熊田なみ子のほほえみトーク 2014年11月25日(火)放送

熊田 なみ子(スタッフ)

熊田 なみ子(スタッフ)

小さな朗読会183「きびしい預言者エリヤ(2)天からの火」
(「母と子の聖書旧約下80章)

 どちらの祈りがかなえられるでしょうか。異教の祭司たちは連れて来られた牛を取りました。みなが非常な興奮に包まれて見守っているうちに牛は整えられました。それから、バアルの祭司は、祭壇のまわりを飛んだり跳ねたり、また血が出るまで刃物で自分を切り付け「バアルよ、答えてください。」と叫び、わめき、熱狂的に振る舞いました。しかし、火による返答はありませんでした。午前中ずっと祭司たちが何の答えも得られないで、バアルに叫び続けたので、エリヤは彼らを嘲りました。「もっと大声をあげて呼びなさい。彼は神なのだから。彼は考えにふけっているのか、旅にでも出ているのか、それとも眠っていて起こされなければならないのか。大声をあげて叫びなさい。」

 血迷った祭司たちは叫び、わめきました。「バアルよ、答えてください」と。そして、槍で身に傷を付けながら、狂乱の態で走り回りました。一日中これを続けました。そして夕方には疲れ果ててしまいました。それでもバアルの返事はありません。夕方になると、待っていた民たちも、熱狂した祭司たちが、飛んだり自分の身を切ったりしているのを見飽きてしまいました。

 その時エリヤは、人々に「私に近寄りなさい」と命令しました。皆はできるだけ近づいてきました。エリヤは、壊されていた主の古い祭壇を見つけ、12個の大きな石で祭壇を作り直しました。エリヤは牛を切り裂いて薪の上に置きました。それから祭壇のまわりに小さい溝を掘りました。それは、ごまかしたり、ずるいことをしていないことを人々にわからせるためです。エリヤは、「四つのかめに水を満たし、それをいけにえとたきぎに注げ。」と言いました。カルメル山は海の近くだったので、水はすぐ運ばれて来ました。エリヤは、「それを二度せよ」と言い、人々はそれを二度しました。すると彼は、「三度それをせよ」と言ったので、みなは三度水をかけました。水は祭壇の上にあったものにしっかりしみこみ溝にも溢れました。用意がすっかりできるとエリヤは顔を天に向け、厳かに祈りました。

 イスラエルの王国がユダの王国から切り離され、イスラエルがその悪い王たちによって偶像礼拝に引き込まれてから60年以上たっていました。老人たちは、ソロモンが王だった時代や、イスラエルの全部族が神様を礼拝しにエルサレムに行った時のことを覚えていました。若い人たちの多くは、偶像バアルへの祈りはよく聞いているものの、生まれて初めてまことの神様への公の祈りを聞きました。エリヤが厳かに熱心に祈るのを聞いて、彼らは非常に強い感銘を受けました。

 エリヤは、「アブラハム、イサク、ヤコブの神、主よ。イスラエルではあなたが神であること、私があなたの僕であって、あなたの言葉に従ってこの全てのことを行ったことを今日知らせてください。主よ、私に答えてください。私に答えてください。主よ、この民にあなたが神であること、またあなたが彼らの心を翻されたのであることを知らせてください。」と祈りました。
 エリヤが祈った時、神様の火が突然、祭壇にくだり、牛と薪を焼き、まもなく祭壇全体が火に包まれました。あまり熱いので溝の水が蒸発してしまいました。祭壇の石も祭壇のまわりの地面も焼けました。驚いた人々は跪き、「主が神である。主が神である。」と叫びました。自分たちの神の力を見た時、彼らは偽りの異教の偶像や、異教の預言者たちのくだらない騒ぎにあいそをつかしてしまいました。そこでエリヤは、バアルの預言者をみんな捕えるように命令しました。彼は、預言者たちをキション川まで連れてきて、そこで彼らを殺しました。

 それからアハブに、「大雨の音がするから登って行って食い飲みしなさい」と言いました。エリヤはカルメル山に登り、地にひれ伏して祈りました。彼はしもべに「登って行って海のほうを見なさい。」と言いました。しもべは行って見まわしたうえ、エリヤのもとに戻ってきて「何もありません」と言いました。7回、エリヤはしもべに海の方を見るようにと言いつけました。7回目にしもべが戻ってきた時、彼は、「海から人の手ほどの小さな雲が起こっています」と言いました。エリヤは、「登って行って、アハブに『雨に留められないうちに車を整えて、早く帰れ』と言いなさい。」としもべに命じました。空は、雲と風で暗くなり、大雨が降り始めました。エリヤは服をはしょり、エズエルまでアハブの車の前を祈りの答えとして降ってきた大雨の中を走って行きました。

 エリヤが天から火を呼び下した時、イゼベルはいませんでした。エリヤがバアルとアシラの預言者を殺したことをアハブから聞いてイゼベルは猛然と怒りました。彼女はエリヤに使いを送って、彼を殺すと伝えさせました。エリヤは大急ぎで都を離れました。彼は南の国ユダに行きました。それでもまだ安心できないで、そこにしもべを残し、自分は一日の道のりを荒れ野に入りました。そこからはもう先には進めなくなってしまいました。疲れ果て、がっかりしていました。
 エリヤは、イスラエルの民が神に立ち返ると思っていましたが、イゼベルのような悪い女王がいたのでは、民が神に仕えることがほとんどできないことに気が付いたのです。かわそうなエリヤは、れだまの木の下に座りました。疲れ果てて、生きて行くのもいやになっていました。自分のしたことはみな無駄だったと彼は思いました。エリヤは神さまに死なせてくださいと頼みました。
 昼も夜も、食物も飲む物も取らないで歩いてきた疲れた預言者は、とうとう木の下で眠ってしまいました。しかし、神様はカルメル山で本当に勇敢だったご自分の疲れたしもべを、やさしく見守っていらっしゃいました。エリヤが寝ているとそこに天使が来て「起きて食べなさい」と言って彼に触りました。エリヤが眠りからさめると、熱い石の上で焼いたパンと、一びんの水がそばに置いてありました。

