あさのことば 2005年4月1日(金)放送     あさのことば宛のメールはこちらのフォームから送信ください

江尻美穂子(日本YWCA理事長)

江尻美穂子(日本YWCA理事長)

メッセージ: 平等に尊いいのち


 お変わりございませんか。江尻美穂子です。

 前回、人工妊娠中絶が戦後合法化されたと申しましたが、今日はその法律が、いのちはすべて平等に価値があり重要なものであるという考え方からいかに遠いものであったかということをお話しいたします。

 法律の名前は「優生保護法」といい、その第一条に「この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする」とあります。優生保護とは優良ないのちの保護という意味ですから、遺伝的に優良な遺伝子と不良な遺伝子があることを前提としています。法律では、様々な遺伝性疾患や遺伝性の奇形がある人は、不妊手術や、人工妊娠中絶をすることができるとしていますが、そうなるとそういう人びとが不良な子孫に該当するのかと考える人があっても不思議ではありません。知的能力や強い体力、また、芸術的な優れた才能を発揮できるような遺伝子を持つ人びとが優良なのでしょうか。

 また、障害を持つ子どもが産まれることを、不幸なことと考えて、かつて、「不幸な子どもの生まれない対策」運動を展開した地方自治体もあります。しかし、障害のある子どもを持ち、以前よりもはるかに幸せに生きているご両親もあれば、そうした両親の元で障害を持ちつつも非常に幸せな一生を送った子どもも身近に見ております。

 この法律は、国際人口開発会議で多くの非難を浴び、96年に優生的な条項をすべて削除し、名前も「母体保護法」と改正されたことは、一歩前進と思います。しかし、まだまだ能力重視の考えは根強く残っていることを忘れず、私たちは障害を持つ人たちの生きやすい社会を実現する努力をしなければなりません。人間が他の人間を不良とか不幸とか決めることはできないし、決してしてはならないことなのです。

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