2013年7月23日(火)小さな朗読会167「追放者となったダビデ」(「母と子の聖書旧約下」69章)
巨人を殺したダビデにサウルは大そう満足し、青年を父の家に戻らせないで宮殿にずっと泊まらせました。サウルには、ヨナタンと言ってダビデとほぼ同じ年令の息子がいました。この二人は大そう仲良しになりました。ヨナタンは自分を愛するよりもダビデを愛したほどでした。ダビデもまたヨナタンを愛しました。必要な時にはお互いに助け合うという約束をしました。
ヨナタンはサウルの長男なので、サウルが死ねば王になります。皇太子であったため彼はいつも立派な服を着ていました。ヨナタンはダビデを大そう愛し、自分の服までダビデに与えました。彼はまたダビデに自分の弓や矢をも与えました。ダビデは王宮に続けて住みました。サウルの行く所へはどこでも行き、賢く行動したのでサウルは彼を軍の隊長にしました。ダビデはどこにいても、たとえサウルの家にいても兵の間にいても人々に好かれました。
ところがここに一つの問題が起こりました。ダビデがペリシテ人との戦いから帰ってくると、途中で通る町々の女は、サウル王を出迎えました。女たちはペリシテ人に打ち勝った喜びをあらわしたかったのです。彼女たちは手鼓を振り鳴らし、喜びのあまり踊りながら「サウルは千を撃ち殺し、ダビデは万を撃ち殺した」と歌いました。これを聞いたサウルは大そう怒り、ダビデを妬みました。「ダビデには万といい私には千という。このうえはいつか人々は彼を私のかわりに王にするであろう。」と思いました。
翌日、悪霊がサウルにのぞみました。ダビデはこのような発作の時には、以前したように琴を弾きサウルの気持ちを晴らすのが常でした。サウルは、手に槍を持っていました。悪い思いにとらわれていたサウルは、ダビデを憎み彼を殺そうとして、突然槍をダビデに投げつけました。ダビデは上手に身をかわしました。同じことが二度も起こりました。
その後、サウルはダビデを宮殿から出してしまいました。彼はダビデを軍に入れ、千人の長にしました。ダビデは既に大人になっており主は彼と共におられました。ダビデの賢さを見たサウルは、彼を恐れるようになりました。しかし、イスラエルの民は皆彼を愛していました。そこでサウルは、ダビデを殺す新しい方法を考えました。サウルはダビデをペリシテ人との戦いに出そうと思いました。そうすればダビデはいくさで殺されるでしょう。「このほうが私がダビデを殺すよりもよい。」とサウル王は考えたのです。サウルは、ダビデを呼びつけ、もしペリシテ人を百人殺したら自分の娘を妻に与えると言いました。
サウルの家族でダビデを愛していたのはヨナタンだけではありませんでした。彼の妹のミカルもこのハンサムで勇敢な音楽家の将校を愛していました。ダビデもミカルを愛していました。それで彼女を得るために、ダビデは喜んで自分の千人の兵を連れて戦いに出かけました。ダビデはペリシテ人の絶滅が主のみこころにかなうことも知っていました。
こうしてダビデはペリシテ人と戦いました。しかし、サウルが願うようにペリシテ人に殺されたりしませんでした。彼が戦場から帰ってきた時、サウルはミカル姫を妻として彼に与えました。ところが、自分の娘も民もみんながダビデを愛しており、主がこれを守っておられるのを見たサウルは、いっそうダビデを妬むようになりダビデの手ごわい敵になりました。
ダビデを戦場に出して殺そうとした計略が敗れたため、サウルはほかの事を考えました。彼は息子のヨナタンと召使達にダビデを殺すように命じました。ヨナタンはダビデを愛していました。それでダビデを殺すかわりに出来るだけのことをしてダビデを守ろうとしました。ヨナタンは王と話し合っている間、暫く隠れているようにとダビデに話しました。「そのあとであなたの所に来て、父の言ったことを告げましょう。と彼は言いました。ダビデは言われたようにしました。
ヨナタンは、ダビデのことを褒めながらサウルに語りかけました。「ダビデは大そうあなたに尽くしたのですから、ダビデを傷つけないでください。彼はゴリアテと戦った時、あなたのために命をかけました。あなたはそれを見て喜ばれました。どうして理由もないのに今彼を殺そうとするのですか。」サウルは自分を恥じ、ダビデを殺さないと約束しました。ヨナタンは、ダビデを父のもとに連れてきました。ダビデは再びサウルの宮殿で過ごしました。
ペリシテ人はまたイスラエルに挑戦してきました。ダビデと千人の兵はペリシテ人に対し輝かしい勝利を得ました。それでサウルは、またまたこのハンサムな隊長を妬むようになりました。彼は、悪霊に悩まされました。
ある日ダビデが琴を弾いているのを聞いているうちに、サウルはまた非常な憤りを感じダビデを殺そうとして槍を投げつけました。ダビデは巧みに逃れ、槍は壁に突き刺さりました。今度はサウルの怒りは消えませんでした。彼はダビデの家を監視するよう召使を配置しました。ミカルは、ダビデを愛していたので父の計画に背き、召使達に見えない窓からダビデを逃しました。ダビデはラマに住むサムエルの所に逃げ、そこに暫く留まりました。