2020年6月7日(日) 神がそれを命じられるということは

 「キリストへの時間」をお聞きのみなさん、おはようございます。広島県竹原市にあります忠海教会の唐見敏徳です。
 振り返ってみますと、最初にこの番組でお話をさせていただいたのは約5年前、2015年3月のことでした。その頃と現在とでは、私自身、家族、そして教会もいろいろな転機を迎え、変化を経験しました。今月は4回、「転機」そして「変化」をテーマに聖書からお話しします。第一回の今日はモーセの召命の場面を取り上げます(出エジプト3-4章参照)。

 そのとき、モーセはミディアン地方で暮らしていました。現在の地図でいえば、サウジアラビアです。ここは彼の生まれ故郷ではありません。40年前に、そして彼が40歳のとき、同胞のイスラエル人を虐待していたエジプト人を殺害したのをきっかけに、ここに逃れてきたのです。以降、現地の女性と結婚し、子どもをもうけ、妻の親族とともに生活していました。

 いつものように羊の世話をしていると、不思議な光景に出くわします。それは、火に燃えているのに燃え尽きない柴でした。不思議な燃える柴に近づいていったモーセは、そこで「わたしはある」と言われるまことの神に出会います。そして、再び生まれ故郷のエジプトに戻り、厳しい労役を課され、苦しんでいる仲間のイスラエル人を助け出すようにと命じられるのです。

 この出来事は、モーセにとって文字通りの人生の転機であり、以後の彼の歩みはこれまでとは全く異なるものになりました。ミディアンの一介の羊飼いから全イスラエルのリーダーへ。その働きの内容と重さは比較にならないほど変化しました。この人生の一大転機を、モーセは前向きに受け入れたわけではありませんでした。反対に、彼は何度も神の召しを辞退しようとします。いろいろな理由を挙げて、わたしにはできません、どうか別の人にあたってください、と言うのです。

 煮え切らないモーセに対して、神はお怒りになってこのように言われました。「あなたにはレビ人アロンという兄弟がいるではないか。わたしは彼が雄弁なことを知っている。その彼が今、あなたに会おうとして、こちらに向かっている。あなたに会ったら、心から喜ぶであろう。彼によく話し、語るべき言葉を彼の口に託すがよい。わたしはあなたの口と共にあり、また彼の口と共にあって、あなたたちのなすべきことを教えよう。彼はあなたに代わって民に語る。彼はあなたの口となり、あなたは彼に対して神の代わりとなる。あなたはこの杖を手に取って、しるしを行うがよい。」(出エジプト4:14-17)

 ここで注目したいのは、神がモーセに対して命じられた働きに関して、すなわちエジプトに戻り、仲間を助け出すという仕事に関して、それを実現するために必要なことをすべて、神はちゃんと備えておられるということです。

 結局、モーセは神の召しに応えてエジプトに行くことを決意します。そして同胞のイスラエル人とともにエジプトを脱出して、約束の地カナンを目指して荒野の旅を続けます。その間、ファラオとの交渉、葦の海でのピンチ、食料をめぐる仲間の不満など、さまざまなトラブルがありましたが、モーセは神の召しに対して忠実に歩み、その人生を全うしました。

 聖書が語るまことの神は、実現不可能な仕事を押し付け、後は知らないという方ではありません。神がわたしたちに何かを求めておられるとき、モーセに対してそうであったように、どれほど困難に見えてもそれは実現すると聖書は語ります。なぜなら神ご自身がそのようにしてくださるからです。