BOX190 2007年11月14日(水)放送     BOX190宛のメールはこちらのフォームから送信ください

山下 正雄 (ラジオ牧師)

山下 正雄 (ラジオ牧師)

タイトル: ロザリオの起源は? 北海道 ハンドルネームHiroさん

 いかがお過ごしでいらっしゃいますか。キリスト改革派教会提供あすへの窓。水曜日のこの時間はBOX190、ラジオを聴いてくださるあなたから寄せられたご質問にお答えするコーナーです。お相手はキリスト改革派教会牧師の山下正雄です。どうぞよろしくお願いします。

 それでは早速きょうのご質問を取り上げたいと思います。今週は北海道にお住まいのハンドルネームHiroさん、女性の方からのご質問です。SNSぱじゃぱじゃのコミュニティ掲示板に寄せられたご質問です。ご紹介します。

 「山下先生、私はBOX190の番組が大好きです。
 聖書について、教会生活についてなどは教会の牧師先生に伺うようにしていますので出来るだけ小さな素朴な質問をさせていただきますね。小さすぎて先生を困らせてしまうかもしれませんが・・。
 先日、「生かされて」(邦題)というドキュメンタリーを読みました。ルワンダで起きた大虐殺という恐ろしい状況から生き残った女性が牧師の家の狭いトイレで7人の女性と身を隠し、奇跡的に生き延びたというものですが、隠れている間、ロザリオを握りしめて祈る場面が幾度と出てきます。ちなみに彼女はカトリック信者です。
 ところでこのロザリオはいつごろからキリストを信じる者の道具(?)になったのでしょうか。「道具」というこの言葉は適切ではないかもしれませんが」

 Hiroさん、投稿ありがとうございました。ルワンダでの大量虐殺の事件のことは、映画「ホテル・ルワンダ」をご覧になってご存じの方も多いかも知れません。1994年に起きた20世紀3番目のジェノサイド(大量虐殺)だといわれています。もともとルワンダではフツ族とツチ族の間に民族的な対立がありましたが、この事件ではフツ族によってたった百日間のうちに百万ものツチ族の人が大量に虐殺されてしまうという事件でした。Hiroさんがお読みになった本は、その大量虐殺を逃れて生き残り、現在は国連職員として活躍しているイマキュレー・イリバギザさんがお書きになったものです。

 さて、きょうのご質問はそのルワンダでの事件とは直接関係ありませんが、その本の中に出てくる「ロザリオ」についてです。ロザリオはカトリック教会ではよく見かける数珠のような形のものです。ルワンダがベルギーの支配下にあった時代、カトリック教会の影響もこの地に及びました。特にベルギーとカトリック教会はツチ族を優位に立てたといわれています。この話は今回のご質問とは関係がありませんので、興味のある方は、ご自分でお調べになってみてください。そのカトリックの影響が強かったツチ族のイリバギザさんはロザリオを手にして祈る機会が多く、本の中に何度もその場面が出てくるということなのですね。そのロザリオはいったいいつごろからキリストを信じる者の道具になったのでしょうか、というのが今回のご質問です。

 そこで、まずロザリオ(rosario)という言葉ですが、日本にはスペイン語またはポルトガル語からその言葉が入って来たと思われます。ラテン語ではrosariumと言います。16世紀半ばにカトリック教会の宣教師たちが日本にもやってくるようになったときに、ロザリオも一緒に持ち込まれたようです。『どちりな・きりしたん』というキリスト教の教理を教えた当時の本の中に、ロザリオに関する記述が見られますから、当時のキリシタンにはすでになじみのあるものであったはずです。
 ところで、ロザリオという言葉は英語のroseと関係があって、バラを意味する言葉です。なぜバラなのかというと、聖母マリアに霊的な意味でバラの花の冠をささげるというところからこの名前がきているようです。

 このロザリオですが、先ほど数珠のようなものといいいました。言葉で説明するのは難しいのですが、数珠のようなものといえばイメージしやすいと思います。小さな玉が十個と大きな玉一つが一組となって、それが五組連なって一つの円を形作っています。つまり、小さな玉を十数えると、次に一つ大きな玉が来て、それから、また十個の小さな玉が続くといった具合です。また、その五つある大玉のうちの一つからはさらに大玉二つと小さな三つと十字架がペンダントのようにぶら下がっています。そして、この一連の玉の並びが祈りを捧げる助けとなる道具となるわけです。
 定められた祈りを唱えながら、この玉を指で動かしながら数えることで、祈りの言葉が決められた回数唱えられたか分かるようになるのです。数をカウントすることから、ロザリオのことをコンタス(contas)とも呼びます。

 さて、前置きが長くなってしまいましたが、では、そのような用具を用いて祈りが捧げられるようになったのは、いったいいつの頃からなのか、というご質問の肝心な点ですが、実ははっきりしたことは分かっていません。一般的に言われていることは、ドミニコ修道会の創始者ドミニクスが聖母マリアからの啓示を受けて始めたことで、この「ロザリオの信心」がドミニコ会を通して広められるようになったということです。この説が正しいとすれば、ロザリオをもって祈る習慣は13世紀頃から始まったということになります。

 もっとも一連の数珠を使って祈る習慣というのは少なくともローマ時代にさかのぼることができ、それはキリスト教の習慣よりも前からあるものです。それがいつキリスト教会に取り入れられるようになったのかということは、ドミニクスによって初めて行なわれたとは考えにくいものです。ただ、ドミニコ会がロザリオの普及に貢献したという点は間違いないようです

 そもそも、用具としてのロザリオは、祈りの回数を数えるための道具です。用具が出来て、はじめて祈りの言葉を繰り返す習慣が生まれたと考えるのは逆です。むしろ、祈りの言葉を繰り返し定められた数だけ唱えるという習慣が道具を生み出したと考える方が自然です。何十回、何百回も唱える言葉を指折り数えていたのでは、すぐに正確な数を忘れてしまいます。
 詩編を定められた回数唱えるとか、主の祈りを定められた回数唱えるという習慣は少なくとも10世紀には知られています。
 今日のロザリオとは形は違いますが、すでに4世紀には紐に結び目をつけて祈りを数える道具が用いられていたという記録があります。こうした工夫がいろ色名形で発展して、ついには今日知られるようなロザリオの形になったものと思われます。

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