2017年6月25日(日) 神さまの喜ばれること

 おはようございます。忠海教会の唐見敏徳です。
 突然ですが、トーンチャイムという楽器をご存知ですか。トーンチャイムはハンドベルの弟分のような楽器です。ちょうど手で握ることのできるくらいの太さの筒にハンマーが付いていて、前後に振るとハンマーが筒に当たって音が出る仕組みになっています。筒の長さの長いものは低い音が出て、短いものは高い音が出ます。ハンドベルと同じように、一人が数個のトーンチャイムを担当して、チームで演奏します。その音色はとても柔らかく、穏やかです。

 トーンチャイムは、音楽愛好家や学校などのサークルで演奏されるだけではなく、養護施設での音楽療法やレクリエーションとしても用いられています。10年ほど前から、私がチャプレンを務める身体障がい者の福祉施設(聖恵会)でも、トーンチャイムをはじめました。月に2回、音楽療法士の資格を持つ音楽家に来ていただいて、指導を受けています。年に数回発表する機会があり、それが演奏者の励みになっています。今は2か月後に行われるSeikeiトリップでの演奏に向けて練習しています。

 演奏するのは、トーンチャイムを握って手を動かすのが精いっぱいという方も含め、みな体のどこかに障がいを抱えている方々です。トーンチャイムの持ち替えや受け渡しをスムーズに行うことはできません。速いパッセージを弾くこともできません。リズムが崩れたり、音を間違えることもしばしばあります。けれどもみんないい表情で、真剣に、そして楽しく演奏しています。決して上手な演奏とは言えませんけれども、聴く人の心を和やかにしてくれます。

 障がいを持つ方々の演奏を聴くとき、ある聖書の個所が思い浮かんできます。それは「やもめの献金」と呼ばれるところです。
「イエスは目を上げて、金持ちたちが賽銭箱に献金を入れるのを見ておられた。そして、ある貧しいやもめがレプトン銅貨2枚を入れるのを見て、言われた。『確かに言っておくが、この貧しいやもめは、だれよりもたくさん入れた。あの金持ちたちは皆、有り余る中から献金したが、この人は、乏しい中から持っている生活費を全部入れたからである。』」(ルカ21:1-4)

 このお話では、金持ちたちと貧しいやもめの献げものが対比されています。やもめの入れたレプトン銅貨2枚は、一日の賃金の128分の1で、現在の価値では数十円程度でしょうか。それで買えるのは一日を何とかしのぐための最低限の食料である小麦粉ひと掴み分だと考えられています。ですから、献げた金額から言えば金持ちたちの方が圧倒的にたくさん賽銭箱に入れたわけです。
 けれども、主イエスは貧しいやもめの献金を「だれよりもたくさん入れた」とおっしゃいました。主イエスは、単純に金額の大小で献金の価値を判断されません。献げようとする人の心と信仰をご覧になり、たとえわずかな額でも、その人が最善を尽くして献げようとするとき、神さまはそれを喜んで受け入れてくださるのです。

 障がいを持つ方々のトーンチャイムの演奏を聞きながら、たとえ上手な演奏ではなくても、不自由な体を押して精いっぱい演奏をしているその音楽を、神さまはきっと喜ばれると感じます。そして、このことは障がいの有無に関係なく、すべての人に対して神さまが願っておられることです。神さまは、足りないことやできないことを思い煩うのではなく、与えられている能力、賜物、時間を活かして生きようとする人を、喜び、応援してくださいます。