熊田なみ子のほほえみトーク 2010年12月28日(火)放送

熊田 なみ子(スタッフ)

熊田 なみ子(スタッフ)

小さな朗読会136「エジプト軍の末路」
(「母と子の聖書旧約上」出エジプト13-15章)

 イスラエルの民は、荒野でどうやって道順がわかるのでしょう。
 神様が道を示すために先に行かれました。雲の柱として先に行かれたのです。夜になるとこの雲の柱は火のように赤々と見えました。この柱は昼も夜も、道を案内するために先立ちました。神様が民に進むことを促される時は、雲の柱が先に動きましたし、止まらせようとされる時には雲の柱は停止しました。
 神様はモーセに民を紅海まで進ませ、そこで止まって天幕を張らせるように言われました。

 イスラエルの民が、エジプトを出て数日たつと、パロは民を出て行かせたことを後悔し始めました。イスラエル人がいなければ、誰が働いてくれるでしょう。奴隷がいなければ、誰がパロの倉庫の町を建ててくれるでしょう。
 そこでパロは、自分の戦車を用意させ、エジプト中の戦車とそれをひく馬を整えさせました。どの戦車にも指揮官と矢を射るものが乗っています。こうしてパロとその軍勢は、イスラエルの民を追いました。

 イスラエルの民は、神様の命令どおり、紅海の岸に天幕を張っていました。まだ遠くへは行っていません。ほとんどの者が歩いて旅をし、早く歩けない小さい子供が大勢いたからです。また、羊や牛もたくさんいて、途中で草を食べさせてやらなければなりません。そこで、パロとその戦車隊は、まもなくイスラエル人の見える所まで来ました。

 イスラエルの民が振り向くとエジプト人たちのやって来るのが見えました。彼らは恐怖におののき、主に助けを呼び求めました。また、民はモーセに向かって、「なぜわたしたちをエジプトから導き出してこんなにするのですか。私たちをほおっておいてくださいと言ったではありませんか。荒野で死ぬよりもエジプト人に仕えるほうが私たちに良かったのです。」と不平を言いました。
 モーセは、民が恐怖のあまりよく考えないでものを言っていることを知っていました。モーセは、民を落ち着かせようとし、「あなたがたは恐れてはならない。主があなたがたを守ってくださる。堅く立って、主があなたがたのためにされる救いを見なさい。主があなたがたのために戦われるからあなたがたは黙していなさい。これでエジプト人を見るのは最後です。」と言いました。

 主はモーセに天幕を片付け、行進を続けるように民に言いなさい、と命令されました。イスラエル人は大急ぎで荷物を整え始めました。前には深い海があります。一体、どこに行進すればよいのでしょう。
 後を見ると、エジプト人がだんだん近づいて来ます。恐ろしさに彼らはおののきました。

 しかし、神様はその力をお示しになりました。
 彼らの前に立っていた雲の柱には、彼らの目には見えませんが天使がいたのです。神様は天使に場所を変えて、イスラエル人の前から後ろに来るようにと言われました。そこで天使は、雲の柱をイスラエル人とエジプト人の間に移しました。雲はあつくてエジプト人にはイスラエル人が全然見えなくなりました。ところがイスラエル人の側では、雲は明るく光り一晩中イスラエル人を照らし、用意を楽にさせました。

 モーセは紅海の上に手を差し伸べ、主はまた一晩中強い東風を吹かせられました。風があまりに強いため、海の水が退き通路をあけて両側に壁のようになり、そこだけ海の底は乾いてしまいました。そこでモーセは、前進するように命じました。暗い夜でしたが、後ろにある雲の柱が明るく光るので、イスラエルの民は少しも困りません。水の壁の間をイスラエル人は向こう岸に着くまで歩いていきました。

 エジプト人も、イスラエルの民を追って、戦車でこの海の通路を通ろうとしました。イスラエル人が無事に通れるなら、自分たちも大丈夫と思ったのです。それに底が乾いているのがわかります。

 朝早く主は火と雲の柱を通してエジプト人の軍勢をごらんになり、エジプト人を困らせられました。戦車の車がやわらかい砂に沈むので、ゆっくりしか動けなくなりました。イスラエル人にはとうてい追いつけません。
 彼らは、「イスラエル人を離れて逃げよう。主が彼らのためにエジプト人と戦う」と言いました。しかし、もう海の真ん中まで来ていました。イスラエル人は、向こう岸に無事着いていました。

 もう朝なので、水の壁の間でエジプト人があえいでいるのがわかります。
 主はモーセに、「あなたの手を海の上に差し伸べ、水を流れ返らせなさい。」と言いました。モーセが手を差し伸べると、水が戻り始めました。海の底がぬれてくるのにエジプト人たちは気づきました。「大変だ。海が戻ってくる。われわれはみな溺れてしまう。」と彼らは叫びました。彼らは急いで戦車を戻そうとし、叫びわめきながら、馬をもっと早く走らせようと鞭を打ちました。しかし、無駄でした。水はどんどん深くなってきます。腰まできました。やがて、肩まできました。次には大きな波がエジプト人の頭からかぶさってきて彼らを覆ってしまいました。エジプト人が今までいた所には、波打つ海しかありません。

 間もなく、波間から溺れたエジプト人の死体があがってきました。イスラエル人は、砂浜に打ち上げられる死んだ敵の姿を見つめました。エジプト人は何年もの間、イスラエル人を圧迫してきましたがもうそれもおしまいです。

 イスラエル人は、改めてエジプトからこのような素晴らしい奇跡をもって連れ出してくださった自分たちの神の偉大さに気づきました。彼らはお互いに「われわれは自由になった。二度とエジプト人には悩まされない。」と言って喜びました。
 そこで、モーセとイスラエルの民は、エジプト人からの救いをたたえながら、主に美しい歌を歌いました。モーセの姉のミリアムは、タンバリンを取って踊りながら歌い始めました。他の女たちも同じことをしました。みなタンバリンを振り歌いました。
「主に向かって私は歌おう、彼は輝かしくも、勝ちを得られた、彼は馬と乗り手を海に投げ込まれた。」

 キャスリン・ヴォス作・有賀英子訳「母と子の聖書旧約上」より、小峯書店発行絶版  くまだなみこ

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