2012年10月23日(火)小さな朗読会158「サムソン」
その一 むずかしい謎
ギデオンの死後、イスラエルの民は、また偶像に仕えました。彼らはバアルとアシラに仕えたばかりではなく、周囲の異教徒の神々を全部拝みました。彼らはぺリシテの魚の神にいけにえを捧げ、燃える偶像モロクにも仕え、自分たちの神を忘れてしまいました。この彼らの不忠実さを神様は大そう怒られました。そして、異教国民が何年もの間イスラエルを悩ますのをお許しになりました。とうとうイスラエルの民は、主に助けを求めました。主は彼らを以前に何回も助けたのに、彼らはなお偶像に仕えていることを指摘されました。そして、偶像に助けを求めて救ってもらえばよいではないかと言われました。しかし、イスラエルの民は諦めませんでした。彼らは罪を犯したことを心から悔い、もう一度主が助けてくださるように求めました。彼らは偶像を捨て主に仕えました。ギデオンが死んでから八十年ほどたっていました。その間七人の違う士師が治めましたが、今では規律など全く民の間になくなっていました。一人一人好き勝手なことをしていました。民は異教の民のようになっていました。
この波乱に富んだ時代に、ダンの部族にマノアという人がいました。彼とその妻には子がありませんでした。ある日、マノアの妻が一人でいるところに主の使いが現れ、今に男の子が生まれると告げました。この子は生まれたときから主に捧げられる子で、髪の毛を切ってはいけない、濃い酒も飲ませてはいけない、と天使は言いました。この子が成長したらイスラエルをペリシテ人から救うでしょう。この頃、イスラエルを困らせていたのはペリシテ人でした。彼らは地中海の沿岸に近い西方に住んでいました。ガテ、ガザ、ラキシはみなペリシテの町でした。
翌年、マノアとその妻に赤ん坊が生まれました。彼は、サムソンと名づけられました。子供は大きくなり大そう力のある子に育ちました。ある日、サムソンが一人で散歩しているとライオンが近づいてきました。ライオンは強くてどう猛な動物なのにサムソンは素手でライオンを捕らえ裂いてしまいました。
それからまもなくサムソンは、一人のペリシテの女が好きになりました。彼は両親にその女と結婚したいと言いました。両親はサムソンを異教の女と結婚させたくなかったのですがとうとうそれを許しました。みんなで女に会いにペリシテの国に行きました。
異教の女と結婚したことはサムソンの大失敗でした。このためいろいろ問題が起こりました。しかし、神様はこれがイスラエルの助けとなるように仕向けられました。
ペリシテの女を訪問した帰り、サムソンは自分の殺したライオンの死骸を見に行きました。すると渇いた死骸に、一群の蜂が巣を作っていました。サムソンは、巣から蜜を取って食べ両親にも与えました。
サムソンがまたペリシテの国に来た時、立派な結婚披露宴を開きました。この宴は一週間続き若い客が三十人集まりました。この祝宴でみな、謎をしました。サムソンは、ライオンと蜜の謎を出しました。もし、祝宴が終わるまでにこの謎を解く人があれば、着物三十と晴れ着三十を与えると言いました。もし、それまでに当たらなければ彼らからサムソンが着物と晴れ着を三十ずつもらうことになりました。彼らはみなこれに同意しました。そこでサムソンは謎を出しました。「食らう者から食い物がで、強い者から甘い物が出た」
客達は三日間色々考えましたが正解が出ません。そして、いつまでたっても答えがわからないことを恐れました。サムソンに三十の着物や晴れ着を渡したくなかったのです。
祝宴の最後の日に彼らはサムソンの妻の所に来て、「あなたの夫を説き進めて謎を私たちに明かすようにしてください。そうしなければ私たちは火をつけてあなたとあなたの父の家を焼いてしまいます。あなたは私たちの物を取るために私たちを招いたのですか」と言いました。彼らはなんと悪い人たちだったでしょう。
サムソンの妻はサムソンの所に来て、「あなたはただ私を憎むだけで愛してくれません。あなたは私の国の人々に謎を出してそれを私に解き明かしませんでした。」と言って泣きました。サムソンは、「私は自分の父にも母にも解き明かさなかった。どうしてあなたに解き明かせよう」と答えました。しかし、その妻は、「あなたは私を愛していない。愛していたら解き明かしてくださるはずです。」とわめくばかりです。サムソンは彼女があまりうるさいので答えを教えてしまいました。彼女はそれを三十人の客に伝えました。
彼らはサムソンの所に来て、「蜜より甘いものに何があろう。ししより強いものに何があろう」と大いばりで言いました。これはとても自分たちで解けるはずがないのでサムソンはすぐに彼らが自分の妻から解き明かしを聞きだしたことを知りました。「私の若い雌牛をものにしなかったら私の謎は解けなかった」と言って怒りました。
サムソンは怒りを抑えきれないほどでしたが、彼らに三十の着物と三十の晴れ着を渡す約束を果たさなければなりません。どこからそんなにたくさん手に入れればよいでしょう。買うだけのお金はありません。そこでサムソンはアシケロンというペリシテの町に行って、ペリシテ人を三十人殺し、その着物を客に与えました。これは恐ろしいことでしたがイスラエル人を助けることにはなりました。
