おはようございます。山下正雄です。
試練の中にある人を励ます聖書の言葉ベスト10を挙げるとすれば、間違いなく次の言葉はその中に入るでしょう。
「あなたがたを襲った試練で、人間として耐えられないようなものはなかったはずです。神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えていてくださいます」(1コリント10:13)
わたしはこの言葉をクリスチャンでない人たちからも聞いたことがあります。もちろん、一字一句正確ではないにしても、ほぼ主旨は同じものでした。その言葉の出所は知られていなくても、それくらい多くの人たちを励ます言葉として語り継がれてきたのだと思います。
多くの人々にとってそんなにも大切な言葉に水を差すつもりはありません。しかし、もともとこの言葉が発せられたのは、聖書の神を信じるコリントの教会の人たちに対してでした。キリスト教を遍く宣教したパウロがコリントの教会へ宛てた手紙の中に出てくる言葉です。そういう意味で、この言葉は聖書の神を信じる人にとってこそ大きな慰めと励ましを与える言葉なのです。
実は、パウロはこの言葉を記す直前に、こんな警告の言葉を書いています。
「だから、立っていると思う者は、倒れないように気をつけるがよい」
これはうぬぼれた人たちの多かったコリントの教会の信徒にとって厳しい警告の言葉です。自分は立っていると思う者、自分は既に救われて完成したと自負している者、そう思う者たちに、最後の審判の日まで倒れることなく、しっかりと神の前で歩むようにと警告しているのです。なぜなら、この世の歩みは実に試練と誘惑に満ちているからです。立っていると思いあがっている者ほど危ういのです。
しかし、パウロはただ警告して恐れを抱かせているわけではありません。同時に励ましの言葉も与えているのです。それが、先ほどの言葉です。
神は人間に耐えられるだけの試練しかお与えになっていません。誰しも、自分の能力を超えた試練で苦しむことはないのです。だからこそ、試練に遭うとき、それに立ち向かう勇気が与えられるのです。
それに加えて、神はその試練からの逃れ道をも備えてくださっています。その逃れ道が具体的になんであれ、神を信じる者にとっては試練に打ちのめされて倒れてしまうということがないというのです。そうであればこそ、今まで数限りない人たちが、この言葉を信じて試練に耐えてきたのです。
しかし、パウロが書いた先ほどの言葉の中で一番力強い慰めはこの言葉…「神は真実な方です」という言葉にこそあるのです。
人間に耐えられるだけの試練しか与えないのも、また、試練を逃れる道を備えておられるのも、神が真実なお方であるからなのです。神は救おうと思う者たちを訓練し、試みられますが、それは救いの完成へと導くためなのです。神はその真実を曲げたりはなさいません。神は人をお救いになろうとする意志を、人間の弱さや不忠実さのために途中で変えることはなさらないのです。神が真実なお方であるからこそ、わたしたちは試練に耐えぬくことができるのです。