しばらく前のことです。もう午後10時を回っていたでしょうか。電話の向こうから聞こえてきた声は、学生時代に出会った後輩でした。思わず「Sちゃん!本当に久しぶり!突然どうしたの?・・・」
私の中に丸顔の可愛い彼女の笑顔が浮かんできました。確か卒業して、すぐ結婚したと風の便りに聞いてはいたけれど、お互いに年賀状も、お便りの交換もなかったので本当に驚くばかり。どうして私を想い出してくれたのかと思いつつ、「話したい」という気持ちを聞きながらいろいろ昔話に。
その内、彼女は、つらい胸の内を語り始めました。「もうこの人を逃したら、誰も結婚してくれない」と思いつめ、家族の大反対を押し切って結婚し、その後、夫のつらい仕打ちに耐え切れず、ついに離婚。一人必死に生きてきたとのこと。「恥ずかしい人生でした。」と何度も言わずにおれないつらさの中で、とにかく私はひたすら聴きました。じっと耳をすまして。
離婚を招いてしまったこと、その心の葛藤は、当人同士しかわからないこともたくさんあります。今、過去をあれこれ悔いても戻ることは出来ません。これからどうするか、今からどうするか、と今日から出発しなければなりません。
その夜の一本の電話。それは、私に色々なことを語ってくれました。「私の名前を呼んでくれて嬉しい。本当に長い長い間、名前を呼んでもらえなかったの・・・」そうか、なにげなく呼び合うお互いの名前。私たちも大切に呼んでいるだろうか。あまりにひとりで頑張りすぎて、一生懸命みんなに尽くして、疲れ果て、その結果、回り隣人も信頼できなくなった苦しみも語ってくれました。教会からも離れてしまった、少し出かけてみてもしっくり解けこめない、そんな状況で想い出したのが、私だったというのです。神様がくださったこの夜の再会。
その後、新幹線で私の街まで会いにきてくれました。疲れてやつれた彼女のその姿は、とても痛々しかったけれど、お互いの名前を呼び合いながら、語り合う二人の時間は、なんと素晴らしい時間だったことでしょう。なみこ