熊田なみ子のほほえみトーク 2014年1月28日(火)放送

熊田 なみ子(スタッフ)

熊田 なみ子(スタッフ)

小さな朗読会173「悪い息子の計画」
(「母と子の聖書旧約下」74章)

 みなさんは、ダビデが小石で巨人ゴリアテを殺した話を覚えていますか。ゴリアテの3人の息子はイスラエル国の西、ペリシテ人の国にまだ生きていました。この3人もその父親のような大男で、手の指も、足の指も、6本づつありました。そして、これもまた父親のように、イスラエル人と戦って殺されました。
 この戦いをのぞけば、ダビデ王は、長い間平和な時代を楽しみました。ソロモンはまだ幼い子供でしたが、他の息子たちはみな成人していました。ダビデの3人目の息子アブサロムは、大変美しい人でダビデは特に彼を愛しました。アブサロムほどハンサムな青年は、国中どこを探してもいませんでした。髪の毛がとても美しく、濃く、長く、肩にかかっていました。非常に濃い毛で、一年の終わりに切り取ると、切り取った分だけでも3キロも目方があるほどでした。
 当然のこととして、人々は王の息子について話しました。アブサロムは、みんなの注目を受けるのが好きでした。彼は結婚し、自分の家に住んでいました。彼は派手な生活が好きでした。どこかに行く時には、アブサロムは立派な車に乗り、50人の人を自分の先に走らせました。エルサレムの町をこの行列が通るのを見て、人々は驚異の目を持って立ち止まり、「王の息子が来る、何と立派なのでしょう。」と言うのでした。アブサロムの内面が外面ほど立派でないことを人々は知らなかったのです。

 アブサロムはイスラエルの民に好かれようと努力しました。彼は町の門に立ちました。そしてもし地方の人が隣人との争いを仲立ちしてもらうためにエルサレムにやってくると、アブサロムはその人に呼び掛け問題を聞いてやりました。その人は、王の息子に自分の問題を聞いてもらえるので喜びます。アブサロムはその人と非常に親しくし、お辞儀をさせないで、その人に腕をかけて接吻するのでした。このこと自体は良いことです。親切に世話をするのは良いことです。ところがアブサロムは、本当に民と親しんでこうしたのではありません。いつか自分が王になりたいためにやったのです。たとえ父に跡継ぎとして自分が選ばれなくても、民の愛を獲得しておけば民が自分を王にしてくれると考えたのです。そして、アブサロムは自分と話した人に「あなたの要求は正しいが、王はあなたに耳をかしている暇がありません。私がこの地の裁判官なら、私はすべての人に公平な裁きを行うことができるのだが。」と言うのです。すると、その人は、「王の息子のアブサロムは何と良い人でしょう。さぞいい王になるでしょう。」と思いながら去っていきます。アブサロムは、長く長くずっとこれを続けました。裁きを受けるためにエルサレムにやってくる地方の人を大勢知るようになりました。彼らは皆、アブサロムのことを良く思って帰っていくのでした。こうしてアブサロムは、イスラエルの人々の心を盗みました。

 この間、ダビデ王は平和と安楽のうちに治めていました。彼は長年、幸せな政治をしました。敵を征服し、王国を北に南に東に拡張したのです。これらの征服された国々の人民は、彼の僕でした。ダビデは、どこでも尊ばれ恐れられていました。何より大事なことは、ダビデが神様を本当に礼拝していたということです。彼の治世の時にイスラエルの民は、自分たちの偶像をみな捨て去り、神様に仕えました。ダビデは神様を称えるために大勢の歌う人からなる聖歌隊を作りました。彼は、エルサレムを強い立派な町につくりあげ、へブル人の誇りとしました。ダビデの治世に国は富み、幸福でした。民はみな自分たちの良い王を愛していました。

 ところが、この平和は続きませんでした。ダビデが年を取ってくると、息子のアブサロムが問題を起こしたからです。ソロモンが生まれて以来、ダビデは彼を王にするつもりでいました。幼い子供の時からソロモンは、賢い、美しい性格の持ち主でした。主はソロモンを愛されました。どの息子よりも一番父親ダビデに似ていたからです。アブサロムは、ダビデが、死後、ソロモンに王位を譲ろうとしていたことを知っていたのかも知れません。もしそうだとしてもアブサロムはそれにおとなしく従うつもりはありませんでした。彼は、自分が王になるのだと決心していました。アブサロムは、大変汚い、人を騙す性格の持ち主であったため、父親が死ぬのも待てずに問題を起こしてしまいました。

 ある日、アブサロムは、誓いを果たすためにヘブロンの町に行ってよいか父に尋ねました。アブサロムは何年も前から王国を自分のものにしようと考えてきました。計画は全て前もって立ててありました。彼は王国中に密使を出し、ラッパの音が響いたら「アブサロムがヘブロンで王になった。」と民に向かって叫ぶように言いつけてあったのです。アブサロムは、エルサレムを出るとき200人の人を連れて行きました。彼はまたダビデの議官アヒトベルを呼び寄せ、その知恵を借りました。そのころはあちこちにすぐ様子を伝える電話や電報はありません。アブサロムのしていることがダビデの耳に入るのには2、3日かかるでしょう。これは、アブサロムにとって大群を集めるには十分なゆとりです。アブサロムは、長年親しさを装ってイスラエルの人々の心を自分に引き受けていました。そこで、人々が「アブサロムがヘブロンで王となった」と聞いたとき、大勢の者が彼のもとに馳せ参じてきました。

