識を訓練されることになっていました。

 やがて、これらのユダヤ人の貴族たちは、王の宮庭にやってきました。そのなかに、ダニエル、ハナニヤ、ミシャエル、アザリヤという四人の少年がいました。彼らは、王の血筋のものでした。おそらくヨシヤ王のおいだったのではないかと思われます。王は、ユダヤの少年たちが自分の名前をそのままもつのを好まないので、カルデヤの名前をつけました。ダニエルはベルテシャザル、ハナニヤはシャデラク、ミシャエルはメシャク、アザリヤはアベデネゴと名づけられました。

 ネブカデネザル王は、これらの貴族が、よく教育されているうえに、健康でなければならない、といいました。王は、彼らが、王の食卓のためにつくられた料理を食べ、王自身の飲むよい酒を飲むように、命令しました。この命令を聞き、ユダヤの少年たちは思案しました。ずっとむかしモーセは、食べてよい食物についてきびしい規定をもうけました。彼らは、きよい動物しか食べてはいけませんでした。また、肉に血の残らないように、特別な方法で殺された肉でなければいけませんでした。もし、王の食卓の肉を少年が食べるとすれば、必ず律法を犯すことになります。
 ダニエルは、王の肉や、食卓からおくられる酒を食べたり飲んだりしない、と決心しました。ダニエルはまだ幼いとき、ユダヤから連れ去られたのですが、自分の神に忠実であろうと決めていたのです。
 そこでダニエルは、若い貴族たちの食事係をしている家令の長のところにゆき、自分と三人の友は、王の肉と酒を食べなくてもよいようにしてほしい、と頼みました。

 これらの少年たちは、友だちや家族から離れていましたが、神さまはともにおられました。神さまは、家令の長が若者たちに好意をしめすようにされました。その人はダニエルに、「あなたがたの好きなものを食べさせてあげたいが、もしあなたがたが他の人々よりも健康状態が悪くなると、王はわたしの首を切ることでしょう」といいました。

 ダニエルはあきらめませんでした。「10日だけやらせてみてください。わたしたちにただ野菜をあたえ、水を飲ませ、そしてほかの若者とくらべて見てください」といいました。そこで家令の長は、10日間ためしてよいといいました。10日たつと、四人の少年は、王の食物と酒をとっていた他のだれよりも美しく、健康でした。神さまは、ご自身に忠実だった四人に、知識と技能を与え、むくいられました。ダニエルは幻や夢を理解できるようになりました。

 3年すぎて、若いユダヤ人貴族たちの係は、彼らを王に会わせる準備をしました。彼らは、からだにつける香料と、立派な衣服を与えられました。それから王のところに連れていかれました。もう少年たちは、カルデヤ語を上手に話せるようになっていました。またカルデヤの習慣、作法を教えられていたので、王に話しかけられたとき、どう答えればよいかも知っていました。

 少年たち全部が王の所に連れてこられ、王とひととおり話したあと、王は、ダニエル、シャデラク、メシャク、アベデネゴを自分のまえに立たせました。知識と理解力の点で、彼らが国じゅうの法術士や学者に十倍もまさっていることを、王が発見したからです。

 ある夜、ネブカデネザルはふしぎな夢を見ました。すべての異教徒と同じように、この王も迷信深かったのです。彼は夢やしるしを恐れました。バビロンには、大ぜいの魔術士や法術士がいました。彼らは、魔法や夢を説くことを仕事としていました。ネブカデネザルは、これらの博士をみな集め、「わたしは夢を見たが、その夢の意味で悩んでいる」といいました。
 魔術士たちは、「王よ、とこしえに生きながらえられますように。どうぞその夢をお話しください。わたしたちはその解き明かしを申し上げましょう」と、いっせいにいいました。
 すると、ネブカデネザルは、「わたしは夢を忘れてしまったが、あなたがほんとうに魔術士なら、その夢が何であったかわかるはずである。もし、夢とその解き明かしを示さなければ、あなたの身を切り裂き、あなたがたの家を滅ぼす。しかし、夢とその解き明かしを示すならば、贈り物と報酬と大いなる栄誉とを与えよう。だから、わたしの知りたいことを示しなさい」と、彼らにいいました。

 この無理な要求を聞いて、魔術士たちは恐れおののきました。彼らは、ネブカデネザルが世界を征服した以上、自分たちを好きなようにできることを知っていました。殺したければ、殺すこともできます。そしてだれも、それをとめることはできません。彼が怒るたびに、その家来たちは恐れました。

 そこで魔術士たちは、おののきながら。「王は無理なことを要求されます。地上に住まない神々のほか、だれが、王の要求にこたえられるでしょう」といいました。これを聞いて、王はひじょうにおこり、「あなたがたがほんとうの魔術士ならば、夢を示すことができる。これであなたがたが、ほんとうの知者でなく、にせものであることがわかった。あなたがたに夢がわからなければ、どうしてその解き明かしが正しいか、わたしにわかるだろう。あなたがたは、勝手な解き明かしをつけるかもしれない」といいました。

