2015年4月28日(火) 小さな朗読会188「やさしい預言者エリシャ」(「母と子の聖書旧約下」85章)
エリヤのように、エリシャも神様の預言者でしたが、エリヤとは大分違っており働きも違いました。彼にはエリヤの厳しさはなく、また、王たちをとがめるために遣わされることもありませんでした。
ユダとイスラエルの歴史を少し復習してみましょう。皆さんも覚えているように、イスラエルのアハジヤ王は窓から落ち、治るかどうか偶像の神に伺いをたてました。神様はこれを怒り、二年間しか王になることを許されませんでした。アハジヤには、後継者になる息子がいなかったので、その兄弟のヨラムがイスラエルの王になりました。ヨラムはいい人ではありませんでしたが、父アハブや兄弟アハジヤほど悪い人でもありませんでした。
ヨラムがイスラエルの王となった時、善良なヨシャパテは、年はとっていましたが、まだユダを治めていました。次の王になった息子のヨラムは、神様を畏れる人ではありませんでした。彼はアハブの娘と結婚したので、アハブのように偶像を礼拝しました。神様は病気と戦争で彼を罰せられました。これらの王の時代に、エリシャは生きていました。彼は民の間に住んで彼らを教え助けました。
ある日、一人の婦人が助けを求めに来ました。その夫は、預言者の一人だったのですが死んでしまい、婦人は食べるものがないほど貧しくなりました。この未亡人は、払いきれないほどの借金をしていました。ある日、彼女がお金を借りている人が家にやってきて、二人の息子を奴隷にするため連れに来ました。借金を払うお金がないと子供が奴隷として売られるのが当時の習慣だったのです。かわいそうな婦人は、どうしたらよいかわかりませんでした。困ったあげくエリシャの所にきました。預言者は、「あなたの家にどんなものがあるか。」と尋ねました。「一びんの油のほかは何もありません。」と彼女は答えました。エリシャは、「隣の人々からあいた器をできるだけ借りなさい。そして家に入って戸の内に閉じこもり、その全ての器に油を注ぎなさい。」とエリシャは言いました。
婦人は、器を借りるために二人の息子を近所の人たちの所にやりました。それから戸を閉め、息子が器を持って帰ると、片端からそれにオリブ油をついで行きました。神様は彼女の油を増やされたので、借りてきた器全部を満たすほどありました。全部の器に入れ終わると、彼女のびんの中の油も増えるのが止まりました。そこで彼女は、エリシャの所に来ました。エリシャは婦人に、借金を払うため油を売るように言いました。そして借金を払った後で、残ったお金は彼女と息子たちの生活費に充てて良いといいました。こうしてエリシャは一人の貧しい婦人を助けました。
エリシャが良く訪ねるシュネムという町に、一人の裕福な婦人がいました。預言者がシュネムに来るたびに、この婦人は彼を食事に呼びました。彼女は預言者をよく知るようになりました。ある日、彼女は夫に「いつも私たちの所を通るあの人は、確かに神の聖なる人です。私たちは屋上に壁のある一つの小さい部屋を造り、そこに寝台と机と椅子と燭台とをを彼のために備えましょう。そうすれば彼が私たちの所に来る時、そこに入ることが出来ます。」と言いました。
エリシャはこの婦人の親切を大そう喜びました。ある日、彼女の家にいる時、エリシャは自分の召使いゲハジに「この婦人を呼んできなさい。」と言いつけました。婦人が入って来るとエリシャは「あなたはこんなに親切に私たちのために心を用いられたが、あなたのためには何をしたら良いのでしょうか。王または軍勢の長にあなたのことをよろしく頼むことをお望みですか。」と言いました。彼女は「ありがとうございます。が、何もいりません。」と答えました。彼女が行ってしまうとエリシャはしもべのゲハジに「彼女のために何をしようか。」と尋ねました。ゲハジは、神様の力によりエリシャには素晴らしいことが出来ることを知っていました。そこでエリシャに「彼女には子供がなく、その夫は老いています。」と言いました。エリシャは婦人を呼びもどし「来年あなたには男の子が生まれます。」と言いました。婦人はどんなに喜んだことでしょう。世界の何よりも彼女は赤ん坊がほしかったのですが、まだ生んだことがありませんでした。エリシャの言葉がなかなか信じられないほどでした。その年中、彼女はエリシャが生まれるといった赤ん坊のための準備に励みました。小さい産衣を縫いながらどんなに幸福だったことでしょう。
翌年、赤ん坊は生まれました。何と可愛いことでしょう。どんなに喜んで彼女は赤ん坊を抱いて寝かせたことでしょう。まもなく彼はしっかりした子供に育ちました。五つか六つの時、彼はある日麦の刈り入れを見に父の畑に行きました。暑い夏の日でした。太陽は麦畑に照りつけていました。子供は日射病になって「頭が、頭が」と言いました。その父は一人のしもべに「彼を母のもとへ背負って行きなさい。」と言いつけました。子供は家に連れ帰られました。母は出来るだけのことをし、膝に抱いて頭を冷たい水で冷やしてやりましたが、だんだんひどくなって昼ごろとうとう死んでしまいました。
母は彼をエリシャの部屋に連れて行き寝台に寝かせました。それから夫の所に行って「どうぞしもべ一人と、ろば一頭を私に貸してください。急いでエリシャの所に行きたいのです。」と言いました。しもべがろばを連れてきたので、それを鞍に置き「早くかけさせなさい。」と彼女は言いました。
神の人は、遠くから彼女がやって来るのを見ました。彼はゲハジに彼女を出迎え、彼女とその夫と子供がが元気かどうか尋ねるように言いました。エリシャのしもべは走って婦人を迎えました。彼女はゲハジに困ったことを打ち明けたくたくなかったので「無事です。」と答えて先を急ぎました。丘の上にあるエリシャの家に着き、友人となった親切な預言者を見ると彼女はひれ伏し、わっと泣き出しました。ゲハジは彼女を押しのけようとしましたが、エリシャは「かまわずにおきなさい。彼女は心に苦しみがあるのだから」と言いました。涙の中から彼女は「私があなたに子を求めましたか」と尋ねました。エリシャはゲハジに「急いで彼女の家に走りなさい。誰に会っても挨拶をしてはならない。そして、私の杖を子供の顔の上に置きなさい。」と命令しました。ゲハジは長い着物が走る時のじゃまにならないように、小尾にひきからげました。エリシャも婦人を連れて後から行きました。
ゲハジは、エリシャの杖を子供の顔にのせましたが効果がありません。そこでエリシャの所まで走り戻って「子供はまだ目をさましません。」と言いました。エリシャは婦人の家に着くと、子供が寝台に寝かされている自分の部屋に行きました。そして子供の上に伏し、自分の口を子供の口の上に、自分の目を子供の目の上に、自分の両手を子供の両手の上にあてました。
すると、死んだ子供の身体は温もってきました。それからエリシャは起き上がって、少しあたりを歩き回り、もう一度子供の上に伏しました。子供は7回くしゃみをして目を開きました。エリシャはしもべを呼び、婦人を連れて来るように言いました。子供は健康な色を頬に浮かべ、寝台に横たわっていました。彼が目を上げ、手を差し伸べると母は喜びに溢れました。彼女は、はじめにエリシャの足元に伏して感謝し、それから子供を抱き上げて部屋に連れて行きました。