熊田なみ子のほほえみトーク 2012年9月25日(火)放送

熊田 なみ子(スタッフ)

熊田 なみ子(スタッフ)

小さな朗読会157「天使を見たギデオン(2)」

倒された祭壇と小さな軍隊

 イスラエルの民はすっかり偶像礼拝に走り、ギデオンの父親さえ偶像を拝んでいました。異教の偶像バアルが彼の村にもありました。その祭壇の近くには木の杭でアシラという女神の像が地面に固定されていました。人々はこれも礼拝していました。

 主の使いがギデオンにあらわれた翌日、神様はバアルの祭壇を倒し、側のアシラ像も切り倒すようにギデオンに言われました。その後でギデオンは岩の上に主のための祭壇を築き、アシラの木を薪にして、火で父の若い雄牛をこの祭壇に捧げなければなりませんでした。ギデオンは勇敢で従順な人でした。偶像を拝んでいる者たちがどんなに怒るかを知っていましたが、ギデオンは神様に従おうと思いました。彼は、神様がミデアン人に打ち勝つのを助けてくださると信じ、神様に従わなければならないことを知っていました。人々に止められるのを知って、ギデオンは夜言われたことをしようと思いました。彼の僕十人がバアルの祭壇を崩し、木の杭を倒すのを手伝いました。そして、バアルの祭壇のあった所に真の神への祭壇が築かれました。

 朝、町の人々はこれを知って猛然と怒りました。誰がこんなことをしたのか。その父のところに来ました。ギデオンは、真の神様に語りかけられたことをその父に話したのでしょう。父親の心も変えられ、偶像を拝んでいたことを恥じていました。そこで、父は「あなたがたはバアルのために言い争うのですか。バアルがもし神であるならば自分の祭壇が打ち壊されたのだから、彼自ら言い争うべきです。」と答えました。

 真の神がギデオンに語りかけたのを知って、民はギデオンを助ける気になりました。神の霊が彼の上にくだったので、彼はミデアン人と戦う勇気に満たされました。彼は北方の部族のマナセ、ナフタリ、アセル、ゼブルンに使いを出しました。まもなく、兵たちがぞくぞくと集まってきました。指導者がある今、彼らはミデアン人と戦いたかったのです。ミデアン人も戦う準備が出来ていました。まもなく、エズレルの谷にミデアン人が溢れました。彼らの軍勢は百二十万人で、イスラエルの軍勢の三倍です。

 ギデオンは、神様が共におられることを確かめたかったので、神様にしるしを求めました。彼は地面に羊の毛を置き、神様に「あなたが私の手によってイスラエルを救おうとされるならば、露が羊の毛の上にだけあって、地が全て渇いているようにしてください。」と言いました。朝になると、羊の毛はぐっしょり濡れ、絞ると鉢に水が一杯になるほどでした。まわりの地面は完全に乾いています。それでもギデオンは神様にいまひとつ奇跡を求めました。今度はまわりの地面が露で覆われ、羊の毛だけが乾いていることを求めました。神様はギデオンの求めに従われました。朝になると羊の毛は乾いているのに周りの地面には露が一杯でした。これで、彼がミデアン人と戦うためにイスラエル人を率いる指導者となることが神様のみこころであることをギデオンは信じなければなりませんでした。

 ある朝早く、ギデオンは自分の三万二千人の兵を連れて、エズレルの谷の南側に陣をはりました。ギデオンの兵は、ミデアンの兵の半数にも及びませんでしたが人数が多すぎました。もし、三万二千人の兵がミデアン人と戦えば、神様が勝利を与えてくださったとは言わないで、自分達が強かったのだというでしょう。そこでギデオンは、主の命令に従って気の弱い兵たちを帰しました。兵たちは驚きました。大きな軍隊なしにどうしてイスラエル人はミデアン人に勝てるでしょう。イスラエルの何人かが帰ってしまったのではどうして勝つことが出来るでしょう。彼らにはこれがどうしても納得出来ませんでしたが、二万二千人の兵が帰りました。残ったのは一万人です。ところが神様はギデオンにまだ多いと言われました。川に水を飲みに連れて行けばその中から残るべき者を示す、と神様は言われました。

 ギデオンはその通りにしました。三百人の者は手に水をすくって犬が水を飲むように、水をなめるようにして飲みました。他の者はかがんで顔を水に近づけて飲みました。主は水を手ですくってなめるように飲んだ三百人によってミデアン人を征服する、とギデオンに約束されました。そこでギデオンはこの三百人だけを自分の山の陣に留めました。

