秋も深まってきました。私の口に「静かな静かな 里の秋…」という懐かしい童謡のメロディが浮かびます。灯火親しむ秋、リスナー千葉にお住まいのMさん、大阪にお住まいのKさんたちから本の紹介のリクエストをいただきました。時々番組で私の本棚にあります○○です…と本についてもおしゃべりしてますが、趣味は読書です、というリスナーの皆様もきっと大勢いらっしゃることでしょうから私も教えてほしいですね。双方向で分かち合えたら素敵です。
今日の番組タイトルが「極上の時間」となってますがいったいどんな時間? 十人十色といいますから、いろいろな「極上の時間」があることでしょうね。あなたの極上はなんですか?
私の本棚にあるみすず書房の本「本という不思議」(長田弘著)の中にこの「極上の時間」という言葉を発見しました。「何のために人は、本を読むのか?極上の時間をみずから手にするために。そう言い切るのは、アントニオ・ホセ・ボリバールという名の老人です。」という言葉で始まるのですが、この老人に言わせれば「愛の小説をゆっくりと読んでいく」ことのできる時間。そして、そのような時間を可能にするのが平和というものだとこの老人は思い定めているとのこと。よい読書はなにより「極上の時間」をもたらすのだということなのですが。
私たち人間は、「考えること」や「愛すること」を大切にして言葉の活動をしています。このようなことを他の動物とは違う人間特有のものとして「魂」と表現する人もいますね。「人間は考える葦である」という有名なパスカルの言葉も思い出します。世界にもし本がなかったら、言葉がなかったらなんと空しいことでしょう。まるで世界中が黒やグレーになり、鮮やかな色彩が全く消えてしまったかのように寂しく思えますね。
この「本の不思議」の中に出てくるアパラチア・ストーリー、アリーおばさんのお話、とっても面白いのです。北米のアパラチア山地、山深い地方で生きるアリーおばさん。過疎の地です。おばさんは一人で一軒家に暮らし92歳の生涯を終えるのです。著者は「ひとが後に残すものは、結局その人の生きすじをありのままに示す、一本の線のような人生です。人生とよばれるものは、ひとがその生涯に引く、人生という一本の線です。」と語ります。このおばさんは言います。「ユリシーズ(夫)と私はこのテーブルについて、椅子に座って、…何時間も何時間もお互いに話して過ごしました。そのためにいつもテーブルをきちんと整えるのが私は好きでした。話すことがあって話す人がいる、それが私の望んだいい生活です。夫がなくなってからは周りのいろいろなものが自分の話し相手。林檎もブラックベリーもとうもろこしも。ちゃんと耳を澄まさなければ…」
このおばさんが大事に使っているのは三つの言葉。「ハード・ワーク(大変な仕事」「グッド・ライフ(いい生活)」リヴィング・バイ・マイセルフ(自分自身で生きること)」。アーリーおばさんの生き方いかがでしょう?素敵ですね!
本を読みながら考えたり、愛したり愛されたりする人間。豊かな言葉のやりとりをしながら、共に生きる仲間たちがいる時、私たちは生きる気力を回復させていただくような思いになります。
それでは私はどんな生活なのかと言いますと、毎週日曜日の礼拝の中で、本の中の本、「聖書」からいのちの水をいただき、集まる神様の家族の愛の中で過ごし、毎日聖書を読みます。これが私にとっての「極上の時間」なのです。 くまだなみこ