2013年3月26日(火)小さな朗読会163「士師としてのサムエル」「最初の王サウル」(「母と子の聖書旧約下」66-67章)
士師としてのサムエル
サムエルはもう成人していました。彼は子どもの時よい子でしたが、成人してからは更に立派な大人になりました。彼はみんなに愛され尊敬されました。神様も彼を愛されました。エリはイスラエルを40年間治めました。彼の死後、サムエルが士師になりました。神様はモーセとアロンに話されたようにサムエルに話されました。
神様が再び預言者を通してご自分の民に語っておられることは、イスラエル人にとって大きな慰めでした。イスラエル人の多くは偶像礼拝に走ったのですが、ようやく自分達は神の民であることを思い出し、主に戻り主だけを拝することを願いました。サムエルは、もし彼らが偶像を捨て、主なる神を拝するならば、主は彼らをまた赦し、ペリシテの人の手から救われると約束しました。
イスラエル人は丸一日断食し、罪を告白しました。一日中サムエルは彼らのために祈りました。
この大集会のことを聞いて、ペリシテ人は戦争を挑むよい機会だと思いました。彼らは兵を集めミズパに向かってきました。
イスラエルの民は大そう恐れました。そうしてサムエルに祈りを止めないように頼みました。サムエルは子羊をはん祭に捧げて祈りました。サムエルが子羊を捧げている時、主はイスラエルの民を助け始められました。
空は暗くなり、風が吹き、雨が降り始めました。立て続けに雷が恐ろしい響きをたてて空に鳴り渡りました。太い稲光の筋が天の端から端に閃きました。こんな嵐の中ではペリシテ人も戦えません。彼らは列を崩し、恐れて逃げ惑いました。
イスラエル人は彼らを追い勝利を得ました。サムエルは大きな石をこの戦いの跡にたて、それを「エベネゼル」と名づけました。その意味は、「主は我々を助けられた」というのです。
ペリシテ人は、さんざんなめにあったため、サムエルの生きているあいだじゅう、二度とイスラエル人を悩ましませんでした。そのうえ、イスラエル人から取り上げた町も返しました。エクロン、ガテその他海岸沿いのいくつかの町は、またイスラエル領になりました。サムエルは毎年べテル、ギルガル、ミズパに旅行してはまた自分のガマの町に戻ってきました。彼はこれらの町々でイスラエルの民を裁きました。民はもう偶像を拝まなくなっていました。彼らは主に仕え、サムエルが彼らの士師であったあいだじゅう平和に暮らしました。
何年かするうち、サムエルは老人になりました。彼は自分の二人の息子にイスラエルを治めさせました。しかし、この息子達はサムエルほど良い人ではなく、公平に民を裁きませんでした。民の長老達はサムエルの所に来て、他の国々のように、自分たちも王様に治めてほしいのだがと申し出ました。サムエルは、快く思いませんでしたが何と答えてよいかわかりません。そこで彼は、困難にぶつかった時に誰もがすべきことをしました。主に祈ったのです。
神様はサムエルに、民のいうことを聞き入れるように、と言われました。主が彼らの支配者なのですから、彼らは王を求めるべきではありませんでした。彼らはいまに、他の国々と同じようになりたいと願ったことを後悔し始めるでしょう。しかし、神様は彼らに王を与えることにされました。
サムエルは民に、王を立てればその王は自分に仕えさせるために、民の息子や娘を要求する、また、民の田畑を取り上げ自分の好きな人に与えるであろう、と言いました。民はまた重い税金を払わされるでしょう。やがて後悔する、とサムエルは警告しましたが、民は自分たちの言い分を通し、まわりの国々のように王が欲しいというのでした。
最初の王 サウル
ベニヤミンの部族にキシという金持ちがいて、その人にサウルという息子がいました。サウルほど立派で顔立ちの良い青年は、イスラエル中にいませんでした。彼は背もイスラエルの誰よりも高いのでした。サウルの父は、たくさんのろばを飼っていました。
ある時、草を食べさせるために野に放してあったろばがどこかに行って迷ってしまいました。父は息子サウルに、「しもべをひとり連れて立って行き、ろばを捜してきなさい」と言いつけました。
サウルは、しもべを連れて出かけました。彼らはエフライムの山をずっと探しましたがろばは見つかりません。迷った動物の行方がいっこうにわからないまま、彼らはベニヤミンの地をひとまわりしました。
とうとうサウルはしもべに、「さあ帰ろう。父はろばのことよりも我々のことを心配しているでしょう」と言いました。これは、言うのは易しいですが実行するのは難しいことでした。サウルとしもべはあまり遠くまで来てしまったため帰り道がわからなくなっていました。