 王は自分の兵隊たちに向かって、「その首を切れ」と命じました。
 町じゅう王の侍衛の長は、あらゆる知者―魔術士、法術士、学者―を探しました。ダニエルやその仲間たちも、知者といわれていたので、首を切られることになりました。ダニエルは、侍衛の長に、「王はなぜこんなにいそいで知者たちの首を切ろうとしているのですか」と聞きました。

 夢のことを聞くと、ダニエルは王のところにいきました。これはたいへん勇敢なことです。というのはそのころ、王に呼ばれないで、自分から王のところにいくということは、だれもしなかったからです。もし王の部屋にいっても、王が金のしゃくを差しださなければ、兵隊たちはその人を部屋から押しだし、殺したものです。ダニエルは、これを知っていましたが、神さまが自分を守ってくださると信じていました。王はしゃくを差しだしたので、ダニエルは進み出て地面にふし、「王よ、とこしえに生きながらえられますように。王がわたしに時間を与えてくだされば、その夢をお告げできましょう」といいました。

 王は待つことを承知し、ダニエルは家に帰りました。彼は三人の友とともに神さまに、自分たちがほかの知者たちといっしょに殺されないため、王の夢を教えてください、と祈りました。
 神さまはその夜、ダニエルの寝ているあいだに、その夢を現されました。ダニエルは神さまに感謝し、夢を教えられた恵みをたたえました。それから王の高官のもとにいって、「知者たちの首を切ってはいけません。わたしを王のまえに連れていってください。わたしのその解き明かしを王に示します」といいました。

 高官はたいそう喜びました。彼は王のもとに急ぎ、「王よ、とこしえに生きながらえられますように。ユダから捕えてきた者のなかに、その夢を王にお知らせできる人がひとりいます」といいました。すると、ネブカデネザルは、ダニエルに、「あなたはわたしが見た夢と、その解き明かしとをわたしに知らせることができるのか」といいました。

 「はい」とダニエルは静かにこたえました。「魔術士や法術士には王ご自身がお忘れになった夢を示すことは不可能ですが、後の日に起こることを王に知らせるため、夢を王におくられた神が、天におられます。この夢を神がわたしにあらわされたのは、すべての生ける者にまさって、わたしに知恵があるからではなく、ただその解き明かしを王にわたしがお知らせできるためです。神はその意味を王に知らせたいと願っておられます。王よ、あなたは非常に大きくて光り輝く像を一つごらんになりました。その像の頭は純金、胸と両腕は銀、腹とももとは青銅、すねは鉄、足の一部は鉄、一部は粘土でした。
 あなたが見ておられると、一つの石が人手によらずに切りだされて、その像の鉄と粘土との足を撃ち、これを砕きました。こうして鉄と、粘土と、青銅と、銀と、金は、みなともに砕け、風に吹きはらわれました。ところがそのあとで、その像を撃った石は、大きな山となるまで大きくなり、全地に満ちました。これが、王よ、あなたの見た夢です。

 こんどはその解き明かしをしましょう。王よ、あなたは諸王の王であって、天の神はあなたに国と力と勢いと栄えとを賜い、人の子の住む国をみなあなたの手に与えられました。神はまた野の獣、空の鳥もあなたに与えられました、王よ、あなたはあの金の頭です。
 あなたの国の次に、あなたに劣る一つの国が起こります、これが銀の国です。そのあとで、青銅の国が起こり、これも全世界を治めます。これらの国のあとに、足の一部が強い鉄、一部が弱い粘土であったように、鉄のように一部が強く、粘土のようにその一部が弱い第四の国が起こります。そして、一つの石が人手によらずに山から切りだされ、鉄と粘土、銀と金を砕いたように、天の神は、これらのもろもろの国を撃ち破る一つの国を立てられます。この国は立って永遠にいたるのです。

 大いなる神がこのあとに起こるべきことを、王に知らされたのです。
 ダニエルがこの夢の解き明かしを語るのを聞いて、ネブカデネザルはたいそう驚きました。彼は、自分の異教の偶像より偉大な神がおり、この大いなる神がすべての出来事を起こされることを知りました。王はダニエルのまえでひれふし、「まことにあなたがたの神は神々の神、王たちの王であって、秘密をあらわされるかたである」といいました。

 ネブカデネザルは、ダニエルにたくさんの贈り物をあたえ、バビロン全州の総督、知者たちの統轄者にしました。ダニエルは、自分の友だちを忘れませんでした。王が彼らを州の事務をとるものにすることを願いました。ダニエル自身は、王の側につかえました。

 神さまがこのバビロンの異教の王に示された夢は、のちに事実となりました。ネブカデネザルの国のあとに、ペルシャの国がたち、そのあとで、ギリシア、そしてそのあとにローマ帝国がたちました。ローマ時代に、昔から約束されていた世界の救い主イエス・キリストが生まれました。キリストは、全世界にひろがってゆく神の国をたてはじめられました。

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