 ダビデにまだ忠実な者が、「イスラエルの民がみな息子についてしまった」という知らせを持ってエルサレムに走ってきました。静かに家に座っていたダビデにとってこの知らせは大変なショックでした。彼はアブサロムを愛していました。しかし、自分の息子が危険人物であることも知っていました。アブサロムはある時怒って一番上の兄、アンノンを殺したことがあるのです。しかし、アブサロムが自分の父親を敵にまわすとはダビデは夢にも考えませんでした。
 ダビデは戦いの用意ができていません。息子の軍勢がどれほど強いかもわかりません。そこでダビデは、僕たちに「急いで逃げよう。アブサロムは大軍勢をひきいて町を撃ち、民を皆殺しにするかもしれない。」と言いました。こうしてダビデ王とその家の者は、急いでエルサレムを出ました。彼は一人ではありませんでした。サウルから身を守っていた時、ダビデと一緒にいた600人の勇敢な人々が今度もダビデの供をしたのです。レビ人もまた神の箱を担いで従いました。ダビデは妻子のザドクとアビヤタルに「私についてこないで、神の箱を携えて町に戻るがよい。もし私が主の前に恵みを受けるならば、主はいつか私を連れ帰られます。「あなたがたは、あなたがたの息子、アヒマーズと、ヨナタンとともに、町にとどまるがよい。あなたがたは祭司であり、アブサロムはあなたがたを害さないでしょう。ことの次第を探り、あなたがたの息子たちを通して私に知らせてください。」と申しました。
 ダビデと一緒の者たちはみなキデロン川を渡りオリブ山に登りました。ダビデはあんなに愛していた息子が自分を裏切ったことを考え非常に悲しみました。心も張り裂けそうでした。また、自分がウリヤを殺したため、神様がこのような事態を許しておられることを悟って、大そうへりくだりを覚えました。裸足で頭を覆い泣きながらオリブ山を登りました。共にいる者もみな、頭を覆いダビデと一緒に泣きました。誰かがダビデに「あなたの議官アヒトペルもアブサロムのもとに行きました。」と告げました。これはダビデにとって大打撃でした。彼は主に「主よ、どうぞアヒトペルのはかりごとをくだらないものとしてください。」と祈りました。

 ダビデがオリブの山頂に来ると、彼のもう一人の議官ホシャイがやって来ました。その上着は破れ頭に土を被っていました。ダビデは、ホシャイが自分に忠実なのを見て喜びました。そして、彼に言いました。「あなたはアブサロムのもとに帰って、『王よ、私はあなたの僕となります。私がこれまであなたの父の僕であったように、私は今あなたの僕となります。』と言うならば、あなたはアブサロムを騙してアヒトペルの計略を破ることができるであろう。祭司たちはエルサレムにおり、その息子たちも一緒にいる。あなたは聞いたことをことごとく彼らの手によって私に知らせなさい。」と。こうしてホシャイはエルサレムに戻りました。

 ダビデたちがオリブ山を過ぎると、メピボセテの家の僕のかしらジバに会いました。彼はパン、干しぶどう、果物、ぶどう酒の一杯入っている革袋を積んだ数頭のロバを引いていました。王はジバに「これは何か。」と尋ねました。ジバは「ロバは王の家族が乗るため、パンと果物は若者たちが食べるため、ぶどう酒は弱った者が飲むためです。」と答えました。「あなたの主人メピボセテは?」とダビデは尋ねました。ジバはひどい嘘をつきました。「エルサレムに留まっています。彼は『イスラエルの家は、今日私の父の国を私に返すであろう。』と思ったのです。と言いました。ダビデは、「もしそうならば、私は先にメピボセテに与えたサウルの国を、ことごとくあなたにあげよう。」と言いました。ずるいジバは、王にお礼を言いました。

 ダビデたちがもう少し進むとサウル王の一族の一人が出てきました。このシメイという人は、ダビデに石を投げ呪いながら「よこしまな人よ、残酷な人よ、あなたは、サウルの王位を奪ったので今罰を受けている。あなたは、血を流す人だから主は王国をあなたの子に渡された。」と言いました。ダビデの将軍の一人アビシャイは怒って「この死んだ犬がどうして我が主、王を呪ってよかろうか。私に、行って彼の首を取らせてください。」と言いました。ダビデは自分の息子が反逆しているのを悲しみ、「呪わせておきなさい。主が彼に『ダビデを呪え。』と言われた。我が子でさえ私の命を求めているのなら、この人はなおさらだろう。」と言いました。こうしてダビデ王は、自分の愛する子から逃げて行きました。

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