2006年12月24日(日)飼い葉おけの中の救い主
おはようございます。山下正雄です。
きょうはクリスマスの前日です。この世の習慣では今日が過ぎ去ると、肝心の明日のクリスマスの日はすっかり忘れ去られてしまいます。とても残念ですが、街をにぎわせていたクリスマスの飾りも音楽もすっかり姿を消してしまいます。しかし、考えてもみれば、もともとのクリスマスという出来事自体が、それほど人目を引く出来事ではありませんでした。最初から多くの人に覚えられるような大事件でもなかったのです。世界で最初のクリスマスはほんとうにみすぼらしく、ひっそりしたものでした。しかし、キリストをお遣わしになった神は、そのことを望んでいらっしゃったのです。
イエス・キリストの誕生の様子を描いた書物の一つに、ルカによる福音書というのがあります。この福音書を書いたルカという人は、大変高い教養があった人のようです。福音書を書くに当たっては、様々な資料に目を通し、当時の歴史も詳しく調べました。
ルカ福音書によれば、キリストの誕生はローマ皇帝アウグストゥスの時代でした。キリニウスがシリア州の総督であった当時行われた人口調査の最中に起こったのです。もちろん、その人口調査がいつ行われたものであるのか、いまだに具体的なことは知られてはいません。しかし、そのことはさておくとして、ルカが描きたかったことは、この人口調査のために、わざわざ遠いところを旅してきた、名も余り知られていない一人の女性から救い主キリストが生まれたということなのです。
その当時、皇帝アウグストゥスの名前を知らない人は誰もいなかったことでしょう。その命令一つで、身重の者であっても、はるばる旅をして人口調査に協力をしなければならないほどの権力者でした。
方や救いの主の母であるマリアは皇帝の命令に従うしかない一人のか弱い女性です。その当時、マリアのことを知る人などほとんどいませんでした。まして、そのマリアから生まれた赤ん坊のことなど、いったい誰が心にとめたでしょうか。実際、イエス・キリストが生まれた場所は家畜小屋でした。寝かされた場所は家畜の餌を入れる飼い葉桶の中です。それでも、宿の見つからない彼らにとっては最上の場所だったのです。
ローマ皇帝アウグストゥスの権威と比べると、救い主としてお生まれになったイエスの権威など見るすべもありません。方や王宮に住まい、何万という部下を動かすことの出来る権威者です。しかも、発行するローマのコインには「神の子」とさえ刻ませていたのです。それに対して同じ「神の子」の称号を持つイエス・キリストは人知れず家畜小屋でその生涯の最初の瞬間を迎えられました。けれども、これこそまことの救い主にふさわしい生まれ方だったのです。
まことの救い主はもっとも低いところにまで下ってきてくださるお方です。迎える場所がなくても、それでもその場所に生まれ、その場所にいる者と同じ同じように生きてくださるお方なのです。貧しさを知り、人としての苦しみ悲しみを味わい、私たちと同じところにたってくださるのです。
後にヘブライ人への手紙を書いた人物は、その手紙の中で救い主キリストについてこう言っています。
「この大祭司は、わたしたちの弱さに同情できない方ではなく、罪を犯されなかったが、あらゆる点において、わたしたちと同様に試練に遭われたのです。だから、憐れみを受け、恵みにあずかって、時宜にかなった助けをいただくために、大胆に恵みの座に近づこうではありませんか。」