2013年6月25日(火)小さな朗読会166「ダビデと巨人」
(「母と子の聖書旧約下」68章)

 サウルが治めている間中、ペリシテ人との戦いが続きました。この民族は、もと巨人が住んでいたユダの南西の海岸地帯に住んでいました。彼らは大きな城壁を巡らした都市を5つと、その他に小さい都市をたくさん持っていました。ペリシテ人は、何回も何回もイスラエル人に戦いを挑んで来ました。ダビデがサムエルに油を注がれてまもなく、彼らは再び戦いのために兵を集めていました。サウルとその兵隊はこれを迎え撃ちました。谷を間に挟んで両軍は山腹に陣取りました。

 ペリシテの軍には、背丈が2メートル半以上もある大男がいました。その名前はガテのゴリアテといい、その地方に残っている数少ない巨人のひとりでした。彼は背が高すぎるため、普通の家には入れません。また肩幅も広いので普通の戸からは入れません。たとえ入ったとしても天井に頭がつかえてしまいます。この巨人は、頭から足の先まで青銅の鎧を身につけていました。手には普通の人ならとても重くて持ち上げることもできない大きな槍を持っていました。
 ゴリアテは毎日出てきては、イスラエル人のいる山に向って大声で挑戦してきました。彼は「私は今日イスラエルの戦列に挑む。勇士をひとり出して私と戦わせよ。もしその人が戦って私を殺すことができたら、我々はお前たちの家来となる。しかし、私が勝ってその人を殺したら、お前たちは我々の家来になって仕えなければならない。」と恐ろしい声で怒鳴りました。この巨人を見て、その高慢な言い分を聞いたイスラエル人が恐れたのは無理もありません。こんな大きな人と誰があえて戦えるでしょう。この人にとっては、ひとりを殺すのも100人を殺すのも同じです。挑戦してきた時、この大男の挑戦に答えうるイスラエル人は、ひとりもいませんでした。サウル王も応じませんでした。

 サウルが戦いに出かけて行った後、ダビデはベツレヘムで父の羊を飼うため家に帰って行きました。兄たちは軍に加わっていました。ある日、エッサイはダビデに、「このいり麦1エパとこの10個のパンを取って陣営にいる兄の所へ持って行きなさい。また、この10のチーズをその隊長の所に持って行き、兄たちの様子を見てきなさい。」と言いつけました。
 ダビデは、自分の羊を番人にあずけ、早く出発するため夜明け前に起きました。ダビデが戦場に着くと、兵隊たちは戦いに出るところでした。土産を人に預けてダビデは兄達と話すため急いで兵士達の間に入りました。兄たちと話しているちょうどその時、恐ろしい巨人のゴリアテが出て来ました。彼はペリシテ人の山の上に立ってその恐ろしい声で「私はイスラエルに挑む。勇士をひとり出して私と戦わせよ」と叫びました。

 イスラエルの兵は皆おそれて、あちこち逃げ隠れました。ダビデのそばに立っていた何人かの兵は、「あの恐ろしい巨人を見たか。彼は毎日あのようにして出てくるのだ。サウル王は、彼を殺した人にたくさんの富を与えると約束しておられる。自分の娘を妻に与えるとさえ言っている。しかし、王の約束にもかかわらず誰もそれを試みる者はない。あんな怪物に勝てる人などひとりもない。」と言いました。
 ダビデは、「私が行ってあの巨人と戦いましょう。あれは野蛮なペリシテ人にすぎません。行ける神の軍に戦いを挑むとは何事でしょう。神が彼に打ち勝たせてくださるでしょう。」と答えました。誰かがサウル王にダビデの言葉を伝えました。サウルは巨人に立ち向かう人がいると聞いて、大そう喜びダビデを呼びました。サウルの前でダビデは今一度巨人と戦うことを申し出ました。サウル王は、「あなたはあのペリシテ人と戦うことはできない。あなたは年少だが彼は若いときからの軍人だ。」と反対しました。
 ダビデは、「私が父の羊を飼っている時、獅子が出てきて群れのこひつじを取った時、私はその後を追ってこれを撃ち、子羊をその口から救い出しました。その獣が私に飛び掛ってきた時には、ひげをつかまえて撃ち殺しました。熊が来て私の子羊を一匹取った時も、私はその熊を殺しました。獅子の爪、熊の爪から私を救い出された主は、私をこのペリシテ人の手からも救い出されるでしょう。」と答えました。
 ダビデが神様を信頼しているのを見て、サウルは「行きなさい。どうぞ主があなたと共におられるように。」と言いました。同時にサウルは鎧をダビデに着せたほうが安全だと思いました。彼は自分の青銅のかぶとをダビデの頭にかぶらせ、真ちゅうの細かい輪でできている鎧をダビデにまとわせました。ところがダビデは鎧が重くて歩けなくなりました。そこで彼は、「私はこんなものを付けていくことはできません。慣れていないからです。」と言いました。

 ダビデはこれを脱ぎ、杖を手に、向こう側の山にいる巨人と戦うため山を駆け下りました。この二つの山の谷間に小川が流れていました。ダビデはそこで足を止めて5個の滑らかな石を拾い、持っていた羊飼いの袋に入れました。そして、石投げを持って巨人に立ち向かいました。ゴリアテはもう一度挑戦の言葉を叫んだ後、誰かが戦いに来るかとあたりを見回していました。彼はダビデを見ましたが少年を馬鹿にしました。
 ダビデはだんだん近づいて行きました。ゴリアテは、「おまえは杖を持って向ってくるが、私は犬なのか」と叫びました。彼は、「さあ、向って来い。お前の肉を、空の鳥、野の獣の餌食にしてくれよう。」と言って、自分の神々の名によってダビデを呪い始めました。
 これに対してダビデは、「おまえは剣と、槍と、投げやりを持って私に向って来るが、私は万軍の主、すなわち、おまえが挑んだイスラエルの軍の神の名によってお前に立ち向かう。今日主はおまえを私の手に渡される。それによってイスラエルに神がおられることを私は全知に知らせよう。また、主は救いを施すのに、剣と槍を用いられないことを知らせよう。」とどなり返しました。
 ダビデがこういうと、ゴリアテは彼を殺そうと走り出しました。ダビデは、このペリシテ人のほうに向いました。彼は袋に手を入れて石を取り出し、石投げで投げました。石はゴリアテの眉間に強く当たり、ゴリアテはうつ伏せに倒れました。ダビデは巨人の側に走りより、ゴリアテの大きな剣をさやから抜き取って、巨人の大きな首を切り落としました。
 イスラエル人もペリシテ人も、皆この戦いを見ていました。ペリシテ人は、自分たちの巨人が死んだのを見ると、大急ぎで逃げました。イスラエルの軍は、ときの声をあげてエクロンとガテの町のモンまでこれを追いました。この日には、大勢のペリシテ人が殺され、サウル王はこの勇敢な少年に注意を払うようになりました。