神様は、サムソンのお母さんにサムソンがイスラエルの民をペリシテ人から救うものになると言っておられました。このために神様はサムソンに大力を与えられたのでした。
その二 一人いくさ
サムソンは三十枚の着物を客に渡した後、非常に怒ったまま家に帰りました。自分を裏切った妻は置いていきました。その父は、サムソンがもう彼女を愛していないのだろうと思い、彼女を他の人に嫁がせました。
暫くしてサムソンの怒りは収まり、妻にお土産として小山羊を持って彼女の父の家に行きました。ところが驚いたことに、舅は彼を妻に会わせてくれません。事情を知った時のサムソンの気持ちがどんなであったかは察してください。
彼は復讐心に燃えました。彼は、三百匹のきつねを捕まえ、二匹づつ尻尾を結わえ付けその間に松明を括り付けました。そして松明に火をつけてきつねをまだ刈っていない麦の中に放しました。麦畑は焼け、葡萄畑も、オリーブ畑も焼けてしまいました。
ペリシテ人は、自分たちの麦や葡萄やオリーブが皆焼けてしまったのを見て、非常に怒りました。誰かがこれは舅が妻を他の人に与えたため、サムソンがしたことだと言いました。サムソンは強すぎるのでペリシテ人は彼をこらしめるわけにはいきませんでした。
そこで彼らはサムソンの舅の家に行き、サムソンの妻とその父を焼き殺しました。たぶん、夜みな眠っている時、家に火をつけたのでしょう。
ところが、ペリシテ人が自分の妻と舅を殺したと知って、サムソンは一層怒りました。彼は出かけていって大勢のペリシテ人を殺しました。そして、遂にはこの異教のペリシテ人に愛想をつかし、サムソンは自分の国ユダに戻り、エタムという高い岩の上の秘密の洞穴に住みました。
ペリシテ人はユダに登って行って、サムソンを探しました。ユダの人々は、彼らのような粗暴な人を恐れ、「あなたがたはどうして我々の所に攻め登って来たのですか。」と尋ねました。「我々はサムソンを縛り、彼が我々にした通りに、彼に仕返しをするために登ってきたのです。」とペリシテ人は答えました。
ペリシテ人がサムソンだけを求めているのを知って、ユダの人々は彼を探しに岩の洞穴を訪ねました。彼らはサムソンが非常に強いのを知っていました。一人はいうに及ばず、三人、四人でもとてもサムソンに立ち向かえないので三千人で彼の所に行きました。
すぐにサムソンは見つかりました。「あなたはどうしてこんなことをペリシテ人にしたのですか。あなたは彼らを怒らせそのために我々は苦しめられています」と彼らは言いました。
三千人で自分を縛りに来たと聞いてサムソンは密かに笑ったことでしょう。自分を縛っても良いと彼は言いました。ユダの人々は、サムソンの手足を二本の新しい綱で結わえ、逃げられないようにサムソンの周りに綱をぐるぐる巻きつけました。そして、ペリシテ人の所に連れて行きました。
千人以上ものペリシテ人は、ユダの人々がサムソンを捕まえられるかどうかを見ていました。彼がしっかり縛られているのを見てみんなは歓声を上げました。
サムソンがその叫びを聞いたとき、主の霊が彼の上にくだり、非常な力を彼に与えました。彼はこの強くて新しい綱を火にこげた糸のように切ってしまいました。サムソンは、地面にロバのあごの骨が落ちているのを見つけました。彼は人とびでそれを拾い上げ、右、左とその強い腕を振り回しながらペリシテ人の群れの間に走りました。彼の打つ力のすさまじさに打たれた人は次々と死んで倒れました。もちろん、ペリシテ人はあらゆる方向に走りました。あまり逃げるのを急いだのでお互いの上につまずいたり転んだりしました。サムソンはすぐ彼らに追いつき彼らの頭や肩を容赦なく叩きました。
やがてサムソンはそれをやめて長い息を漏らしました。周りには死体が山となっています。サムソンは数えてみました。驚いたことに千人の死体がありました。
サムソンにこのような力を与えたのは神様でこれはサムソンがイスラエルの民を解放するためでした。たった一人の人が普通の武器を使わないで、千人を殺したのはこれが最初で最後でしょう。
この争いの後でサムソンは非常に喉が渇き、水がなくて弱っているので、死ぬか、ペリシテ人に捕まるだろうと思えるくらいでした。彼は神様に困って求めたところ神様は地面の低い所から美味しい冷たい水を湧きあがらせられました。皆さんもこの国に行ってみれば神様がご自分を信じる人々のためにおこされた泉を見られるでしょう。
それから後、間もなくサムソンは再びペリシテの国ガザの町に行きました。
その頃のたいていの町のようにガザは厳重な門を備えた城壁を巡らした町でした。誰かが町の指導者達にサムソンが午後町に来たことを告げました。彼らは門を閉めて錠をかけました。「さあ、サムソンを捕まえることが出来る。門から出られないから我々は朝まで待って彼が出ようとしたときに彼を殺そう」と人々は言いました。
ところが夜中にサムソンは帰ろうとしました。門が閉まって錠がかかっているのを知り、彼は門の取り付けてある門柱を引き抜き、重い二枚の門も、門柱も、かんぬきも肩に乗せて五十キロほど離れている自分の国ヘブロンに近い山まで運んでしまいました。 くまだなみこ