2012年12月18日(火)小さな朗読会160「ルツの選択」
その一 悲しい物語
士師の時代に、皆がみな偶像を拝むために神様を捨てたと考えてはいけません。そうです。神様に従い、神様が命令されたように生活しようとした人も大勢いました。このような神様を敬う人たちのお話をここでいたしましょう。
士師が治めている時代にエリメレクという人がイスラエルに住んでいました。彼は良い人で心から神様を礼拝し偶像などを寄せつけない人でした。エリメレクにはナオミ(これは「楽しみ」という意味です)というやさしい妻がいました。二人の間にはマロンとキリオンという二人の男の子があり、この二人は立派な青年に育ちました。彼らはベツレヘムに楽しい家庭を構えていました。ここはヨシュアが昔イスラエルの民にカナンの土地を分割したとき先祖に与えられた土地でした。暫くして、何の作物も育たない飢饉が何年か続きました。雨がとても少なく飢饉がおこりました。ヨルダン川の向こう側、モアブの地には飢饉はありませんでした。
エリメレクと妻のナオミは相談の上、暫くベツレヘムを離れて飢饉が終わるまでモアブに住むことにしました。彼らはベツレヘムの土地は売りませんでした。神様はイスラエルの民の誰一人にも土地を売ることを許されなかったからです。一度与えられた土地はいつも同じ家系の土地として父から息子へ代々受け継がれていきました。エリメレクたちは多分自分の土地を他のお百姓さんに貸したのでしょう。
エリメレク一家が暫くモアブで暮らしているうちに、父のエリメレクが死にました。ナオミは大そう悲しみましたがまだ母を世話する二人の息子がいるので慰められていました。やがて、マロンとキリオンは二人のモアブの婦人と結婚しました。この二人の名はルツとオルパでした。二人の若い女は、マロンとキリオンと結婚した時はまだ異教徒でした。しかし、彼女たちがナオミの家庭で生活し、一家が真の神を礼拝しているのを見、神様の素晴らしい御業について語るのを耳にし、マロンとキリオンがどんなに良い人たちであり、ナオミがどんなに優しい人であるかを知るにつけ、彼女達も真の神を礼拝しようと決心しました。
さて、十年ほどモアブに住んでいるうちに大変な出来事が一家に訪れました。最初に息子の一人が死に、やがてもう一人も死んでしまったのです。気の毒なナオミは、夫も息子達も失ってしまい、ルツとオルパも未亡人になってしまいました。
それからまもなく神様がイスラエルの地に雨をたくさん降らされたことをナオミは聞きました。飢饉は終わりました。ナオミは夫と息子達を失った今、故郷に帰りたくなりました。せめて自分の民族、自分の友人や親族の間で暮らしたいと願いました。そこである日、ナオミは二人の嫁に自分がユダの国のベツレヘムに戻る決心をしたことを伝えました。ルツとオルパは一緒に行くと言いました。そして、三人はベツレヘムに向かって旅を始めました。数日間の旅でした。
暫くしてからナオミは二人の嫁に、「ここまで一緒に来てくださって有難う。さああなたがたは、それぞれ自分の母の家に帰って行きなさい。あなたがたが死んだ二人の子と私に親切を尽くしたように、どうぞ主があなたがたに慈しみを賜りますように。どうぞ主があなたがたに夫を与え、夫の家でそれぞれ身の落ち着き所を与えられますように」と言いました。
ルツとオルパは泣き出して「いいえ、私たちは一緒にあなたの民の所へ帰ります。」と言いました。
しかし、ナオミは「娘達よ、帰って行きなさい。神様が私をこのように悩まされたことを私はあなた方のために非常に心を痛めているのです。」と言いました。二人はまた泣き始めました。
暫くしてオルパは涙を拭い、姑に別れの口づけをして自分の国へ帰っていきました。ナオミはルツに「ご覧なさい。あなたの兄嫁は自分の民と自分の神々のもとへ帰っていきました。あなたも兄嫁のあとについて帰りなさい。」と言いました。しかし、ルツはますます激しく泣くばかりです。彼女は姑に抱きつき「あなたを捨てあなたを離れて帰ることを私に勧めないで下さい。私はあなたの行かれる所へ行き、またあなたの宿られる所に宿ります。あなたの民は私の民。あなたの神は私の神です。死がわたしたちを分けるまであなたと共にいます。」と言うのでした。ルツが本当に異教の生活から離れて、イスラエル人になりたがっていることを知って、ナオミはもうルツを帰すのを止めました。二人は一緒に帰っていきました。彼らはヨルダン川を渡りベツレヘムへ着くまで歩きました。
その二 幸福な結末
その頃は手紙を運ぶ郵便屋などいませんでした。エリメレクとナオミが十年前にベツレヘムを離れてから、ベツレヘムの人々は彼らがどうなったかほとんど知らなかったでしょう。
町の人はルツとナオミの二人の婦人がある暖かい夕方、町に入ってくるのを見てそのまわりに集まり、疲れて悲しみをたたえている年老いたほうの婦人を見て「これが十年前いいご主人と、二人の立派な息子さんと一緒に幸福そうにここをたったナオミですか。」と言いました。これに対してナオミは「私をナオミ(楽しみ)と呼ばずに、マラ(苦しみ)と呼んでください。私は出て行くときは夫と二人の息子と一緒でしたが彼らは死にました。私は一人で帰ってきました。」と言いました。
人々はこれを聞いて驚きナオミに大層同情しました。そしてナオミのためにルツを喜んで受け入れました。こうして、ルツとナオミは、ナオミがもと住んでいた家に住みました。
神様の民に連なるためにカナン人から離れた人はルツの他にもいました。ヨシュアがエリコを偵察するため斥候を送ったとき斥候をかくまったラハブを皆さんは覚えていますか?
