2014年7月20日(日) 和解のための信仰

 おはようございます。宿毛教会の酒井啓介です。
 旧約聖書の創世記に登場するヨセフという男性についてお話をします。

 ヨセフは12人兄弟の下から二番目でした。神はヨセフを用いて、これからしようとしていることを、ヨセフの夢を通して示していました。その夢には、親も兄もヨセフに仕える、という意味がありました。
 ヨセフは、父が年老いて生まれた子だったので特別かわいがられており、実はそれを兄たちは妬んでいました。その上、夢の話を聞いて怒りは頂点に達し、兄たちはヨセフをエジプトに奴隷として売りとばしてしまったのです。エジプトでヨセフの働きはことごとく神が祝福してくださいましたが、ある時無実の罪で投獄されます。ヨセフは、夢を解き明せるように神が働いてくださっていたので、同じ牢の囚人の夢を解き明してあげたところ、見事に実現しました。

 ある日、エジプトのファラオ自身も不思議な夢を見て悩み始めました。すると、牢からヨセフが出されファラオに夢を解き明かせるか尋ねられます。ヨセフは「わたしの力ではありません。神の力によるのです。」といって、見事にファラオの夢を解き明しました。その内容は、これからエジプトは7年間の大豊作を迎え、その後の7年間は大飢饉になるというものです。ファラオはよく考え、ヨセフを総理大臣に任命し、その大飢饉に備える働きを命じました。
 その後、実際に7年間大豊作が続き、その後、7年間大飢饉が世界を襲いました。エジプトに蓄えがあることを知った世界中の人々が集まってきました。多くの人が集まってくるためヨセフは総理大臣の仕事に追われていました。
 ある日、エジプトへ食糧を求めに来た人の中に、自分の兄たちの姿を見つけました。ヨセフは弟だということを知られないようにして、兄たちを呼び、素性を尋ねました。すると兄たちは、父が健在であること、12人兄弟だったが、昔、下から2番目の弟がいなくなったこと、一番下の弟は今、父のもとにいることを告げました。そこで、ヨセフは、兄たちが昔の罪を悔い改めているかどうか、弟を愛するようになっているかどうか、それを確かめるため末の弟もエジプトに連れて来るように命じました。驚いた兄たちですが、従うしかありません。家に戻って、兄たちから事情を聞いた父は、末の弟も送り出すことに悩み苦しみましたが、そのようにし、兄たちと末の弟が揃って再びヨセフの前に出てきました。ヨセフは末の弟の無事で元気な姿を見ることができ、懐かしさと嬉しさで涙を流しました。兄たちは、ヨセフにしたことと同じことは、末の弟にはしていなかったのです。

 それからヨセフは総理大臣の権限で、兄たちをもう一度試すことにしました。彼らが帰る際に、末の弟の荷物の中にヨセフの大切な銀の杯をしのばせたのです。それが見つかった時の兄たちがどういう態度にでるのかを知ろうとしたのです。
 彼らはエジプトから帰っている最中に、ヨセフの使いの者が追ってきて言いました。「エジプトの主君の杯を盗んだ者がいる。盗んだ者は奴隷にならなければならない。他の者には罪はない。」みんな驚き、調べを受けると、末の弟の荷物から銀の杯が出てきました。驚きと落胆の中で、彼らはヨセフのもとへ引き返しました。ヨセフも又同じように言って「盗んだ者は奴隷にならなければならない。他の者は帰るがよい」と言いました。すると、兄の一人がヨセフに必死に嘆願していいました。「何とぞ、この子の代わりに、この僕を奴隷としてここに残してください。この子は帰らせてください。」弟のために、自分が身代わりになってもいいと必死に願い出た兄の言葉に、ヨセフは心打たれ、かつて自分を奴隷として売った兄が、今、弟を守ろうとしている姿に感極まりました。ヨセフはついに自分の身を明かして、次のように言いました。

 「わたしはあなたがたがエジプトへ売った弟のヨセフです。しかし、今は、わたしをここへ売ったことを悔やんだり、責め合ったりする必要はありません。命を救うために、神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのです。…神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのは、この国にあなたたちの残りの者を与え、あなたたちを生き永らえさせて、大いなる救いに至らせるためです。わたしをここへ遣わしたのは、あなたたちではなく、神です。」

 驚きのあまり兄たちは声が言葉が出ず、しかしやがて互いに、喜んで抱き合い、そして、ヨセフは父のもとに行き、喜びの再会をしたのです。

 ヨセフは権力を用いて、兄たちに復讐などせず、また何も奪いとらず、むしろ和解のために働きかけ、喜びと平和を与えたのです。
 そして平和の内に、7年の飢饉を無事に乗り越えていきました。

 主イエス・キリストは次のように教えています。
 「平和を実現する人々は、幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる。」(マタイ5:9)