2015年5月3日(日) 主イエスと出会った人々〜アンデレの場合
おはようございます。ラジオ牧師の山下正雄です。
新約聖書の福音書には、様々な人物が登場します。男も女も、子供もお年寄りも、様々な立場の人たちがいろいろな形でイエス・キリストと出会います。
さて、きょう取り上げようとしている人物は、アンデレという人です。イエス・キリストの弟子のひとりで、ガリラヤ湖で漁師をしていました。その兄弟の名前はシモン・ペトロです。残念ながらどちらが兄でどちらが弟かはわかりません。聖書の中でアンデレとシモンの名が並んで記されるとき、一回を除いてすべて、シモン・ペトロの名前が先に記されます。またアンデレが単独で登場するときにも、一回を除いてすべて、「シモン・ペトロの兄弟アンデレ」と紹介されます。それは、聖書には圧倒的にシモン・ペトロの方が登場回数が多く、たくさんのエピソードを持っていたからでしょう。言い換えれば、アンデレはそれほど兄弟シモンの陰に隠れた人でした。
アンデレは、ほとんどといってよいくらい、聖書の記事の中では何も知られていません。もちろん、聖書以外の伝説の中には、どこで伝道をし、どこでどのような最期を遂げたかという話は知られています。『アンデレ行伝』と呼ばれる彼の名前を冠した書物が三世紀ごろには出回っています。ただ、聖書の記録に限って言えば、アンデレに関して何かが書けるほどの情報がほとんどありません。
また、兄弟のシモンが「バルヨナ・シモン」(ヨナの子シモン)と呼ばれていることから(マタイ16:17)、シモンも父親のヨナも明らかにユダヤ系の名前で呼ばれていたのに対して、アンデレは「男らしい」という意味のギリシア語由来の名前です。当時のガリラヤに住むユダヤ人は二つの名前を持つことが普通でしたから、アンデレにもユダヤ系の名前があったはずです。しかし、残念なことにギリシア語由来の呼び名しか知られていません。
しかし、ここまで情報が少ない人物なら、取り上げても意味がないといわれてしまうかも知れません。確かに兄弟のシモン・ペトロほどの情報がないとしても、それでも聖書を注意深く読むと、アンデレについて大切なことを知ることができます。そのほとんどはヨハネによる福音書からの情報です。
まず、何よりも特筆すべきことは、後に自分よりもずっと有名になる兄弟シモン・ペトロに、キリストのことを最初に伝えたのは、他ならないアンデレでした。彼はイエス・キリストに出会ったことを、誰よりも先に自分の兄弟に話した人でした。話しただけではなく、実際、ペトロをキリストのところにまで連れて行ったのもアンデレでした。兄弟思いのアンデレということができるかもしれません。神の目から見れば、この順番でキリストと出会わせたからこそ、二人ともキリストと出会えたということでしょう。
誰かをキリストに取り次ぐという点では、他にもエピソードがあります。キリストが5千人もの人々をたった五つのパンと二匹の魚で養われた奇跡を行われたときのことです。このとき、そのパンと魚を持っていた少年をキリストに取り次いだのはアンデレでした。いくらなんでも足りないとわかっていても、それでもこの少年をキリストのもとへ連れてきたのはアンデレです。
このエピソードのほかにも、アンデレは何人かのギリシア人たちをキリストに取り次ぎました。それは小さなことかもしれませんが、大切な働きでした。こうまでキリストへと人々を連れてくることができたのは、アンデレに対してイエス・キリストがどれほど大きな影響を与えたかということです。
この番組「キリストへの時間」は、アンデレが出会ったこのキリストへとあなたを取り次ぐ番組です。