2016年11月12日(土) 雨ニモ負ケズ(2)涙の谷間で祈りを注ぎ出す
おはようございます。仙台カナン教会の國安光です。今週は、宮沢賢治作「雨ニモ負ケズ」からお話をします。
賢治は、生涯農民として歩んだ人として知られます。だからこそ、賢治は自然の力の驚異を知っていました。人間の力では、自然を支配することはできません。天候の変化ひとつで、人間の生活がおびやかされることがあります。
日照りが続くことによって、農作物が取れなくなる。寒い夏が来れば、農作物が実らなくなる、飢饉がやってくるわけです。そこでもたらされる、人間の悲しみ、苦しみ、辛さというものを、賢治はよく知り、歌にしました。
「雨ニモ負ケズ」の一節です。
「ヒデリノトキハナミダヲナガシ サムサノナツハオロオロアルキ」
ここには、人間の無力さ、富があっても知恵があっても、人間は誰も、天の事柄を変えることはできないということの無力さが表現されています。
私たちもある日突然にして、力の限界、無力さというものを突きつけられ、オロオロする日々があります。神様はそのような私たちの、涙の祈りを聞いてくださいます。
「あなたはわたしの嘆きを数えられたはずです。……あなたの革袋にわたしの涙を蓄えてください」(詩篇56:9)
悲しみの中でも、神様は共にいる。私の涙を知り、そのひとつひとつを数えてくださっている、こういう神様への祈りです。
私たちの涙の一粒一粒を、神様はご存知でいらっしゃいます。涙の谷間を行く時も、神様に祈りを注ぎ出すことができる、ここに慰めがあります。