2010年9月21日(火)暗闇で泣く子供−ローラ、叫んでごらん−

ずいぶん前のことですが、ある青年が「なみこさん読んで見ませんか?」と一冊の文庫本を下さいました。「フライパンで焼かれた少女の物語」と書いてあり本の題名は「ローラ、叫んでごらん」(リチャード・ダンブロジオ著、関口秀男訳、講談社文庫)。あなたもご存知でしたか?

本の裏表紙には「泣き声がうるさい、そういって両親は1歳のローラをフライパンで焼いた。一命をとりとめた幼子は知的障害児として施設に送られるが、他者への恐怖と絶望から言葉を発することができなかった。12歳のローラが臨終精神科医とめぐり合った時…幼児虐待社会の痛切な告発であり、人間の誠意と愛の感動の記録でもある」と書かれ実話です。「幼児虐待」この事件は国を問わずいつも悲しい事件が起こり続けています。少女の死との戦い、その姿は「皮膚の半分が干しブドウのように焼け爛れ、背骨は老女のように曲がったまま、目は斜視で、脚は絶えず静脈瘤からの苦痛、泣く以外に言葉を知らない…」と。ローラが施設で出会ったシスターたちの献身的支えを得て、全てが絶望と思われるような状況から希望の光が一筋見えてくるのです。

前書きの中に印象的な本当にそうなのではないかと私自身が思う一言があります。「隣人を愛することは、人類を全体として愛することよりむずかしい」という格言です。68億の地球の人々を救うことも大切、1億3千万の日本人を愛することも大切、何百万人かの同じ県に住む人々、何十万人かの同じ街に住む人々も大切、でもたった一人のかけがえのない隣人、それも家族を愛することが難しい現実を皆知っているのではないでしょうか。
著者は忍耐しながらローラと向かい合い続け、ついに勝利します。人間に絶望しなくていいのだと力強く訴えているようです。私に読んでみませんか、と問いかけてくださった青年は、その後伝道者になっていきました。

今日今も暗闇で泣き叫ぶ子供たちが大勢います。10年前「赤ちゃんポスト」が話題になりましたね。2000年5月に制定された「児童虐待の防止等に関する法律」も、多くの市民の声により2004年に大幅な改正がなされました。それでも防ぐことが出来ない事件が今もまだまだ起こっています。ついこの間も泣き叫ぶ幼子たちの声が聞こえていても助けることができない事件が起こりました。3歳と1歳の可愛い子供たちが殺されてしまいました。人々の無関心、コミュニケーション不足、色々なことが言われます。これらに関連する法律は、児童福祉法、児童虐待防止法、刑法、民法、国連の子どもの権利条約、日本国憲法などがあるとのことです(「新こどもの虐待」・森田ゆり著、岩波ブックレットNO625)。

今日も大切な一日が過ぎていきます。ローラの叫びを心に思いながら、私たちの周りをみつめてみようではありませんか。暗闇で叫ぶ声が響いてきたら祈りながら一歩を踏み出そうではありませんか。私たちのためにいのちを捨ててくださったイエスさまに従って。

「互いに愛し合いなさい。私があなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。」(ヨハネによる福音書13:34)  くまだなみこ