2024年10月20日(日) 聖書と数字

 おはようございます。ラジオ牧師の山下正雄です。
 今日10月20日は、「世界統計デー」です。様々な統計データは、今現在の私たちの住んでいる世界を知る上で、とても大切なことです。

 しかし、そればかりではなく、統計は、将来の予測にも役立っています。将来を予測することで、前もって対策を考えることができます。数字やデータは、一見冷たいものに感じるかもしれませんが、それらは、私たち一人ひとりの生活に深く関わっています。そういう認識を深めるために、国連機関が定めたのが、この世界統計デーです。

 さて、統計を通じて世界を理解することが大切である一方で、私たちは、「数字では測れないもの」にも目を向ける必要があります。たとえば、幸福感や愛、信頼、希望といったものは、いくら統計を使っても、完全に把握することはできません。ここで、聖書やキリスト教のメッセージが興味深い視点を提供してくれます。

 聖書は、数千年にわたって人々に読まれてきた書物です。そこには、神や人間、世界についての深い洞察が詰まっています。しかし、聖書が語るメッセージは、単に過去の話にとどまりません。それは、現代を生きる私たちにも通じる普遍的な教えを含んでいます。

 たとえば、イエス・キリストは、人々に「互いに愛し合いなさい」(ヨハネ13:34)という教えを広めました。この教えは、何人の人が従ったのか、という数字には表れてないかもしれません。しかし、その影響は計り知ることができません。愛、思いやり、優しさといったものは、統計や数字では測れない「無形の価値」ですが、私たちの生活において、非常に大切なものです。

 また聖書には、「一匹の迷える羊」の話があります(マタイ18:12-14参照)。百匹の羊のうち、一匹が迷子になったとき、羊飼いは、その一匹を探しに行きます。この話は、数の多い少ないではなく、一人ひとりの価値を強調している点で非常に重要です。統計的に見れば、1パーセントの損失は、小さく見えるかもしれません。しかし、その一匹には無限の価値があると、聖書は語ります。つまり、どんなに小さな存在でも、それぞれがかけがえのない価値を持っている、というメッセージです。

 このように、統計やデータが示す「全体の傾向」と、個々の存在の「固有の価値」をどう両立させるかは、現代社会における大きな課題です。数字が増えれば、全体の傾向を掴むことはできても、その背後にある一人ひとりの人生や物語を見失ってはいけません。キリスト教の教えは、私たちが統計的な数値の背後にある「人間の物語」に目を向けることを促しています。

 統計は確かに、私たちの社会をより良くするために重要なツールです。しかし、同時に私たちは、数字では表せない人間の感情や経験、希望や苦しみにも目を向ける必要があります。聖書のメッセージは、そのバランスを取るための視点を提供してくれます。

 また、統計を活用して社会全体の改善に取り組む際に大切なのは、ただ効率を追求するだけではなく、「隣人を愛する」という視点を持つことです。たとえば、貧困や不平等の解決に向けたデータが示す解決策を考えるとき、その数字の背後にある、一人ひとりの生活やストーリーを忘れてはなりません。

 統計は、社会全体の健康状態を示すバロメーターのようなものですが、そこで見落とされがちな「小さな声」にも耳を傾けることが、キリスト教が教える思いやりの姿勢なのです。


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