 神様は夜、ギデオンのもとに来てミデアン人の軍の所に行くように言われました。主はミデアン人をギデオンの手に渡されたからです。もし一人でいくのが恐ろしければ僕を連れて行っても良い。彼らの言うことを聞けば彼らと戦う勇気が湧くでしょう。ギデオンとその僕は闇の中をこっそり山を下りミデアン人の陣営に注意深く近寄りました。二人の男が天幕の中で話しているのが聞こえました。一人は「私は夢を見た。大麦のパン一つがミデアンの陣中に転がってきて天幕に達し、それを打ち倒し覆したので天幕は倒れてしまった。」と言いました。それに答えてもう一人が「それはイスラエル人、ヨアシの子ギデオンの剣に違いない。神はミデアンと全ての軍勢を彼の手に渡されるのだ」と言いました。これをミデアン人が言うとは思いがけないことです。どうしてこれを知ったのでしょう。あるいはどこかでイスラエルの兵に会い、神様がミデアン人をギデオンの手に渡されるということを聞いたのかもしれません。天幕でのこの二人の会話を聞いてからギデオンの勇気は湧きました。彼とその僕は用心深く自分たちの陣に戻りました。


泥棒たちの末路

 次の夜、ギデオンは自分の三百人の兵を百人づつ三つに分けました。そして、一人一人に壷とラッパとたいまつを渡しました。そして、たいまつに火をつけ、見えないように壷で覆って隠すように命じました。さて、準備は完了しました。夜中にギデオンと三百人の勇敢な兵は、音もなく山を降りました。ねずみのように静かに彼らはミデアン人の陣のすぐわきまで近づきました。百人はミデアン人の左側に、百人は右側に、そして、残りの百人は敵陣の背後にまわりました。静かにまわったのでミデアン人は誰一人起きることもなく、誰一人警告を発する者もありませんでした。全陣営は眠りに包まれていました。

 突然、ギデオンが合図をしました。彼がラッパを口に当てると、静かな夜空に恐ろしいラッパの戦闘合図が鳴り響きました。自分の壷を勢いよく岩に叩きつけ、たいまつを頭上に振りかざして、彼は「主のための剣、ギデオンの剣だ」と叫びました。ただちに三方から三百のラッパが戦闘を挑んで鳴り響き、三百の壷が岩に叩きつけられ、三百のたいまつが暗闇を赤く染め、そして、三百人の喉から「主のための剣、ギデオンのための剣」というときの声が響きました。不意をつかれたミデアン人は、恐れて飛び起きました。天幕の入り口まで走りました。どこを見てもたいまつの赤々とした光り、それに照らし出された異様な兵士達の顔が見えます。あちらからもこちらからも、ラッパの戦闘の合図、イスラエル兵の叫びが聞こえます。「主の剣、ギデオンの剣」。

 恐れのとりことなった目のくらんだミデアン人は、大軍勢が押し寄せたと思いました。そして、真っ先に自分の身を救わなければと考えました。混乱と恐れのあまり、彼らは自分の剣や槍をやたらと振り回し、手当たりしだいのものを突き刺し、切りつけました。あかりを持ってくる暇はありません。そこで闇の中で敵も味方も区別がつかず彼らは武器を振り回し、恐ろしい混乱のうちにお互いを殺しあいました。ギデオンは急いで帰した兵たちに使いを走らせ、逃げるミデアン人を追うように言いました。イスラエル軍はヨルダン川まで敵を追いました。

 既に十二万人のミデアン人は剣で倒れていました。混乱の中で相打ちしてしまったのです。向こう岸にはわずか一万五千人のミデアン人が、その王ゼバとザルムンナ共に残っているだけです。ギデオンはこれらの人を生かしておけば、またイスラエルを悩ましに来ると思いヨルダンを渡って彼らを追いました。ギデオンの兵たちはスコテという町を通らなければなりませんでした。彼らは一晩中戦っていたので、飢えて倒れそうでした。ギデオンは町の人にパンを求めました。スコテの町の住民もイスラエル人で、兵は彼らの間にいる横暴なミデアン人を追うために戦っていたのです。それなのに町の司たちは「あなたがたはまだゼバとザルムンナを捕らえていない。我々はどうしてあなたの兵にパンを与えなければならないのか。」と言いました。これを聞いたギデオンは怒りあとで彼らを罰すると約束しました。

 まもなくイスラエル軍は、次の町ペルエルでも同じことを言われ、彼らをも罰するとギデオンは約束しました。まもなくイスラエル軍は、一万五千人のミデアン人に追いつき彼らを征服しました。ゼバ王とゼルムンナ王は逃げましたが捕まり、ギデオンの所に鎖で引かれてきました。イスラエル人は、ミデアン人の金の耳輪やらくだの首にかけてある飾りをみな取りました。耳輪だけでも三百万円ほどの値打ちのものでした。夜明け前にギデオンとその兵は、町の長老達がとても捕まらないといった二人の王を連れてスコテの町に戻ってきました。そして、七十七人の長老を茨や棘のある枝でたたき、飢えて弱っている兵たちにパンを与えなかった罪を罰しました。それからギデオンはペヌエルに行き、ここの人々も主の軍勢を助けようとしなかった罰として彼らの塔を引き倒しました。この一晩のうちに主の助けによりギデオンとその兵は、百二十万以上のミデアン人の大軍勢を倒したのです。

 イスラエルの民はギデオンを大そう喜び、彼を自分たちの指導者にしようとしました。しかし、ギデオンは自分も自分の子達もイスラエルを治めないと言いました。神様が彼らの主でなければなりません。ギデオンの時代、国は四十年間太平に過ごしました。  くまだなみこ

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