2013年8月27日(火)小さな朗読会168「ダビデとヨナタン」(「母と子の聖書旧約下」69章)

 ダビデは、いつまでも王に隠れているわけにはいかないのを知っていました。彼は密かに友人ヨナタンに会いに行きました。「私があなたの父の前でどんな罪を犯したので私を殺そうとされるのでしょう」とダビデはヨナタンに尋ねました。ヨナタンは、「決して殺されることはありません。父はなんでも私に告げないですることはありません。どうして父が私にそのことを隠しましょう」と言いました。「あなたの父は、あなたが私を愛していることをよく知っておられます。『ヨナタンが悲しむことのないようにこれを知らせないでおこう』と思っておられるのです。私と死との間はただ一歩です」とダビデは言いました。

 「あなたの言うことはなんでもします」とヨナタンは申しました。ダビデはヨナタンに言いました。「明日は一日ですから私は王と一緒に食事をしなければなりません。しかし、私は行きません。もしあなたの父上が私のことを尋ねられるならば、『ダビデはふるさとの町ベツレヘムへ急いで行くことを許してくださいと、しきりに私に求めました。そこで全家の年祭があるからです』。もし彼が『良し』と言われるなら、僕は安全ですが怒られるなら私に害を加える決心でおられるのを知ってください」と。

 ヨナタンは、「父があなたに害を加える決心をしていることがわかれば、私は必ずそれをあなたに知らせます」と答えました。「あなたはそれをどうやって知らせてくださるのでしょうか」とダビデは言いました。ヨナタンは、「さあ、もっと自由に話せる野原に出て行こう」と言いました。

 野原で二人きりになるとヨナタンは、「私は明日父の心を探ってあなたに告げましょう。神様があなたを守り、あなたの敵をみな罰せられることを知っています。主は主に心から仕える者を必ず守られます」と言いました。神様が何時かはダビデを王にされることを知っていながら、ヨナタンはダビデを大そう愛していたため少しも彼を妬みませんでした。

 ヨナタンは、父を継いで王となるべき皇太子でしたが、神様がサウルの家系から王位をダビデに渡されることを知っていました。ヨナタンはただその時が来たらダビデがヨナタンの子ども達に親切にしてくれることを望みました。

 「三日間この野原に隠れていなさい。明日、父があなたに対してどうしようと考えているかを探りましょう。私は射的の練習をする振りをして弓矢を持ち少年を連れて行きましょう。私が少年に矢が手前にあるというならば、それは全てが安全で何の危険もないことを意味します。しかし、私がその少年に、矢は向こうにあるというならば、父があなたに害を加えようとしていることを意味します」とヨナタンは言いました。

 翌日は新月でした。いつもはこの日にダビデは王の食卓に座ることになっていました。ところがこの時は来ませんでした。最初の日にサウル王は何も言いませんでした。
 次の日、王は、「ダビデはどこか。昨日も今日もどうして食事に来ないのか」と尋ねました。ヨナタンは、「ダビデは家に帰ることを許してくださいと、しきりに私に求めました。一族が毎年この時期に祭りをするためです」と答えました。
 サウル王は怒りだしました。食卓にいる皆の前で「愚か者、このダビデと友になっていることが損だとわからないのか。ダビデが生きている間は、お前が王になれないことを知らないのか。彼を連れてきなさい。彼は必ず死ななければならない」と言いました。ヨナタンは、「どうして彼は殺されなければならないのですか。彼はなにをしたのですか」と反対しました。
 サウルは激怒のあまり、自分で何をしているのか分からなくなりました。話も出来なくなってしまいました。彼は椅子を立ち自分の息子であるヨナタンに槍を投げました。ヨナタンも大そう怒りました。自分の父がダビデをあんなに恥ずかしめるとは!彼は食卓を離れて何も食べませんでした。翌朝、彼は少年をひとり連れて野に出ました。

 少年が走っている前にヨナタンは矢を放ちました。そして、「矢は向こうにあるではないか」と叫びました。そして、少年が矢を見つけると「早くせよ。急げ」と声をかけました。少ししてヨナタンは自分の弓矢を少年に渡し、それを持って町に帰るように言いつけました。
 子どもが行ってしまうとダビデは隠れ場所から出て来ました。こんな寂しいところにいてもサウルに隠れ場を見つけられるといけないので誰にも見られないように用心していたのでした。ダビデは遠くに去らなければ殺されることを知っていました。ヨナタンもこの愛する友と別れなければならないことを知っていました。

 悲しい別れでした。二人は、涙で顔をぬらしながら抱き合って別れを惜しみました。「何時までもお互いにした約束を覚えていよう。主の名においてお互いの子どもの親切であることを私たちは誓いました」とヨナタンは言いました。そして最後に「平和があなたと友にあるように」という挨拶で、ダビデは野に、ヨナタンは王宮へと立ち去りました。