この季節「塩狩峠」を思い出します。愛読書のベストセラーにも入る本。映画にもなりました。「氷点」の三浦綾子さんの作品です。
生きてる時間の中で、先日この本を思い出させてくれる出来事に直面したのです。
ある集まりに出かけ乗ったことのない路線に乗り、あれこれ見ながら乗り変え、もうすぐ到着という手前の駅であぶなく事故が起こりそうになりました。車両のドアが乗客の足を挟んでしまったのです。その男性は、なんとか自力で足をドアからひっぱり抜こうとしているのですが出来ません。気がついてホームを見ると、女性が大きく手を振って異常を運転手に知らせています。ところが通じない様子でそのままになってしまいドアが開かないのです。
その時、一人の女性がドアを手で開けようと立ち上がりました。もう一人の女性も。その時、私もこのままでは大変なことになると瞬間的に傍に行きドアに手をかけようとしたその時、ドアが少し開いたのです。足が車内にすっと抜けました。ほっとしたとたん今度は、助けた女性の手が閉まるドアに挟まりかけたのです。あっという間の出来事でした。すばやくドアから手を抜くことができたのですが、手は紫色にはれ上がってしまいました。
私はその女性と二人で座り、「何とか事故を防ぐことができて本当に良かったですね。有難うございます。」とお話しました。ところが助かった男性の口からは「有難う」の感謝の言葉が出て来ません。無言なのです。車内に大勢いた方たちも動きません(力持ちの男性もいたはずなのに)。言葉を交わすことのない、お互いに無関心の世界がそこに広がっていました。とても寂しくなりました。女性の腫れ上がった手を見ながら、すぐに立ち上がってくれたその勇気。いろいろなことを教えていただきました。
私たちの生きてる時間の中で直面する出来事。あなたもこんな経験ありませんか?瞬間的に自分がどう行動するか本当に考えさせられました。何のため今日を生きるのか?誰を愛するため生かされているのか?ところがなかなか愛することのできない私たちなのです。
「塩狩峠」を読むと、これは本当に事実なのだろうか?と思ってしまいますね。雪が降るこの季節。しんしんと降る雪が私たちの心を雪のように白く洗ってくださる神様の愛を思い出させてくれるようです(詩編51:9)。十字架で私たちの罪のため命を捨ててくださったイエス・キリスト。ここに現された神様の愛を感謝します。 くまだなみこ