あとでエリコの町が兵隊たちに滅ぼされた時、ラハブとその家族は助け出され、それからはずっとイスラエルの民と生活しました。暫くしてからラハブは立派なイスラエル人と結婚し子どもを産みました。この子どもたちは成長しイスラエル人と結婚して真の神を礼拝しました。
ルツとナオミの頃、ラハブの子どもの一人でボアズという人がいました。この人はベツレヘムで重要な人でお金持ちでもありました。彼はナオミの夫の近い親類でした。
ルツとナオミがベツレヘムに戻ったのはちょうど麦の収穫の時でした。ベツレヘムのまわりの畑ではみな麦を刈っていました。刈り入れ人が麦を刈り、広い畑を早く片付けようと麦を急いで束ねていくので束から外れて地面にこぼれる麦も出てきます。刈る人はこういう落穂は拾いません。昔、モーセの時代に収穫のために畑を刈る時、地面に落ちた穂を拾うために戻ってはならない、という律法を神様は与えられました。落穂は貧しい人々のために残されました。
他の若い女の人たちが落穂を拾っているのを見て、ルツはナオミに自分も行かせて欲しいと言いました。そして、ルツは偶然ボアズの畑で落穂を拾うことになりました。
ボアズは刈り入れのため大勢の人を手伝いに雇っていました。そして何人かの女の人が刈り入れ人の後ろから落穂拾いをしていました。
ある日、ボアズは仕事具合を見に畑に来ました。そして、働いている人々に「主があなたがたと共におられますように」と言いました。すると彼らも「主があなたを祝福されますように。」と答えました。何といい挨拶でしょう。これらの人々は本当に神様を礼拝していた人々に違いありません。刈り入れ人に挨拶した後、ボアズは落穂を拾っているルツに気づきました。彼は監督に「これは誰の娘か」と聞きました。「あれはモアブの女で、モアブの地からナオミと一緒に帰ってきたのですが、彼女は『どうぞ私に刈る人達の後について、束の間で落穂を拾い集めさせてください。』と言いました。」と答えました。
そこでボアズはルツの所へ行き、親切に話しかけ、何時でも畑で落穂を拾い若者達の汲む水を飲んでよいと言いました。このようにボアズに優しく話しかけられてルツは地にひれ伏し、外国人である自分にどうしてこう親切なのかボアズに尋ねました。
彼は「あなたがナオミに尽くしここに来たことは皆私に聞こえました。主の翼の下に身を寄せてきたあなたを主は十分に報いてくださるでしょう。」と答えました。
ボアズはもしかするとラハブが異教を離れた時のことを思い起こしていたのかもしれません。食事の時、ボアズは刈る人と共に食べるようにルツを特別に呼びました。ボアズは彼女に食物を与えたので彼女はそれを食べました。ルツが食卓を離れるとボアズは刈る人々に「彼女には好きなところで落穂を拾わせなさい。また彼女のために束からわざと抜き落として拾わせなさい」と言いつけました。
ルツは夕方まで落穂を拾い、拾ったものを姑のところに持って帰りました。
ナオミは「あなたは今日どこで穂を拾いましたか」と聞きました。「ボアズという人の所です。」とルツは答えました。神様がルツを自分のいとこにあたるボアズの畑に行かせられたのを知って、ナオミは大そう喜びました。そしてルツにボアズの畑で拾い続けるように言いました。
当時イスラエル人の間では、結婚した男の人が死ぬと、その近親者が死んだ人の妻をめとるという習慣がありました。ボアズは美しいルツが毎日毎日自分の畑で落穂を拾っているのを見ている間に、ルツがすっかり好きになってしまいました。そしてルツに自分と結婚してくれるように言いました。ルツとボアズは結婚し、その美しい家に住むようになりました。ナオミは大変満足しました。
まもなく、ルツとボアズに男の子が生まれました。その子はオベデと名づけられました。ナオミはこの子を抱きました。近所の人々は皆赤ん坊を見に集まり「主はほむべきかな。主はあなたの老齢にこの子を与えられました。七人の息子にもまさるあなたの嫁にこの子を与えられました。」と言いました。この子はダビデのおじいさんです。やがて時がたつとこの家系から救い主イエスが生まれるのです。