その時突然しもべは、預言者サムエルがこの近辺にいることを思い起こしました。サムエルなら帰り道を教えてくれるでしょう。
二人が預言者の家を探しにかかると、若い娘たちが井戸の水を汲むところに行き当たりました。サウルは、「先見者はここにおられますか」と聞きました。「おられます。急いで行きなさい。今日町で犠牲を捧げるので、民はその方々が来られて犠牲を祝福してから食事をします。町ではその方の来るのを待っています。」と乙女達は答えました。
サウルとそのしもべは急いで町に入りました。まもなく犠牲を捧げる所に行くサムエルに会いました。
さて、この前日に神様はサムエルに、「明日の今頃あなたの所に、ベニヤミンの地から一人の人を遣わすであろう。あなたはその人に油を注いで、私の民イスラエルの君としなさい。彼は私の民をペリシテ人の手から救い出すであろう。」と言っておられました。
サウルとそのしもべが、預言者を探して町を歩いている時、神様はまたサムエルに語り、「見よ、私の言ったのはこの人である。この人が私の民を治めるであろう」と言われました。ちょうどその時、サウルはサムエルのそばまで来て「先見者の家はどこですか。どうか教えてください。」と丁寧に尋ねました。これに対してサムエルは、「私がその先見者です。」と答え自分の家に誘いました。
そして、「私は明日の朝、あなたを帰らせ、あなたの心にあることをみな示しましょう。」と付け加えました。サウルはまだろばのことを話していませんでしたが、サムエルは「いなくなったあなたのろばはもう見つかっているので、心配しなくても宜しい。」と言いました。その上サウルが驚いたことに「しかし、イスラエルの全ての望ましいものは、あなたではありませんか」とサムエルは言いました。サウルは、サムエルの言っている意味がよくのみこめないので、「どうしてあなたはそのようなことを私に言われるのですか。私は偉い人ではありません。」と言いました。神様がサウルを王に選ばれたことをサムエルはまだサウルに告げませんでした。
サムエルはサウルを食事に連れて行き、一番の上座に座らせ、食物の中でも最上のものを彼に与えました。サウルはしもべと一緒に三日間も山地を歩き回り、持っていた食べ物を食べつくしてしまっていたので喜んでご馳走になりました。その日、サウルはサムエルの所に留まりました。
そして翌日、サウルはしもべと帰途につこうとしました。サムエルは町の外れまで一緒に行き、そこでサウルに、「あなたのしもべに先に行くように言いなさい。しもべが先に行ったら暫くここに留まってください。神の言葉をお知らせしましょう。」と言いました。
しもべが行ってしまうとサムエルは油のびんを取ってサウルの頭に注ぎました。彼は、この若者に接吻し、「主がご自身の民の君としてあなたを選ばれたので私はあなたに油を注いだのだ」と言いました。
先見者は、サウルに帰途に三つの出来事が起こることを語りました。第一に二人の人から父親が心配していることを聞かされます。第二に、三人の人に会ってパンをもらうでしょう。最後に預言者の一群と一緒になるでしょう。
先見者サムエルが言ったとおりにこの三つの出来事が起こりました。これでサウルは自分が神様に選ばれたことを知り、また神様に新しい心を与えられたので神様を一層愛するようになりました。
一週間後にサムエルはイスラエルの全部族を召集しました。彼は新しい王を公表したかったのです。
長い間イスラエルの民は、他の国々と同様に王に治められたがっていました。王を要求することは、神様を退けることになるというサムエルの警告に、彼らは耳を貸しませんでした。そこで神様は、とうとう彼らの望みを叶えようとされたのです。みんなが集まったところでサムエルは王の出る部族を選びました。
この部族に属する氏族がサムエルのもとに行くと、その中からサムエルは一つの氏族を選びました。選ばれた氏族の男たちがサムエルに近づくと、キシの子サウルの名が呼び上げられました。
ところがサウルが見当たりません。もちろんサウルは、自分がサムエルに王として油を注がれているので、王に選ばれることを知っていました。ところが謙遜なため恥ずかしくて民の前に立ちかねて隠れてしまったのでした。
民はどうすればよいか神様に尋ねました。神様は「彼は荷物の間に隠れている。」と答えられました。
サウルはようやく見つかりました。民は喜び勇んで彼をサムエルの所に連れてきました。預言者は、「王が選ばれた人をごらんなさい。民のうちに彼のような人はいないではありませんか。」と言いました。サウルは肩から上はどの人よりも高く、みんなの真ん中に立ちました。
自分たちの王となるこの立派でハンサムな青年を見たイスラエルの民は、狂気のように喜び「王様万歳」、「王様万歳」と叫びました。