 彼は長い旅の後なので、飢えて、喉も乾いていました。落ち着いて十分に食事を取っているゆとりが逃げている間にはなかったのでした。食事をしてからエリヤは、また横になって眠りました。み使いはふたたび彼にさわって、「起きて食べなさい。道が遠くて耐えられないでしょうから」と言いました。エリヤはゆっくり寝たので、疲れもすっかり取れました。彼は起き上がって十分に食事をしました。その食事に力づけられて、預言者はそれから40日40夜、旅を続けました。

 彼はどんどん南に行き、イスラエルの民が放浪の40年間さまよった、あのいまわしい荒れ野を通りました。とうとう神様がモーセやイスラエルの民に十戒をお与えになったシナイ山の近くまで来ました。こうしてエリヤは、イゼベルの手から逃れました。彼は洞穴を見つけてそこに住みました。しばらくして神様は「エリヤよ、あなたはここで何をしているのか。」とたずねられました。エリヤは答えました。「私は万軍の神、主の為に非常に熱心に働きました。しかし、イスラエルの人々はあなたを捨て、あなたの祭壇を壊し、刀を持ってあなたの預言者たちを殺したのです。ただ私だけ残りましたが、彼らは私の命も取ろうとしています。

 「出て、山の上で主の前に立ちなさい。」という命令が来ました。そこでエリヤは山に登りました。ものすごい風が吹いて来ました。その強さの為に、山が大きく裂け、大きな岩が砕かれました。しかし、主は風の中におられませんでした。彼が静まると、今度は恐ろしい地震が起こりました。山全体が揺れ動きました。しかし、主は地震の中にもおられませんでした。地震の後には火が起こりましたが、主は火の中にもおられませんでした。エリヤは、すさまじい大嵐が山を吹きあらし、木を根こそぎにし、岩を砕くのを見、また、がっちりした山が揺れ動くような恐ろしい地震、山の木をなめつくしていく猛烈な山火事を見ました。そして、自分の神様の力と威力を知り、自分の神様のほうが悪いアハブやイゼベル、また世界中の悪人よりもはるかに強いことを認識しました。

 風と地震の後で、エリヤは静かな小さい声を聞きました。すぐにそれは神様がやさしく親切に話しかけてくださっていることに気づきました。神様は、「エリヤよ、あなたはここで何をしているのか」とたずねられました。エリヤは、最初の時のように今度もイスラエルが神の預言者を皆殺していることを話しました。努力したところで何の役にたつでしょうか、と。ところが、主は彼にイスラエルに戻れ、と命令されました。
 エリヤは、ダマスコの町に行ってスリヤの国を今、治めているベネハダデの代わりに新しい王に油を注がなければなりません。それからアハブの代わりにイスラエルを治める新しい王に油を注がなければなりません。最後に、彼は自分の死後、自分に代わって、今までの働きを続けてくれる新しい預言者を選ばなければなりませんでした。
 その後で神様はイスラエル中で、神様に忠実なのはエリヤだけだという考えが間違っていることを指摘されました。バアルを拝んでいない者はまだ7千人もいました。神様に忠実な者が7千人!エリヤは励まされました。また、アハブがまもなく王でなくなる―これも嬉しいことでした。それに預言者として困難な仕事ももうすぐ終わる―これも楽しいことでした。

 この時代に預言者であるということ、そして、まわりの人々がみな偶像を拝んでいるのに、一人神様に仕えるというのは難しいことでした。エリヤは大そう勇敢な人でした。悪い偶像礼拝に浸っている王の前に出て、まことの神様を伝え、そして、バアルの預言者を皆殺してしまうこともあえてしました。それでもこの邪悪な世の中にもう長く生きていないですむと知って彼は大そう喜んだのです。

 (エリヤよ、エリヤよ、怖がってはいけません。イゼベルがあなたを殺すといっても何もできないでしょう。彼女はとてもあなたを殺せません。たとえ、彼女が国中に刀を手にした兵を出してあなたを探させても、あなたは彼女には殺されません。全能の神様があなたを守っていらっしゃいます。神様の車があなたを迎えに来るのですよ。イゼベルは、何も出来ません。あなたは死なないと神様は定めておられます。昔のエノクのように、あなたは普通の人々のように死の門を通らないで天国へ行くのです。あなたの生涯は、苦労の生涯でしたが、まもなく神様の車がお迎えに来ますよ。)

 神様の命じられたようにエリヤはシナイ山の洞穴を出て、また長い旅路につきました。イスラエルの国にやっと着くと、エリシャという人が、12くびきの牛をひいて畑を耕しているのを見かけました。通りがかりに、エリヤは一言も言わないで自分の外套をエリシャの肩にかけました。エリシャにはその意味がわかりました。自分がエリヤの後で預言者となり、エリヤに従うために選ばれたという意味だったのです。
 彼はエリヤの後を追って走り、「私の父母に口づけさせてください。その後であなたに従いましょう。」と言いました。その時からエリシャはエリヤと一緒に住みました。彼は老いた預言者に仕え、その世話をしました。一緒に話したり祈ったりできる相手が出来てエリヤも楽しみでした。エリシャはどうすればまことの神様の預言者になれるかを教えてくれる素晴らしい先生に巡り合ったのです。

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