2016年4月26日(火) 小さな朗読会200「ユダの捕囚」(「母と子の聖書旧約下」99章)
とうとう、ユダの民のこらしめのときがきました。
この間に、今一つの国が勢力を得ていました。それはバビロン(またはカルデヤ)の国です。バビロンの王ネブカデネザルは強い人で、エジプトとアッスリヤを征服したのでした。彼はまわりの国々とみな戦い、ユフラテ川からナイル川までの地を全部治めていました。
とうとうその強力な軍隊をひきつれて、彼はユダにやってきました。彼は、エホヤキムを捕えてくさりにつなぎました。ネブカデネザルは、征服した国々で王を捕虜にし、王とその民を遠いバビロンまで連行しました。
エレミヤの預言どおり、エホヤキムは死んで、死体は、昼の暑さと夜の霜にさらされました。誰もこの悪王のことをみてやり、葬ろうとはしませんでした。民は、次々に起こる出来事におびえ、気をとられていて、王のことなど、かまっておれなかったのです。
ネブカデネザルは、エホヤキムの息子エホヤキンをユダの王として立てました。彼はもっとも位の高いつかさたちを連行して、バビロンにある自分の宮殿でつかえさせました。
バビロン王は、何年も前にソロモン王が建てたすばらしい金の神殿を見ました。彼はそこにある純金の皿に心をひかれ、バビロンにある自分の偶像の宮に、その皿をたくさん運ばせました。
ネブカデネザルがエルサレムにきたのは、これが初めてでしたが、最後ではありませんでした。3カ月後にまたやってきました。今度は、若いエホヤキン王とその母親、その妻たちや家来を、みなバビロンに連れていってしまいました。またつかさや兵隊たち、それに物を作るのに巧みな人たちをみな連行しました。1万人の捕虜がバビロンに連れてゆかれたのです。
ネブカデネザルは、神殿と宮殿の宝物の残りももっていきました。もち運びにくい美しい金の大皿は、砕いてもっていきました。
エレミヤのおそろしい預言が、みな成就したのです。父や母、老人や赤ん坊は、みな自分たちの家から引き出されて、暑い砂漠の向こうの遠い遠いバビロンに連れていかれました。兵隊たちは、彼らを追いたてて残酷にあつかったので、途中で大勢が死にました。かわいそうな民は、泣きながら、1千キロあまりの道のりをたどっていきました。
ネブカデネザルは、ひどい貧乏人たちをエルサレムに残してゆきました。連れてゆく値打ちがなかったのです。彼はヨシヤの三男ゼデキヤを、これらエルサレムに残された人々の王にしました。そしてゼデキヤに、反逆しないということを神のまえで、約束させました。
しかし、ゼデキヤは罪深い人でした。神さまに頼りませんでした。また、彼も、その民もエレミヤに耳をかしませんでした。神さまのまえに、ただ、悪をし続けました。
ゼデキヤ王の位について9年後に、約束を守るようにエレミヤに警告されたにもかかわらずネブカデネザルに反逆しました。
そこで、ネブカデネザルは、またエルサレムにやってきました。彼は、エルサレムの城壁の外にとりでをつくり、それから、町を攻撃しました。怒ったつかさたちは、エレミヤがネブカデネザルの兵の友人だといって、彼を投獄しました。
2年間ネブカデネザルの軍はエルサレムを攻めたので、ついに食物がなくなり、民は飢えました。ゼデキヤ王はひそかにエレミヤを呼んで、「主から何か言葉があるか」とたずねました。自分をかこんでいる大軍を大そう心配していたのです。
エレミヤは、「神は、あなたがバビロン王の手にわたされるといっておられます」とこたえました。
エレミヤはふたたび牢屋に入れないように、王に頼みました。そこで王は、牢の中でなく、監視の庭におき、町にパンのあるかぎり彼に毎日パンを与えるようにはかりました。
エレミヤは、ネブカデネザルと戦わないように、民にいいました。降伏をすすめました。もし民が町にとどまれば、彼らは必ず剣か、飢えか、病気で死ぬが、もし降伏すれば、そのいのちは助けられる、と神さまはいわれたのです。
すると、ゼデキヤのつかさたちは怒りました。彼らは王に「エレミヤは殺されるべきである。彼は民を弱め、降伏するようにすすめて、勇気をくじいている」と王にいいました。
ゼデキヤ王は弱い王で「あなたがたのいいようにしなさい。わたしはあなたがたに逆らって何事もなしえない」といいました。
そこで、つかさたちはエレミヤを王の牢に入れました。これは、王の宮殿の地下にある深い穴でした。そこには水はありませんでしたが、そこはぬるぬるした泥です。エレミヤは泥の中に沈みました。
王の家に、親切な黒人が一人いました。かれは、エレミヤがどうなったかを聞き、王のもとにいって、「つかさたちは、エレミヤにひどいことをしました。彼らはエレミヤを穴に投げ入れました。彼はそこで死ぬでしょう」といいました。
ゼデキヤ王は、「三人の人を連れていって、穴から引きあげなさい」といいました。
黒人はいそいで三人を呼び集め、暗い牢にいきました。彼は古い布切れや、着ふるした衣服をもってゆき、エレミヤに投げおろして、「この布きれや着物を、あなたのわきの下にはさんで、綱に当てなさい」といいました。
