あさのことば 2021年11月30日(火)放送    あさのことば宛のメールはこちらのフォームから送信ください

小峯明(船橋高根教会牧師)

小峯明(船橋高根教会牧師)

メッセージ: 敵を愛するイエス様



 いかがお過ごしですか。船橋高根教会の牧師の小峯明です。
 幕末に徳川家の旗本の家に生まれた飯田栄次郎という方がいました。後に聖公会の宣教師から洗礼を受け、牧師となって、明治時代に今の千葉県成田市に教会を建てた方です。

 彼は武士としての教育を受け、幕府に仕えますが、時代は急展開していきます。武士の時代に幕府が雇い入れたフランス軍事顧問団から歩兵教練を学び、軍人として訓練を受けました。その間勝海舟の従兄弟から剣術を学び、恐らくその縁で後に勝海舟と親しくなります。

 時代は明治となり、旧幕臣であった栄次郎は勝の紹介で明治政府の軍人として働きます。しかし薩摩と長州藩出身の軍人たちとの軋轢に、嫌気がさして辞職しました。その後間もなく西郷隆盛が政府と対立し、西南戦争が起こります。その際政府は兵士を1万人募集しました。栄次郎は幕府を倒した西郷と薩摩に復讐すべく応募しますと、陸軍省は入営を許可しました。

 戦地に赴く日が近づいた時に、先に洗礼を受けてキリスト教徒になっていた兄から洗礼を勧められました。栄次郎は死を覚悟して西南の地に赴く思いでした。それを聞いた兄は、死ぬ前に聖書を読んで神を信じて洗礼を受けてから行けと助言し、「死後の備えをせよ。」と命じました。こうして兄と共に礼拝に集い、聖書に触れていくようになります。

 そして敵を愛しなさいと言われたイエス様の教えに触れ、西郷憎しと思って志願する自分と葛藤するようになります。さらに十字架上でのイエス様の人々に対する執り成しの言葉に心動かされました。こうして彼は西郷を憎む思いを捨てて、従軍をやめて洗礼を受け、牧師としての道を踏み出したのです。(参考:小松栄三郎著『小さき村なれど』勝どき書房)

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