キリストへの時間 2005年5月1日放送    キリストへの時間宛のメールはこちらのフォームから送信ください

山村貴司(南与力町教会牧師)

山村貴司(南与力町教会牧師)

メッセージ: 「神様がご覧になられるところ」

 おはようございます。

 聖書のたとえ話に、金持ちと、貧しいラザロというお話があります。

 金持ちは、召し使い付きの豪邸に住み、毎日金銀の食器と、最上の食卓に囲まれていました。彼は周りの人々から、うらやましがられ、高い評価を受けていました。けれども彼は、神様の目からは評価されず、いみきらわれて、死後、裁きの国へ入れられた、といわれています。

 もう一方に貧しいできものだらけのラザロがいました。ラザロは貧乏で、先ほどの金持ちの家の前で物ごいをし、身体中にできた出来物を犬がなめるほどでした。彼の前を通りかかる人は皆、「ああこんな暮らしだけはしたくない」とささやいて行きました。ところが聖書をみると、人として神様から評価され、ほめたたえられたのは、何と、このラザロの方でした! そして天国に入れられたのはこのラザロだったというのです。神様というお方はこのラザロのどこを見たのでしょうか? このラザロの何を見たのでしょうか? 

 私が外国で暮らしていたときのことです。あるこごえそうな冬の夜、地下鉄の駅のベンチに座っていたとき、その横にたいへん貧しい身なりの方が座っていました。ピクリとも動かなかったので不思議に思い、肩をたたいて見ると、すでに寒さの中でなくなっていました。

 私は次の日曜日、教会である方にこの話をし、「かわいそうな人ですねぇ」・・・と言いました。するとその方は「かわいそうな人とはどういうことですか? あなたは外から見てその人のことがどれだけわかるというのですか? あなたは外から見てその人の何がわかるというのですか?」と、声をあらげたのです。そして続けて、「その人はそこへ来るまでとても仲の良い仲間や友だちに囲まれていたかもしれない。そこで楽しい団らんや、楽しい食卓があり、幸せだったかもしれない。そう、彼の心の中は幸せに満たされていたかもしれないじゃあないか。」と言いました。

 そうです。神様が一番大切なものとしてご覧になられるのは、人の心の中なのです。神様は、人が心の中に何をもっているのか? 心の中が豊かなのか? 貧しいのか? ということをご覧になられるのです。

 皆さんは貧乏なマッチ売りの少女の童話をご存知でしょう。この少女が持っていたものと、持っていなかったものがあります。持っていなかったのは物やお金です。彼女がもっていなかったものは、限りなく多かったのです。

 しかし、彼女が持っているものがありました。それは、お父さんのためにマッチを売るという、暖かい心です。お父さんのために働くという、いつくしみ深い心です。少女は暖かく、いつくしみ深い心をもって、最後の最後までマッチを売っていたのです。

 神様がご覧になられるのは、その心です。どうか私たちもまた、その内なる人に、暖かく、いつくしみ深い心を宿らせることができますように。

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