こうして、エレミヤは穴から引きあげられました。王は彼を釈放しないで、監視の庭におきました。そこは、新鮮な空気も太陽もあります。神さまは彼を守ると約束されたのでした。
エレミヤが獄にはいっているあいだじゅう、籠城は続きました。バビロンの兵はまだ町をかこんでいました。エルサレムの食物はほとんどなくなり、人々は飢えていました。ゼデキヤは自尊心が高く、エレミヤの忠告に従って、バビロン王に降伏しようとしませんでした。
2年の包囲のあと、バビロン兵はついに戦争の機械でエルサレムの城壁をこわし、町になだれこみました。ゼデキヤ王とそのつかさたちは、城壁がくずれだしたのを見て、夜のうちに、ひそかに逃げました。
しかし、遅すぎました。バビロンの兵たちに見つかってしまいました。兵はゼデキヤとそのつかさたちのあとを追い、まもなくこれを捕えました。彼らは、王やつかさたちや子供たちをネブカデネザルのところに連れていきました。
勝利者の王は、たいへん残酷で、その子供たちやつかさたちを全部殺させました。この恐ろしい光景が、ゼデキヤが地上で見た最後の光景になりました。ネブカデネザルは、兵隊たちにゼデキヤの目をえぐり取らせたからです。目が見えなくなった王は、バビロンに連れてゆかれ、牢に入れられ、一生そこで過ごしました。
それから兵隊たちは町を滅ぼすためにエルサレムにもどってきました。彼らは持ち運びのできるものを全部とりだしたあとで、ユダヤ人の誇りであったソロモンの美しい金の神殿を焼き払いました。金のさじも皿も、燭台もみなもっていかれました。神殿のまえに立っていた立派な青銅の柱もいくつかに砕かれて、バビロンに持ち去られました。
兵隊たちは、エルサレムの立派な家々もみな焼き払い、町をかこんでいた城壁をこわしました。そして最後に、ネブカデネザル王は、もっとも貧しいものを残して、まだそこに残っていた人々をほとんどみな連れていきました。
ついに恐ろしい裁きがくだったのでした。かつてのすばらしい町は、廃墟になってしまいました。壁はこわされ、家々は焼かれ、金の神殿は灰の山になってしまいました。町は住む人もなく、さびれました。
兵隊たちは、エレミヤもほかの捕虜といっしょに連れてゆくため、くさりにつなぎましたが、王は、預言者を傷つけないで、釈放するように命じました。そして、預言者の希望によって、バビロンに捕虜たちといっしょにいってもよいし、残っているわずかな貧しい人々のところにとどまってもよいといいました。
エレミヤは、とどまることにしました。彼はエルサレムの陥落について、悲しい哀歌をうたいました。
「ああ、むかしは、民の満ちていたこの都…これは夜もすがらいたく泣き悲しみ、そのほおには涙が流れている。…
ユダは悩みのゆえに、
また激しい苦役のゆえに、のがれていって、もろもろの国民のうちに住んでいるが、安息を得ず…」
また、バビロンに捕われた人たちも、悲しみのうちに歌いました。
「われらはバビロンの川のほとりにすわり、
シオンを思いだして涙を流した
われらは外国にあって、
どうして主の歌をうたえようか」
ユダが捕えられているあいだ、エレミヤは預言を続けました。彼は捕えられているイスラエル人に落胆しないよう、呼びかけました。十部族のように、彼らは永遠に捨てられるのではありません。70年過ぎれば、神さまは、彼らを自分たちの国にお戻しになるのです。
民は、神さまを忘れ、神さまは彼らを罰しなければなりませんでしたが、神さまは彼らをなおも愛していらっしゃいました。神さまは「彼らはわたしの民となり、わたしは彼らの神となる」といわれました。神さは永遠の愛をもって彼らを愛し、「わたしはわたしの怒りをもって、彼らを追いやったもろもろの国から彼らを集める」と約束しておられました。
バビロンにいる捕りょたちは、70年すれば、神さまが自分たちの子供を、もとの国に連れもどしてくださることを知って、慰められました。
エレミヤは、もっと慰めゆたかなメッセージをも伝えました。彼は、全世界に祝福をもたらすキリストの来臨について預言し始めました。
エレミヤはまた、その残酷さと悪のための罰としてくだるバビロンの衰退についても、預言しました。バビロンに対するこれらの預言は一つの書物にまとめられ、捕虜となったつかさのひとりにわたされました。彼はバビロンにつくと、そこのユダヤ人たちに、これを読まなければなりませんでした。それから、書物に石を結びつけて、「このようにバビロンは沈み、ふたたびおき上がることはない」といって、これをユフラテ川に投げ入れなければなりませんでした。
バビロンにかんするこれらの預言は成就し、その町は完全に滅ぼされました。今日では、かつてどこにあったのかわからないほどです。その立派な宮殿は、ただよう砂におおわれた廃墟にすぎません。豪華をほこった宮庭には、野獣がほえたけっています。バビロンはまったく荒れすたれました。