2007年5月23日(水)クリスチャン人口について ハンドルネーム エッグさん
いかがお過ごしでいらっしゃいますか。キリスト改革派教会提供あすへの窓。水曜日のこの時間はBOX190、ラジオを聴いてくださるあなたから寄せられたご質問にお答えするコーナーです。お相手はキリスト改革派教会牧師の山下正雄です。どうぞよろしくお願いします。
それでは早速きょうのご質問を取り上げたいと思います。今週はハンドルネーム・エッグさんからのご質問です。お便りをご紹介します。
「山下先生、はじめまして。エッグと言います。クリスチャンです。
実は仕事の関係で、時々よその教会の礼拝に出席するチャンスがあります。いつも思うのですが、地方の教会は寂しい限りです。元気があるのは大都会の教会ぐらいのような気がします。その大都会の教会も年齢構成を見てみると、お年寄りの占める割合がダントツに多く、若い青年がチラホラといった感じです。日本のクリスチャン人口は人口の1%と聞いていますが、地域的にも年齢的にも、そして男女の比的にも偏っているような気がします。このままいくと、何だかいつしか日本のクリスチャン人口が半減してしまうのではないかという気さえします。ラジオ伝道を続けていらっしゃる先生の目から見て、そのあたりのご意見をお聞かせください。よろしくお願いします。」
エッグさん、メールありがとうございました。わたしも仕事の関係であちこち見て回る機会がありますが、教会に限らず、どの都市も東京と比べれば衰退しているという印象を受けます。いえ、東京と比べるということ自体が間違っているのかもしれません。この一年間に行った場所で、東京以外で賑わっていると思うことができたのは大阪ぐらいです。名古屋でさえ閑散としている印象を持ちました。それぐらい色々なものが東京と大阪に集中しているということではないかと思います。そして、そのことは将来の日本にとってあまり良いことではないと思っています。
わたし自身、すでに半世紀もこの世に生きたことになりますが、東京駅から50キロ圏内に住んだことがあるのは高々15年間ほどに過ぎません。仕事を持つようになってから東京都内で働いたという経験も10年に満たないくらいです。ですから、特に首都圏を贔屓目に見ているという訳でもありませんし、地方都市を特別な目で蔑んでいるわけでもありません。
どうして、こんな話を最初にしたのかといいますと、エッグさんがキリスト教会について感じたことは、実はキリスト教会だけの問題ではなくて、日本の社会全体の傾向ではないかということなのです。この構造は昔からそんなに変わっていないような気がします。大都会の人口が伸びてきたのは、何よりも地方からの人口の流入が大きな要因ではないかと思います。大都会の教会も同じように地方出身者によって伸びてきたことは否定できません。地方から出てきた当時は独身であった者が、やがて結婚してクリスチャンファミリーを形成するようになれば、それだけで大都会の教会は賑わってきます。他方、地方の教会はやっと一人青年をクリスチャンへと育てあげたとしても、都会へ送り出す繰り返しです。
そこへもってきて、近年、子供の数が減り、日本全体が高齢化社会へと突き進んでいるのですから、教会の中だけ日本の社会とは違った傾向であるということは考えられないことです。従って、エッグさんが教会について得た印象は日本の社会全体の印象と重なり合うところがあるはずです。
さて、今述べてきたことは、正確な数字に基づいたものではありませんでした。どちらかといえば、肌で感じた印象や、長年目にした統計の数字から受ける印象で意見を述べたに過ぎません。エッグさんはこのままの調子でいけば、そう遠くない未来にはクリスチャン人口が半減してしまうのではないかと憂えていらっしゃいます。果たして数字的にはどうなのでしょうか。
わたしの手元には今、キリスト新聞社の発行しているキリスト教年鑑と総務省統計局の人口統計があります。この20年間で日本の人口とクリスチャン人口はどのように変わったのでしょうか。1986年の日本の人口は1億266万人でした。その20年後の2006年の日本の人口は1億2771万6000人です。つまり、1.05倍の伸びということです。果たしてクリスチャン人口はこれを下回る伸び、あるいは、人口の増加に反して減少の傾向にあるのでしょうか。
ところで、クリスチャン人口と一口で言っても、教派によって教会員の数え方はまちまちです。幼児洗礼を受けた会員も含めて教会員の総数とするところもあれば、大人になってからの洗礼だけしか認めない教会もあります。統計の取り方がばらばらでは正確な比較ができません。そこで、まずは洗礼を受け信仰告白をした者、つまり現住陪餐会員と呼ばれる人の数で見てみると、1986年から2006年までの間に1.17倍の伸び率です。これは人口の伸び率をわずかに上回る伸び方です。これはちょっと意外な感じがするかもしれません。ほんとうにわずかですが、このまま伸び続ければ、人口に占めるクリスチャンの割合も多くなっていくはずです。
ところが、エッグさんが肌で感じられた教会の印象では、このまま行くとクリスチャン人口が半減してしまうのではないかという危機感でした。それもそのはずです。エッグさんは行く先々の教会で現住陪餐会員の数を数えてきたわけではありません。礼拝に出席した人々の数を見てそう感じた訳です。
では、礼拝の出席者の数はこの20年間で減少の傾向にあるのでしょうか。実は日本の教会全体でいえば、これも決して減少の傾向にあるわけではありません。ただし、人口の伸び率に比べて0.02ポイント下回っています。全国の教会全体でこの数字なのですから、都会と地方ではその格差はもっと大きなものがあると思います。
さて、日本の人口の伸びは2004年で頭打ちとなり、2005年から減少の傾向にあります。統計局の予想では今世紀末までに今の人口の半分近くにまでなると言われています。現住陪餐会員の数に関して言えば、日本の教会はまだ減少の傾向にはありません。しかし、礼拝出席者で見ると2005年から2006年にかけて、人口の減少率と同じくらいのペースで減っています。人口の伸び率とクリスチャン人口の伸び率がほぼ同じであるとすれば、今世紀末にはエッグさんのおっしゃる通りクリスチャン人口も半分ぐらいになってしまうかもしれません。
なんだか、先の暗い話になってしまいました。正直のところわたしは統計的な話はあまり好きではありません。礼拝出席者が減少している理由は、必ずしも教会の衰退ということではないと思っています。社会の高齢化のために思うように礼拝に出席出来る人が少なくなったというのは確かかもしれません。しかし、礼拝に出席できない方たちのために教会が払っている様々な工夫は、かえって教会を活き活きとしたものにしているということもあります。弱い立場の人たちのことをゆっくりと考える恵みが今までの教会以上に現代の日本の教会には与えられているように思います。
また、地方の教会の礼拝に出席して感じることは、確かに大都会の教会と比べてはるかに小さな教会かもしれません。しかし、一人一人の教会員が家族のように大切にされているという良い点もあります。大都会の教会に劣らぬくらい活き活きとした教会もあります。
数の伸びよりも、どれだけキリストの愛を感じることができる教会か、そのことの方がはるかに大切なのではないでしょうか。